【異次元連載】トム・ハミルトンが語るエアロスミスの真実 Vol.9「“エアロスミスならではの曲”は、作曲者の顔ぶれで決まるわけではないという事実を証明する、好対照な2曲」
『ミュージック・フロム・アナザー・ディメンション!』という作品の特徴のひとつに“バンド然とした曲作りのあり方”が挙げられることは、もうすでに読者にはご理解いただけているに違いない。が、その意味においてアルバムの10曲目に収められている「ラヴァー・アロット」と、11曲目の「ウィー・オール・フォール・ダウン」はかなり両極端な成り立ちをしているといえる。まず、アルバムからの先行第2弾シングルとして去る9月に配信限定リリースされていた「ラヴァー・アロット」の作曲クレジットには、マーティ・フレデリクセンと共にメンバー全員が名を連ねている。しかも、いくつか耳慣れない名前も。その秘密をトム・ハミルトンは次のように明かしてくれた。
◆トム・ハミルトン画像
「実はこの曲には、バンドのクルーたちが持ち込んだ要素がいくつか入っているんだ。僕自身は、この曲の最初のリハーサルには参加しなかったんじゃないかな。というのも、この曲が持ち込まれた日のことを憶えていないんだ(笑)。ただ、原案となるものはそれ以前からあった。この曲のベーシックなリフに合わせてジャムってたことは記憶にあるからね。気に入ったリフ、自分たちたちの耳を捉えるようなリフが生まれてくると、しばらくそれをプレイし続ける傾向があるんだ。それに伴うべき他のパートのアイデアを思いつくまで、ひたすらプレイし続けるんだよ。そういうことが、このバンドにはよくあるんだ。ただ、この曲はとても面白い成り立ちをしていてね。実は、どうしたらいいかわからなかったいくつかのパートが合体して曲になったようなところがあるんだ。その日にスタジオで思いついた、いろんなアイデアをかき集めながら作ったというわけだよ。元々合わせるつもりだったものもあれば、まだ発展途上のリフもあった」
それらが結果、こうして機能的に噛み合うことになったというわけだ。トムの発言はさらに続く。
「この曲のリハーサルのときは、思いっきり音量を上げて弾いていたね。ライヴでやったらきっと楽しいだろうな。間違いなくロックできる曲だ。実際、レコーディングしたあとにステージで演奏したとき、すごく自然に感じられる曲もあれば、最初のうちは違和感が伴う曲というのもある。そういう曲には徐々に慣れていかないとならないわけだけど、この曲については絶対ライヴですごく楽しめるものになるはずだって、リハの段階ですぐに確信できたんだよ。だから、オーディエンスが聴きたがってくれるといいなと思っているよ。なにしろ僕らは絶対やりたいと思うわけだからね(笑)」
こうしてメンバー全員とクルーまでもが作曲に関与している「ラヴァー・アロット」とは逆に、「ウィー・オール・フォール・ダウン」の作詞/作曲にエアロスミスのメンバーは1人も関わっていない。こちらは、あの「ミス・ア・シング」の作者としても知られる女性ソングライター、ダイアン・ウォーレンの手によるものだ。トムはこの曲の第一印象について「最初にこの曲を聴いたときはビビったよ」と語っている。
「正直、“なんてこった。こんなにソフトな曲をエアロスミスでやるのは初めてだ!”と思ったよ。これは僕的には毎度の反応なんだ。「ミス・ア・シング」のときにも同じように感じたしね。もっと言えば「エンジェル」のときもそうだった。そういったソフトなバラードはこれまでにも多々あったけども、長年の間にアーティストとして僕が学んだのは、“実際にやってみもせずに否定するな”ということだった。なにしろスティーヴンはものすごく歌いたがっていたからね。そういった一連の楽曲を通じて、彼はバラードを歌うことがどんどん好きになっていった。その種の曲だと、自分の才能をさらに発揮できるのを理解したんだろう。心情、感情を存分に込めることができるからね。スティーヴン自身、とてもエモーショナルな人間なんだ。この世でいちばん嬉しそうな人間になることもあれば、世界中でいちばん怒りに溢れた人間にもなれる(笑)。彼は、常に感情表現をしているようなものなのさ。だからこういう曲を歌うのも好きなんだろうな。彼には、自分に何ができるのかがちゃんとわかっているしね。そして結果、この曲をやってみた。当然のごとく、とてもいい出来に仕上がった。なにしろハイ・クオリティな楽曲だからね。ダイアンは本当にすごい曲を書くよ。きっと大勢の人が気に入ってくれるだろう。僕にはわかる。日本のみんなもきっと、気に入ってくれるんじゃないかな。南米のファンは間違いなく熱狂するだろう。彼らはとりわけ、スローでエモーショナルな曲が大好きだからね。というわけで……実際どうなるか、しばらく様子を見てみようじゃないか(笑)」
もちろんトムの予見通り、この曲は多くの音楽ファンに愛されることになるだろう。メンバーたちの化学反応から生まれたキラー・チューンたちと同様に。こうしてアルバムもいよいよ終盤に近付いてきたが、トムの楽曲解説はまだまだ続く。次回の更新をお楽しみに!
取材/文:増田勇一
◆エアロスミス特設チャンネル「 【異次元連載】トム・ハミルトンが語るエアロスミスの真実」
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