[クロスビート編集部員リレー・コラム] 編集長大谷編「デヴィッド・ボウイ」

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クロスビート2012年5月号の「ジギー・スターダスト」特集は本誌としては初の試みだった。今まで単体のアーティストを特集することはあっても、ある時期だけに焦点を絞った企画はやったことがなかったからだ。しかし、この時期のボウイはやればやるほど深みが増し、いかに「ジギー・スターダスト」が凄かったかということに納得させられるばかりだった。

◆デヴィッド・ボウイ画像

それに合わせて今回紹介したいのは「BBC Radio Theatre, London, June 27,2000」だ。本誌P.39で紹介した「Bowie At The Beeb」の初回限定版に付いていたものだ。実はこれ、秘蔵音源発掘を除けばボウイにとって「ステージ」以来24振りのライヴ・アルバムなのだ。

2000年6月にロンドンで行なわれたこのライヴは、まず選曲がいい。ジギー時代の「気のふれた男優」に始まり、1980年代の「アッシェズ・トゥ・アッシェズ」「ディス・イズ・ノット・アメリカ」が並び、1990年代にナイン・インチ・ネイルズと共演した「アイム・アフレイド・オブ・アメリカンズ」や当時の最新作「セヴン」までがピック・アップされているのだ。

いわゆるグレイテスト・ヒッツではないのに、様々な引き出しを開けていくような展開はまさしくボウイの真骨頂。しかもこうやって、1970年代黄金期の曲と1990年代以降の曲を並べて聴いてみると、ボウイがいかに常に現在進行形で走り続けてきたかがよくわかるのだ。最後の「レッツ・ダンス」のライヴ・アレンジは特に凄い。ここに、通り一遍の懐メロにはしたくないというボウイの矜持が感じられる。ジャケットは「?」だが、内容は最高である。
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