BUMP OF CHICKEN、21世紀の日本のロックシーンで最も重要なバンドが放つベスト盤の世界

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BUMP OF CHICKENが、初めてのベスト・アルバムをリリースした。

思えば彼らほど長いキャリアを持つバンドに、今までベストがなかったのが不思議なくらいだが、内容は“満を持して”と呼ぶにふさわしい充実したものだ。1999年の1stシングル「ランプ」から、2010年の18作目「宇宙飛行士への手紙/モーターサイクル」までの全曲を網羅し、さらに初期のアルバム曲なども加えた全27曲を『BUMP OF CHICKEN I[1999-2004]』と、『BUMP OF CHICKEN II[2005-2010]』の2枚に完全収録。“最近新たに出会えたリスナーの方に、僕たちの今までを知ってもらえるには…”という、リリースに寄せたメンバーのコメントを読むと、過去を懐かしむメモリーというよりは、前に進むためのステップと言っていい。2枚お揃いのCDパッケージも非常に美しく、ずっと手元に置いておきたい魅力に溢れている。

『BUMP OF CHICKEN I[1999-2004]』は、1stアルバム『FLAME VEIN』の1曲目を飾った「ガラスのブルース」で幕を開ける。久しぶりに聴くと、藤原基央の声は独特の翳りと哀感に満ち、今よりもむしろ重厚に感じられて、思わずハッとする。初期の2作『FLAME VEIN』『THE LIVING DEAD』にはほとんどシングル曲がないため、スタッフがアルバムの中から代表曲をセレクトしたそうだが、子供が大人になる恐れと期待をみずみずしく描く「くだらない唄」や、猫を主人公にした童話風の「K」のように、格調高い物語作りといい、歌詞をしっかりと支えるシンプルな演奏の説得力といい、20歳そこそこの駆け出しバンドとはとても思えないほど完成度が高い。栴檀は双葉より芳し、と言われる通り、彼らは最初から光り輝く個性を放っていたことを、最初の数曲を聴くだけで再確認できる。


▲BUMP OF CHICKEN I[1999-2004]
最初の大ヒット「天体観測」では、“見えないモノを見ようとして”と歌い、「ハルジオン」では、“枯れても、枯れない花が咲く”と歌う。初期の楽曲は、風景や自然の中に、人が生きていく意味を重ね合わせたテーマが多く、歌詞というより美しい詩と呼びたい。『BUMP OF CHICKEN I[1999-2004]』のラストを飾る「車輪の唄」も、自転車と電車の速度の違いをモチーフにした、遠く離れてゆく人への胸いっぱいの惜別の歌だ。藤原の歌は初期の頃より透明感を増し、カントリー・タッチのアレンジも軽やかだが、そこに込めた哀愁の量は変わらない。いやむしろ、全体が軽やかになったぶん、言葉に重みが出た。こうして時系列で聴き進むことで、ゆっくりと、しかし着実なバンドの成長が感じ取れるのも、ベスト盤ならでは醍醐味と言えるだろう。

『BUMP OF CHICKEN II[2005-2010]』のオープニングは、「プラネタリウム」。これも、風景描写と心理描写を重ね合わせた彼らの得意なパターンの曲で、アルバムで言うとここから『orbital period』の世界へと入ってゆく。ちなみに、『orbital period』のブックレットには「星の鳥」と題した藤原の書き下ろしによる物語が収録されていた。楽曲と直接関係はないそうだが、すべての楽曲に物語としての意味と広がりを持たせるという、BUMP OF CHICKENならではのスタイルはここに確立したと言っていい。言わずもがなのことをひとこと言わせてもらうと、世に“バンプに似ている”と呼ばれるバンドや曲が時折現れるが、歌い方やメロディラインの相似はあれど、物語としての完成度と感動の深さまで真似ることは不可能だ。その証拠が、こ の2枚のベストには詰まっていると言い切ってもいいだろう。


▲BUMP OF CHICKEN II[2005-2010]』
とはいえ、この『BUMP OF CHICKEN II[2005-2010]』に入る頃から、単なる物語とは言えない、より深い心理描写が歌詞に強く現れるようになったのも事実だ。「カルマ」という言葉が持つ「業」という意味、“人間という仕事を与えられて”という「ギルド」の歌いだし、「涙のふるさと」という意味深な言い回し、“簡単なことなのに、どうして言えないんだろう”という、「花の名」の最初の一行。藤原の内面の思索の結果を、比喩などを使わずにストレートに投げかける曲が増えてゆくのも、こうして聴き進むとよくわかる。

それと同時に、バンドの演奏力と表現力が、いつのまにか飛躍的に進歩していることにも気づく。たとえば「R.I.P」の、広い宇宙空間をたゆたうような藤原の声を、細やかなビートとギター・リフの繰り返しで、さらに高く舞い上がらせるようなバンドの力。イントロのアコースティック・ギターと鈴の音だけで冬の匂いを感じさせる「Merry Christmas」、アコギの弾き語りから壮大なストリングス入りのバンドサウンドへと展開してゆく「魔法の料理~君から君へ~」。『BUMP OF CHICKEN II[2005-2010]』のラストを飾る「宇宙飛行士への手紙」は、キックの四つ打ちを駆使した軽快なテンポの曲で、自己主張と呼べるような派手なことは誰もせず、むしろ引き算で成り立っているようなシンプルな、しかし堂々たるアンサンブルが輝いている。ここから振り出しに戻って、「ガラスのブルース」を聴いてみれば、ここまで歩んできた道のりの長さを思い、胸が熱くなるのを止められない。

8月9日には、千葉QVCマリンフィールドで、彼らにとって初となるスタジアム・ライヴが行われる。これは2枚のベスト盤の購入者のみが参加可能なもので、いわゆるレコ発ライヴの大掛かりなものだ。そして9月からはベストアルバムをテーマとし、<BUMP OF CHICKEN 2013 TOUR“WILLPOLIS”>と題したツアーが開催される。2011年以降も、5枚のシングルをリリースしているので、BUMP OF CHICKENはすでに次のステージへと突入しているのだが、このベストに含まれる曲を再演することで、今後の方向性に変化が生じることもありうるだろう。いずれにせよ、これはただ振り返るだけのベスト・アルバムや、ツアーではない。21世紀の日本のロックシーンで最も重要なバンドの一つ、今も進歩を続けるバンドの歴史をたどり直しつつ、未来への鍵を探し出す大いなるヒントとして、ぜひ多くの人に聴いて、読み解いてほしい作品だ。

文●宮本英夫

『BUMP OF CHICKEN I<1999-2004>』
2013年7月3日(水)リリース
TFCC-86455 / ¥2,800(税込)
※初回限定仕様(ハードカバータイプブックレット付) / 通常仕様あり
01. ガラスのブルース
02. くだらない唄
03. ランプ
04. K
05. ダイヤモンド
06. 天体観測
07. ハルジオン
08. Stage of the ground
09. スノースマイル
10. ロストマン
11. sailing day <全国東映系ロードショー「ワンピース ザ・ムービー デッドエンドの冒険」主題歌>
12. アルエ
13. オンリー ロンリー グローリー
14. 車輪の唄

『BUMP OF CHICKEN II<2005-2010>』
2013年7月3日(水)リリース
TFCC-86466 / ¥2,800(税込)
※初回限定仕様(ハードカバータイプブックレット付) / 通常仕様あり
01. プラネタリウム
02. カルマ <ナムコ プレイステーション2用ソフト「テイルズ オブ ジ アビス」テーマソング>
03. supernova
04. ギルド
05. 涙のふるさと <LOTTE airs [エアーズ]CM タイアップ楽曲>
06. 花の名 <映画「ALWAYS 続・三丁目の夕日」主題歌>
07. メーデー
08. R.I.P.
09. Merry Christmas
10. HAPPY
11. 魔法の料理 ~君から君へ~<NHKみんなのうた(2010年4-5月のうた)>
12. モーターサイクル
13. 宇宙飛行士への手紙
■ 「BUMP OF CHICKEN I [1999-2004]」「BUMP OF CHICKEN II [2005-2010]」初回限定仕様2タイトル購入者限定封入特典
・ベストアルバム発売記念ライブ QVCマリンフィールド公演 チケット購入応募券
・BUMP OF CHICKEN 2013 TOUR「WILLPOLIS」最速先行予約受付応募券
■ 2タイトル同時予約特典
・オリジナルエンブレムステッカー(外付け)

<ベストアルバム発売記念ライブ>
2013年8月9日(金)千葉県 QVCマリンフィールド
※会場&開演時間、チケット発売日、料金などの詳細は後日発表

<BUMP OF CHICKEN 2013 TOUR「WILLPOLIS」>
2013年09月09日(月)愛知県 日本ガイシホール
2013年09月10日(火)愛知県 日本ガイシホール
2013年09月16日(月・祝)福岡県 マリンメッセ福岡
2013年09月25日(水)神奈川県 横浜アリーナ
2013年09月26日(木)神奈川県 横浜アリーナ
2013年10月12日(土)宮城県 セキスイハイムスーパーアリーナ
2013年10月16日(水)大阪府 大阪城ホール
2013年10月17日(木)大阪府 大阪城ホール
2013年10月24日(木)北海道 北海きたえーる
2013年10月28日(月)東京都 日本武道館
2013年10月29日(火)東京都 日本武道館

◆BUMP OF CHICKEN オフィシャルサイト
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