【連載】アストゥーリアス大山曜の[我らプログレッシバー!]Vol.8「クラシック奏者がロックバンドに入ったら…」

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前回まで“5大バンド”を紹介してきて、プログレ初心者の方々に向けたガイド的コラムとして、それなりに的確な内容だったのではと思いますが、今回はちょっと毛色が違います(^^;)。本来は5大バンドの次に聴くべきイタリアのバンドだったり、クラシカルなバンドだったり、一人多重録音のあの人だったり…。選択肢はいろいろあったのですが、来月某バンドが来日することに合わせて、急遽“チェンバープログレ特集”なるものをやってみたいと思います。

チェンバー・ミュージック=室内楽、クラシックの小編成の合奏を意味します。楽器としてはバイオリン・チェロなどの擦弦楽器、フルート・オーボエ・クラリネットなどの木管楽器と、ピアノ類の合奏が主なものです(ギター類、金管楽器、マリンバ類などが加わることも)。

今まで紹介してきたバンド達は、プログレッシブロックという名の通り、ロックバンドの基本であるドラム・ベース・ギター・キーボードの4リズム編成(+ヴォーカル)中心ですが、新しいものを求めるミュージシャン達は60年代後半から、いろいろな楽器とのコラボに挑戦しています。

あくまでも個人的見解ですが、ロックに室内楽の楽器を導入して最初に成果を収めたのはフランク・ザッパではないかと思います。「アンクルミート」「バーント・ウィーニー・サンドウィッチ」といった作品で斬新なロックとクラシック近代音楽との融合を聴くことが出来ます。

ザッパに関してはとてつもなく幅広い音楽傾向・業績が残されていますので、いずれ改めてご紹介したいと思います。

そして73年、ザッパの影響も受けたと思われるプログレバンド、ヘンリーカウの登場です。フリージャズと現代音楽の影響から、複雑に構築された全く新しいロックミュージックを確立しました。結成当初からバイオリン・サックス等が加わったユニークなサウンドでしたが、2nd『Unrest』ではバスーン・オーボエ奏者リンゼイ・クーパーが加わり、摩訶不思議なサウンドを展開します。“チェンバープログレ”なるものを最初に確立したバンドではないかと思います。

「Ruins」という曲など、正直言って現代のJ-Popに慣れた方にはかなりキツいと思います(^^)。クラシック・ジャズなどのインストに慣れた方でもあっけにとられるような構造の曲です。ヘンリーカウの面々は商業的な音楽界には見向きもせず我が道を突き進み、RIO(Rock In Opposition:反体制ロック)運動を主宰し現在も精力的に活動しています。

そういった流れを受け77年デビュー、チェンバープログレの代表格と称されるバンドがベルギーの“ユニヴェルゼロ”です。ヘンリーカウがフリージャズの影響下で即興演奏に重きを置いていたのに対し、近代~現代のクラシック音楽や東欧民族音楽からの影響を消化した、独自の“暗黒系”プログレを確立します。本来優雅なイメージの弦楽器、木管楽器がロックバンドのリズム隊と絡むと、何故か怪しげな狂気にも満ちたサウンドへと変化します。奏者としてももちろん、楽曲的にもクラシック音楽に精通していなければ作れないであろう高度な構造の“室内楽ロック”です。

そんなユニヴェルゼロが2月に初来日公演を行います。なんと私のバンド“エレクトリック・アストゥーリアス”が2/12(日)夜の部にオープニングアクトとして出演することになりました(30分ほどです)。チェンバープログレの神様との夢の共演!大変光栄なことで今からとても楽しみです(^^)。
暗黒系ということでとっつきづらい面もありますが、複雑な変拍子と疾走感のある曲展開は単純にカッコイイと思います。2度と見られないかもしれませんので、この機会に是非!

他にもチェンバー系のバンド(暗黒系でない?)はいろいろありますが、今回はこの辺で。私のもうひとつのユニット“アコースティック・アストゥーリアス”は直接的には上記バンドの影響を受けていないかもしれませんが、バイオリン&クラリネットを加えた編成で“ロック”を演る、という発想は通じるものがあると思います。2/4(土)池袋の教会シャロンゴスペルチャーチでワンマンライブが行われます。そちらの方もどうぞよろしくお願いしますm(_ _)m。

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