【連載】アストゥーリアス大山曜の[我らプログレッシバー!]Vol.7「“演劇的”プログレ」
プログレ黄金期と呼ばれる70年代前半、少なくとも日本では、前々回までにご紹介した4つのバンドが知名度と功績で他を圧倒し4大バンドとして君臨していました。それがある時期から5大バンドと呼ばれるようになり現在に至っています。ということで今回は5つめのバンド“ジェネシス”の紹介です。
◆ジェネシス画像
ジェネシスのデビューは1969年、Vocalのピーター・ガブリエルを中心とした5人組で、アルバムを発表するごとに徐々に評価を上げ、1971年の3rd「怪奇骨董音楽箱」で独自の美意識に満ちたサウンドを完成、イギリス並びにヨーロッパでの人気を不動のものとします。
で、日本での人気はどうだったのか?私の体験談を書きます(^^)。1977年、ひと通り4大バンド+αの有名どころを聴き、プログレ道に足を突っ込んだ中学3年生の私は、ジェネシスなるバンドが良いらしいと聞き、地元1番のレコード屋に探しに行きました。もちろん“ジェネシス”などというコーナーはなく、プログレ“サ行”の欄に「フォックストロット」を見つけ買って帰ったのが出会いでした。
第一印象としては、他の4大バンドに比べてつかみどころがない感じ?難しいことをやっていてもちょっと貧弱なサウンド。でも聴き込むうちに、美しいパートとあくの強いヴォーカルの対比のとりこになり「フォックストロット」と「眩惑のブロードウェイ」は30年以上経った現在も特別な愛聴盤です。
…と日本ではあくまでもマイナーな存在だった初期ジェネシス。シアトリカル(演劇的)ロックと呼ばれています。マザーグースを題材にした寓話的世界観に、独自の怪しい解釈を加えたストーリーが、時に激しく、時に美しいサウンドに乗せドラマチックに展開されます。何よりガブリエルの圧倒的存在感!ステージでは詞の世界に合わせた奇抜なコスプレ?!(お花、キツネ、老人、イボ人間…など、その後のソロ活動からは想像出来ないお姿)で観客をその世界にいざないます。ちょっとイロモノ?かと思いきや、その音楽性の高さは世界中に浸透し数多くのフォロワーを生み出しています。
そんなジェネシスも1975年に看板のガブリエルが脱退。バンド存続の危機に陥りますが、なんとドラマーだったフィル・コリンズ(この時点では裏方の有能なドラマーに過ぎなかった!)がヴォーカルも兼任することになり、新たな方向を探ることに…。世はプログレが衰退していき、有名バンドがどんどんポップ路線に変更し、マニアからも愛想をつかされ始めたプログレ冬の時代。そんな中ジェネシスだけはアメリカ進出に成功し、あの野暮ったい風貌(失礼!)のフィル・コリンズが大スターとなり、のちにガブリエルもソロとして負けないぐらいのセールスを記録。ジェネシスは押しも押されぬ音楽界のビッグネームとなったのでした。初期のアルバム&ピーターの歌声に涙した者にとっては複雑な思いでしたが、いつの間にかプログレ“5大バンド”なるものが定着していたのです。
ということで、多くのマニアの意見では、78年以降のジェネシスは別のポップスバンドと見るのが正しい見解のようです(私も賛成)。もちろん当時の日本の状況など関係なく、ジェネシスの功績は“5大バンド”としてふさわしいものですので、プログレ第5のバンドとして自信を持ってお薦めします。ただ間違っても「アバカブ」などではなく(^^;)、出来れば「怪奇骨董音楽箱」から順番に聴いていって下さい。そして歌詞が重要ですので、歌詞カードをお手元に(美しいサウンドなのにスプラッターだったりグロテスクだったりします)その演劇的世界観にどっぷり浸かっていただければと思います。時代を超越した生涯の友となり得る音楽だと思います。最後にポップス的見地から見た後期ジェネシス&フィル・コリンズの功績にも敬意を表してお別れしたいと思います。では、また。
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