【クロスビート特別コラム】ミュートマスが新曲3曲を初披露、気になる新作は?
クロスビートの(元)編集部員、中嶋がアメリカからお届けする、現地での公演やヒットに関する不定期コラム。第3回は、ミュートマスが新作用の新曲を披露したヒューストンでのライブの模様をレポート。
◆ミュートマス画像
8月9日、10日にテキサス州ヒューストンで開催された<Whatever Fest>。地元のライブハウスやバーを利用した地域密着型のこの小規模フェスは今年が初開催で、公演日の1ヵ月前にようやくラインナップ発表という実にのんびりした運営だったが(笑)、ゆるい雰囲気が心地よい。
メイン・ステージは日本で言うなら恵比寿リキッドルームほどの大きさのライブハウスで、900人も入れば満員といったところ。ミュートマスの一つ前のバンドから会場に入ったがまだ人はまばらで、難なく最前列をゲットできた。彼らの出演時間頃には会場もほどよく埋まり、夜10時半を回ったところでバンドが登場。序盤から「Spotlight」「Prytania」「Blood Pressure」というハイテンションな楽曲の連続に、会場も大きく揺れる。この日のライブは彼らにとっても5ヵ月ぶりだったが、事前にかなり入念にリハーサルを重ねていたせいか、ブランクはまったく感じさせなかった。
ここでボーカルのポールが観客に挨拶。「今日は新曲をプレイするよ。僕らはレコーディングする前の曲をライブでやることは滅多にないんだけど、今夜はみんなのリアクションとバイブが欲しいんだ。OK?」と、初披露の新曲を演奏した。この新曲コーナーの間はパートがチェンジし、ベースのロイがギターに持ち替え、ギターのトッドがモーグシンセでベース音を担当。1曲目の「Monument」は、メロディアスなナンバー。雰囲気としては「Control」や「Goodbye」といった既存曲と近く、演奏後には早くも観客から「I love this song!」という声が上がった。
2曲目の「Stratosphere」はシンセのフレーズがループする中でポールがじっくりと歌い、徐々にクライマックスを迎えるミディアム・ナンバーだ。そして3曲目の「Used To」は、イントロから力強いドラム・サウンドが主張するアップ・ビートな曲。いずれも実にミュートマスらしい透明感、浮遊感、メロディに溢れていて、ロックンロール色の強かった3作目「オッド・ソウル」の路線から離れ、最初の2作のニュー・ウェイブっぽいテイストに回帰している。もちろんアルバムの全容はまだわからないが、前作のギター・オリエンテッドなサウンドとは異なるものになりそうだ。
「Typical」などのキラー・チューンももちろん盛り上がったが、彼らの真骨頂はやはりアンコール。「Reset」ではドラムのダレンがスネアにペットボトルの水を注ぎ、強烈なドラミングで水しぶきを炸裂させる。ポールはハモンド・オルガンからドラム・セットへ、ドラム・セットからMIDIコントローラーへと次々に楽器を変え、MIDIコントローラーを観客に持たせて自分はまたドラムに戻るという、忙しない動きでマルチプレイヤーぶりを発揮。そしてそのまま「Break The Same」へとなだれ込み、メンバー全員が激情みなぎるインスト・パートで観客を圧倒する。そしていよいよクライマックスの「Quarantine」へ差し掛かると、観客の頭上にLEDライトのついたエアーマットが投げ込まれ、ステージから助走をつけたポールがジャンプ!観客が支える不安定なマットの上で立ちあがり、会場全体を煽りながら熱唱を続ける。ポールがマットから客席に転落するアクシデントはあったものの、会場はヒートアップするばかりだ。
怒涛のインプロビゼーション・タイムに突入すると、ドラム・セットから立ちあがったダレンがスネアとタムをラックから外し、手に持ってステージ中央へ。なんと筆者とその隣に立っていた女性客にそれぞれスネアとタムを支えているよう指示し、その場にしゃがみ込んでソロを叩き始めた。スティックが折れるまでの1分ほどのソロだったが、ものすごい手数の多さで叩く彼のパワーに、スネアを持った手が痛いほど痺れる。やがてダレンがドラム・セットへと戻り、3人がドラム、トッドがエフェクター・ボードを担ぎあげてノイズをまき散らすというエンディングへ。
終演後、ステージ淵に来て観客と握手を交わすメンバーに懇願し、セットリストをもらうことができた(この日は2曲目に書かれている「Chaos」はなぜか演奏していない)。また、ダレンに「日本でもたくさんのファンがあなたたちのライブを待ってますよ!」と伝えると、胸に手を当てて「僕も日本が大好きだよ、きっと行くよ!」と答えてくれた。
そんな彼らの新作だが、バンドは先日、LAでエアロスミスやザ・フレイのヒット作を手がけたプロデューサー/エンジニア、ウォーレン・フアールと共にレコーディングを行なったことを公開。また、8月末に出演したフェスのインタビューで「新作は年内にリリース」と発言している。期待して待ちたい。
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