【異次元連載】トム・ハミルトンが語るエアロスミスの真実 Vol.8「スティーヴンとキャリー・アンダーウッドによる超世代デュエットが実現」
『ミュージック・フロム・アナザー・ディメンション!』が、ビルボード誌による全米アルバム・チャートの5位に初登場。なかには「1位じゃないの?」と感じる読者もいるかもしれないが、なにしろ1989年発表の『パンプ』から6作連続(2004年発表の『ホンキン・オン・ボーボゥ』も含む)でトップ5入りを果たしているわけで、これは快挙というしかない。日本でも洋楽アルバム・チャートでは5作連続の首位獲得となっており、幸先の良いスタートを切ったと言っていいはずだ。
◆トム・ハミルトン画像
そうしたチャート動向などについても新たな情報が届き次第お伝えしていくつもりだが、まずはトム・ハミルトンによるアルバム収録曲解説を続けるとしよう。今回は9曲目に収録されている「キャント・ストップ・ラヴィング・ユー」について。こちらはジョー・ペリーを除くメンバー4人とマーティ・フレデリクセンの共作によるもので、作詞のクレジットにはそのマーティがスティーヴン・タイラーと名前を並べている。このアルバムのなかにあって、いちばんカントリー色の濃い楽曲である。
「この曲もまた(アルバム3曲目に収録の「ビューティフル」などと同様に)、2年前にマーティと集中的に曲作りを行なったときに生まれたんだ。歌詞については、その時点でほぼ完成していた。すごくシンプルな曲だよね。カントリー・ソングを書こうという前提があったわけじゃないんだけども、あの日のプレイの仕方のせいで結果的にそっちの方向に行ったというか。だけど僕たちは、突然ここで“カントリー・アーティストになったんだ!”なんて世に知らしめようとしているわけじゃない。エアロスミスはロック・バンドなんだからね。だけど、ロックンロールの基本的要素のひとつにカントリーがあるのは間違いない。1940年代後半から1950年代にかけての音楽を聴けば、ゴスペルがあって、ブルースがあって、それからカントリーやブルーグラスがあって、そこからロックンロールが生まれてきたことがわかるはずだよ。だからこうした要素がときおり出てくることは必然的でもあるんだ。特にこうして40何年もバンドをやっているとね(笑)。で、曲自体の話に戻ると、たまたまこういうものを思いついたんで、そのまま進めてみたところ、スティーヴンがこの出来についてとても喜んでくれてね。そこにまず彼のヴォーカルを乗せてみたわけさ」
トムの発言にもあるように、ロックンロールはカントリーとリズム&ブルースが融合して生まれたものだとされている。だからそうした要素が彼らの作品中に垣間見られるのはごく自然なことだと言えるし、たとえば過去には『ナイン・ライヴズ』(1997年)から生まれたヒット曲「ピンク」がカントリー・チャートにランクされたという事実もある。とはいえ、この曲に伴うカントリー・フレーヴァーを何よりも決定づけたのは、スティーヴンのデュエット相手の存在だろう。ここで起用されているのはキャリー・アンダーウッド。今やアメリカを代表する女性シンガーのひとりとなった、『アメリカン・アイドル』出身のカントリー系歌姫である。
「ここでカントリーの世界の人に彼と一緒に歌ってもらえたら、より素晴らしいものになるんじゃないかと思ったんだ。僕たちは、キャリー・アンダーウッドのことをすごくリスペクトしている。正直に言うと、僕自身は『アメリカン・アイドル』という番組があまり好きではないし、あれを見たことはないんだけど、彼女はあの番組の優勝者のなかから世界的なアーティストになったうちのひとりなんだ。彼女は素晴らしいシンガーだし、僕は常々、彼女の歌には感服させられてきた。でも今回のことは“有名な歌い手たちのなかから、しかるべき人物を選ぼう”とわざわざ計画していたわけじゃないんだ。たまたま同じ頃に彼女がL.A.にいたから実現したことなんだよ。他にも共演可能だったシンガーはいたと思うけど、スティーヴンがいちばんインスパイアされたのが彼女だったんだ。ある晩のこと、スタジオに彼女がやってきた。本来は録りの予定が入っていなかったところにね。スティーヴンはそこで、とりあえず試してみようと思ったんだろうな。それから2~3日間、彼女に来てもらって、僕らにもそれを聴かせてくれたんだけど、全員、“スティーヴン、(みんなの知らないところで)コトを進めてくれてありがとう!”という感じだったよ(笑)。とにかく仕上がりがすこぶる良かった。そしてみんな、自然に笑顔になったんだ」
トムによる楽曲解説は、まだまだ終わらない。次回の更新をお楽しみに!
取材/文:増田勇一
◆エアロスミス特設チャンネル「 【異次元連載】トム・ハミルトンが語るエアロスミスの真実」
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