【BARKS編集部レビュー】練習もライヴも宅録もこれ1台でOK! 図太い迫力サウンドのギターアンプCUBE-80XL
ローランドのCUBEシリーズは、コンパクトなサイズから想像できないほどのパワフルなサウンド、そしてCOSMによるアンプ・モデリングやエフェクトによる多彩な音作りができることで人気のギターアンプだ。(COSMとは、楽器の素材や回路、さらに電気的、電子的な影響、そして空間特性も含め、考えられる様々な要素をDSP処理し再現する技術で、BOSS MICRO BR BR-80などローランド/ボスの様々な製品に搭載されている)。ギター用CUBEシリーズには15W、20W、40W、80Wの4タイプ(ほかに電池駆動も可能なMICRO CUBEもあり)から、用途に応じて選ぶことができる。出力の小さい15Wや20Wのモデルなどは一見普通のミニアンプのようだが、その見た目を裏切る迫力サウンドが、発売以来多くのギタリストをノックアウトしている。CUBEシリーズの全製品に共通して、“圧”を感じるようなパワフルなサウンドが大きな特徴となっているのだ。
80WのCUBE-80XLはそのフラッグシップモデル。機能は本当に豊富だ。LEAD(リード)とJC CLEAN(クリーン)の2チャンネルのアンプは瞬時に切り替え可能、10種類のアンプ・モデリングを搭載したLEADチャンネルでは名機と呼ばれた著名アンプのような定番の音も作り出せるし、作った音の設定は保存もできる。エフェクトはディレイ、リバーブのほかに5タイプ、さらにはチューナーや80秒までのフレーズ録音が可能なLOOPER機能まで搭載されている。そしてフットペダルで様々な操作を簡単に行なえる点も便利だ。しかしなんといっても一番の魅力は“深い歪みサウンド”を追求したという、図太く迫力ある音色だ。CUBE-80XLは、ロックはもちろん、幅広いジャンルのギタリストにおすすめのアンプなのだ。
▲コントロール・パネル
▲リア・パネル
■頑強な作りが生み出す迫力のサウンド
CUBE-80XLを箱から取り出してまず感じるのは、ズッシリと重いこと。実際には16kgしかないのでたいしたことはないのだが、30cmスピーカー搭載のキューブ型、見た目がコンパクトなだけに重量感があるのだ。作りはとても堅牢で頑強だ。アンプ側面の四辺はがっちりとプレートが組み込まれていて、大き目のビスでガッチリと留められている。側面を軽くコツコツと叩いてみると、とても締まった音がして、キャビネットも分厚くできていることがわかる。もちろん丁寧に扱うに越したことはないが、少々の衝撃ではびくともしなさそうだ。
スピーカーを取り付けるバッフル板は、ダイレクトジョイント構造により、四方から挟み込むようにがっちりと取り付けられている。一般的にはねじ止めだが、CUBEシリーズはスピーカーの駆動を最大限に発揮できるように設計され、効率の良い出力を実現している。また搭載されているスピーカーも、ローランドのオリジナルのもの。既成の他社製品を取り付けたのではなく、あらゆる音に対応するため、コーンから自社開発したものだというから恐れ入る。こうした堅牢さと音へのコダワリがあるからこそ、迫力あるサウンドを生み出せるのだ。
■便利なチューナーも内蔵
ギターの演奏前に必ずしなければならないのがチューニング。CUBE-80XLにはチューナーも内蔵されている。まずTUNERボタンを押し、つまみでチューニング対象の弦の音程を指定する。7弦ギターの7弦解放にあたるBや半音下げの5弦のA♭も選択できる。これで、弾いた音のピッチが合っていれば緑のランプが点灯し、ずれているときはその左右の赤ランプが点灯する。また、TUNERボタンを長押しすると、クロマチックチューナーモードになり、弦の指定をせずチューニングを行なうことができる。
■JC CLEANと10種類のアンプタイプを選べるLEADチャンネル
ではさっそく弾いてみよう。CUBE-80XLにはJC CLEANとLEADの2つのチャンネルがあって、スイッチで切り替えられる。JC CLEANはローランドの名機、“ジャズコーラス”JC-120をモデリングしたチャンネルだ。弾いてみると、さすが本家本元、まるでJC-120そのままの音。曇りがなく粒立ちがよい、ギターの素性がそのまま表れるようなまさにクリーンなサウンド。BRIGHT(ブライト)スイッチをオンにすれば、さらに中高域の粒立ちがくっきりし、輪郭が明瞭になる。16ビートでカッティングすれば80年代に流行った西海岸フュージョンのサウンドだし、アルペジオならどんなジャンルにでも使えるだろう。エフェクトのつまみ(後述)でコーラスをちょっと足してやるとさらに雰囲気が出る。歯切れがいいから、少しうまくなったように感じてしまうほどだ。
LEADチャンネルには、歪み系を中心に、著名アンプをモデリングしたアンプ・タイプが10種類。つまみで選択するだけで、すぐに聴き覚えのある音色を呼び出すことができる。たとえば、ACOUSTIC SIMはエレキギターをアコギの音にするオリジナル・アンプで、シングルコイル・ピックアップのフロントならあたたかい音になるからベストマッチ。BLACK PANELはフェンダーのツインリバーブをモデリング。幅広いジャンルで応用できそうな素朴な音だが、低音弦の太さが心地よいから、クリームの「サンシャイン・ラヴ」あたりを弾いてみたくなる。BRIT COMBOは、VOXのAC-30TBだ。ゲインの設定で歪み具合を変えることで、キャラクターが変化するのが面白い。AC-30というとブライアン・メイを連想する人もいるだろうが、これは60年代リバプールサウンドを代表する音だ。歪みを適度に抑えてコードをかき鳴らし初期~中期のビートルズなんかをやったらハマりそうだ。またDYNA AMPはピッキングの強弱で音色が変化するオリジナル・アンプ。弱く弾くとクリーンに近いサウンドで低音もかなり出るが、強く弾くと歪んだ音になり、中域が強く出るようになるので、いわゆる“ガツンと来る音”になる。本来、音量や音色をピッキングのニュアンスだけでコントロールするのは、相当な腕前がなければできないこと。しかしこのアンプ・タイプはそれをかなり手伝ってくれるので、ラリー・カールトンやスティーヴ・ルカサーといった超テクニシャンがやっているようなことに、ほんの少しだけでも近づけるかもしれない。
ハードロック向きのアンプ・タイプとしては、CLASSIC STACKやMETAL STACK、R-FIER、EXTREMEなどがある。CLASSIC STACKはマーシャルのJMP1987をモデリングしたもので、中域の太いいわゆる70年代ハードロックサウンドが出せる。ゲインを最大にして歪ませれば、ディープ・パープルの「スモーク・オン・ザ・ウォーター」のリフが再現できそうだ。METAL STACKはPEAVEYのEVH5150、言わずと知れたヴァン・ヘイレンモデルのモデリング。ヴァン・ヘイレンと聞いて想像するよりは歪みが抑え目で中域が前に出たサウンドだが、大音量でエディのリフを弾いたらさぞ気持ちいいだろうという音。さらにR-FIERはMESA/BoogieのRectifier、いわゆる“レクチ”のサウンドだ。激しく歪んでいて、低域もかなり出る。スラッシュ系の低音リフなどはかなりカッコよく決まるだろう。そして新規追加されたオリジナル・アンプのEXTREMEは、さらに激しくつぶれたような歪みのサウンド。R-FIERに比べ低域が太く出るが、1音1音の粒立ちははっきりしているのでインパクトがある。ハードロック/へヴィメタルで、ここぞというときに使いたいサウンドだ。
SOLO機能では、作った音を記憶させることができる。記憶できるのはアンプ・タイプの選択と、イコライザー、プレゼンス、および後述のエフェクトの設定だ。音色の設定を行なった後、SOLOのスイッチを長押しするだけでその設定を記憶させることができ、その後SOLOボタンを押して呼び出すことができる。SOLO機能は、JC CLEANとLEADの両方のチャンネルで使えるので、それぞれのSOLOオンの音、それぞれのSOLOオフの音、合計4種類の音を瞬時に切り替えられる。この切り替え操作はフットスイッチで行なえるから、ライヴやレコーディングのときにも、イントロ、リフ、ソロといった箇所で手を離さず音色を変更できる。
ちなみにフットスイッチは、踏んでいる間オン、離すとオフ(またはその逆)になるモーメンタリー・タイプ(BOSSではFS-5Uとして販売されている)と、踏むたびにオン/オフが切り替わるラッチ・タイプ(同FS-5L)があり、CUBE-80XLはその両方に対応する。どちらのタイプのスイッチを使うかは、リア・パネルのFOOT SW TYPEスイッチで設定できる。
■伝統のコーラスを含む5つのエフェクトは1つのつまみに
ローランドの名機JC-120で、ハリのあるクリーンなサウンドとともに今も評価が高いのが内蔵のコーラスとトレモロのエフェクト。CUBE-80XLにももちろんこれらのエフェクトが組み込まれている。コーラスとトレモロのほかに、フランジャー、フェイザー、そしてヘビー・オクターブ、合計5つのエフェクトが搭載され、このうち1つを選んで使えるようになっている。
エフェクトは、EFXと書かれたつまみに、5つのエフェクトすべてが割り当てられている。このつまみのもっとも左の位置、時計で言う6時半くらいの位置がオフで、そこから9時くらいまでがコーラス、9時から12時がフランジャー、2時半までがフェイザー、4時までがトレモロ、そして4時から5時あたりがへビー・オクターブになっているのだ。つまり、このつまみを続けてくるくるっと回していくと、最初はコーラスがだんだん深くなっていき、しばらくするとコーラスがオフになってフランジャーがかかり始め、次にフランジャーがオフになりフェイザーが深くなっていき、さらにトレモロに変わってスピードがだんだん速くなり、最後はヘビー・オクターブがかかる。
これらのエフェクトは、どれも大げさではなく、どちらかといえば控え目にかかるのだが、それでも効果はかなりのもの。とくにローランド伝家の宝刀とも言えるコーラスやフランジャーは、クリーンでも歪み系でも相性がよく、音が分厚くなって前に出てくるように聴こえるから、ついつい使いたくなる。80年代AORなどの16ビート・カッティングなんかはクリーンのまま、あるいは軽く歪ませてコーラスをかければバッチリOKという感じ。ヘビー・オクターブはいわゆるオクターバーで、弾いた音の1オクターブ下の音が追加されるもの。クセがなく低音が重苦しくならないので、自然に厚みを増した音になる。
このほかに独立してディレイとリバーブも装備される。ディレイは、つまみでディレイ音の音量を調整するタイプのショートディレイだ。ディレイタイムは、つまみのそばにあるTAPスイッチを長押ししたあと、REC/PLAY/DUBスイッチを何回か押して、あらかじめ30ms/50ms/70ms/90msの4段階から選択しておく。このディレイも演奏を邪魔しない自然な響きなのがすごくいい。また、リバーブにはスプリングとプレートの両方が用意されているのがうれしいところ。これも前述のエフェクトと同様、つまみの12時までがスプリング、そこから先がプレートとなっている。スプリングリバーブは“ボヨンボヨン”、プレートは“グワーン”という、どちらも昔からギターアンプについていたあのリバーブの音そのものだ。古き良きロック好きの読者なら、“ギターのリバーブはこれじゃなきゃ”、と思うこと請け合いのサウンドだ。
■一人セッションも可能なLOOPER機能、80秒までのフレーズ録音
面白いのが、弾いたフレーズをその場で録音、再生が可能なLOOPER機能だ。たとえばリフをひととおり録音し、それを再生しながらソロを重ねたりといったことが簡単にできるのだ。複数回重ねて録音することもできるので、複雑なアンサンブルを組み立てることも可能だ。マルチエフェクターのサンプラー機能を使ってよくやるアレを、アンプだけでできるようにしてしまったというわけだ。
では、最初にコードバッキングを入れ、次にリフ、そしてソロを重ねてみよう。まずつまみをLOOPER位置に回し、REC/PLAY/DUBボタンを押す。これでボタンが赤く点灯し、録音待機状態になる。これでギターを弾けば、録音が自動的に開始される。まずはコードバッキング。8小節ほど弾いたところで再びREC/PLAY/DUBボタンを押して録音を終え、再生して聴いてみる。フレーズのアタマが切れるようなことはないし、音もクリーンだ。次にリフに進もう。再生中にREC/PLAY/DUBボタンを押せば録音開始だ。先ほど録ったコードバッキングは、TAP/STOPボタンで停止するまで、ループ再生されるので、いくらでも重ねることができる。あまり面白いので、次々にアンプ・タイプを切り替えて、色々な音色で録音してしまった。この機能、ぜひ試してみてほしい。ハマること間違いなしだ。
■図太く、力強く、迫力あるサウンドは魅力大
CUBE-80XLでギターを弾いてみて感じたのは、とにかく力強く、パンチがあり、前に出てくる音だということ。締まっていて輪郭も明瞭。これはどのアンプタイプでも共通だ。その迫力は、30cmスピーカー、出力80Wとは思えないほどパワフルなのだ。一般的なアンプシミュレーターは、歪んではいるものの、音がやせ気味だったりつぶれすぎだったり、軽い音になってしまうものも多いが、それとは一線を画する太いサウンドは本当に魅力的だ。そして当然ながら、ロック史に残る名機のサウンドを瞬時に呼び出せるのもうれしい。これだけの音が出るのだから、スタジオでの練習はもちろん、レコーディングやライヴにも十分対応するだろう。さらに、音量を小さくしても音がボケることがないし、ヘッドフォン端子も装備しているから、自宅での練習にも最適。CUBE-80XLは、オールラウンドにどこでも使える高性能アンプなのだ。
text by BARKS編集部 森本
○CUBE-80XL 主な仕様
定格出力:80W
規定入力レベル:INPUT=-10dBu/1MΩ、AUX IN=-10dBu
スピーカー:30cm
接続端子:INPUT端子(標準タイプ)、AUX IN端子(ステレオ・ミニ・タイプ)、LINE OUT端子(標準タイプ)、RECORDING OUT/PHONES端子(ステレオ標準タイプ)、EXT SPEAKER端子(標準タイプ)※、FOOT SW端子(TIP:SELECT、RING:SOLO)(TRS標準タイプ)、FOOT SW端子(TIP:EFX、RING:REVERB)(TRS標準タイプ)、FOOT SW端子(TIP:DELAY/REC/PLAY/DUB、RING:TAP/STOP)(TRS標準タイプ)
電源:AC100V(50Hz/60Hz)
消費電力:75W
付属品:取扱説明書、保証書、ローランド ユーザー登録カード
外形寸法:幅(W) 440 mm ×奥行き(D) 265 mm ×高さ(H) 440 mm
質量:16.0 kg
CUBE-80XL
価格:オープン (予想実売価格 4万円前後)
発売中
◆CUBE-80XL 製品詳細ページ
◆ローランドアンプ・カテゴリーサイト
◆ローランド
◆ローランド チャンネル
◆BARKS 楽器チャンネル
80WのCUBE-80XLはそのフラッグシップモデル。機能は本当に豊富だ。LEAD(リード)とJC CLEAN(クリーン)の2チャンネルのアンプは瞬時に切り替え可能、10種類のアンプ・モデリングを搭載したLEADチャンネルでは名機と呼ばれた著名アンプのような定番の音も作り出せるし、作った音の設定は保存もできる。エフェクトはディレイ、リバーブのほかに5タイプ、さらにはチューナーや80秒までのフレーズ録音が可能なLOOPER機能まで搭載されている。そしてフットペダルで様々な操作を簡単に行なえる点も便利だ。しかしなんといっても一番の魅力は“深い歪みサウンド”を追求したという、図太く迫力ある音色だ。CUBE-80XLは、ロックはもちろん、幅広いジャンルのギタリストにおすすめのアンプなのだ。
▲コントロール・パネル
▲リア・パネル
■頑強な作りが生み出す迫力のサウンド
CUBE-80XLを箱から取り出してまず感じるのは、ズッシリと重いこと。実際には16kgしかないのでたいしたことはないのだが、30cmスピーカー搭載のキューブ型、見た目がコンパクトなだけに重量感があるのだ。作りはとても堅牢で頑強だ。アンプ側面の四辺はがっちりとプレートが組み込まれていて、大き目のビスでガッチリと留められている。側面を軽くコツコツと叩いてみると、とても締まった音がして、キャビネットも分厚くできていることがわかる。もちろん丁寧に扱うに越したことはないが、少々の衝撃ではびくともしなさそうだ。
スピーカーを取り付けるバッフル板は、ダイレクトジョイント構造により、四方から挟み込むようにがっちりと取り付けられている。一般的にはねじ止めだが、CUBEシリーズはスピーカーの駆動を最大限に発揮できるように設計され、効率の良い出力を実現している。また搭載されているスピーカーも、ローランドのオリジナルのもの。既成の他社製品を取り付けたのではなく、あらゆる音に対応するため、コーンから自社開発したものだというから恐れ入る。こうした堅牢さと音へのコダワリがあるからこそ、迫力あるサウンドを生み出せるのだ。
■便利なチューナーも内蔵
ギターの演奏前に必ずしなければならないのがチューニング。CUBE-80XLにはチューナーも内蔵されている。まずTUNERボタンを押し、つまみでチューニング対象の弦の音程を指定する。7弦ギターの7弦解放にあたるBや半音下げの5弦のA♭も選択できる。これで、弾いた音のピッチが合っていれば緑のランプが点灯し、ずれているときはその左右の赤ランプが点灯する。また、TUNERボタンを長押しすると、クロマチックチューナーモードになり、弦の指定をせずチューニングを行なうことができる。
■JC CLEANと10種類のアンプタイプを選べるLEADチャンネル
ではさっそく弾いてみよう。CUBE-80XLにはJC CLEANとLEADの2つのチャンネルがあって、スイッチで切り替えられる。JC CLEANはローランドの名機、“ジャズコーラス”JC-120をモデリングしたチャンネルだ。弾いてみると、さすが本家本元、まるでJC-120そのままの音。曇りがなく粒立ちがよい、ギターの素性がそのまま表れるようなまさにクリーンなサウンド。BRIGHT(ブライト)スイッチをオンにすれば、さらに中高域の粒立ちがくっきりし、輪郭が明瞭になる。16ビートでカッティングすれば80年代に流行った西海岸フュージョンのサウンドだし、アルペジオならどんなジャンルにでも使えるだろう。エフェクトのつまみ(後述)でコーラスをちょっと足してやるとさらに雰囲気が出る。歯切れがいいから、少しうまくなったように感じてしまうほどだ。
LEADチャンネルには、歪み系を中心に、著名アンプをモデリングしたアンプ・タイプが10種類。つまみで選択するだけで、すぐに聴き覚えのある音色を呼び出すことができる。たとえば、ACOUSTIC SIMはエレキギターをアコギの音にするオリジナル・アンプで、シングルコイル・ピックアップのフロントならあたたかい音になるからベストマッチ。BLACK PANELはフェンダーのツインリバーブをモデリング。幅広いジャンルで応用できそうな素朴な音だが、低音弦の太さが心地よいから、クリームの「サンシャイン・ラヴ」あたりを弾いてみたくなる。BRIT COMBOは、VOXのAC-30TBだ。ゲインの設定で歪み具合を変えることで、キャラクターが変化するのが面白い。AC-30というとブライアン・メイを連想する人もいるだろうが、これは60年代リバプールサウンドを代表する音だ。歪みを適度に抑えてコードをかき鳴らし初期~中期のビートルズなんかをやったらハマりそうだ。またDYNA AMPはピッキングの強弱で音色が変化するオリジナル・アンプ。弱く弾くとクリーンに近いサウンドで低音もかなり出るが、強く弾くと歪んだ音になり、中域が強く出るようになるので、いわゆる“ガツンと来る音”になる。本来、音量や音色をピッキングのニュアンスだけでコントロールするのは、相当な腕前がなければできないこと。しかしこのアンプ・タイプはそれをかなり手伝ってくれるので、ラリー・カールトンやスティーヴ・ルカサーといった超テクニシャンがやっているようなことに、ほんの少しだけでも近づけるかもしれない。
ハードロック向きのアンプ・タイプとしては、CLASSIC STACKやMETAL STACK、R-FIER、EXTREMEなどがある。CLASSIC STACKはマーシャルのJMP1987をモデリングしたもので、中域の太いいわゆる70年代ハードロックサウンドが出せる。ゲインを最大にして歪ませれば、ディープ・パープルの「スモーク・オン・ザ・ウォーター」のリフが再現できそうだ。METAL STACKはPEAVEYのEVH5150、言わずと知れたヴァン・ヘイレンモデルのモデリング。ヴァン・ヘイレンと聞いて想像するよりは歪みが抑え目で中域が前に出たサウンドだが、大音量でエディのリフを弾いたらさぞ気持ちいいだろうという音。さらにR-FIERはMESA/BoogieのRectifier、いわゆる“レクチ”のサウンドだ。激しく歪んでいて、低域もかなり出る。スラッシュ系の低音リフなどはかなりカッコよく決まるだろう。そして新規追加されたオリジナル・アンプのEXTREMEは、さらに激しくつぶれたような歪みのサウンド。R-FIERに比べ低域が太く出るが、1音1音の粒立ちははっきりしているのでインパクトがある。ハードロック/へヴィメタルで、ここぞというときに使いたいサウンドだ。
SOLO機能では、作った音を記憶させることができる。記憶できるのはアンプ・タイプの選択と、イコライザー、プレゼンス、および後述のエフェクトの設定だ。音色の設定を行なった後、SOLOのスイッチを長押しするだけでその設定を記憶させることができ、その後SOLOボタンを押して呼び出すことができる。SOLO機能は、JC CLEANとLEADの両方のチャンネルで使えるので、それぞれのSOLOオンの音、それぞれのSOLOオフの音、合計4種類の音を瞬時に切り替えられる。この切り替え操作はフットスイッチで行なえるから、ライヴやレコーディングのときにも、イントロ、リフ、ソロといった箇所で手を離さず音色を変更できる。
ちなみにフットスイッチは、踏んでいる間オン、離すとオフ(またはその逆)になるモーメンタリー・タイプ(BOSSではFS-5Uとして販売されている)と、踏むたびにオン/オフが切り替わるラッチ・タイプ(同FS-5L)があり、CUBE-80XLはその両方に対応する。どちらのタイプのスイッチを使うかは、リア・パネルのFOOT SW TYPEスイッチで設定できる。
■伝統のコーラスを含む5つのエフェクトは1つのつまみに
ローランドの名機JC-120で、ハリのあるクリーンなサウンドとともに今も評価が高いのが内蔵のコーラスとトレモロのエフェクト。CUBE-80XLにももちろんこれらのエフェクトが組み込まれている。コーラスとトレモロのほかに、フランジャー、フェイザー、そしてヘビー・オクターブ、合計5つのエフェクトが搭載され、このうち1つを選んで使えるようになっている。
エフェクトは、EFXと書かれたつまみに、5つのエフェクトすべてが割り当てられている。このつまみのもっとも左の位置、時計で言う6時半くらいの位置がオフで、そこから9時くらいまでがコーラス、9時から12時がフランジャー、2時半までがフェイザー、4時までがトレモロ、そして4時から5時あたりがへビー・オクターブになっているのだ。つまり、このつまみを続けてくるくるっと回していくと、最初はコーラスがだんだん深くなっていき、しばらくするとコーラスがオフになってフランジャーがかかり始め、次にフランジャーがオフになりフェイザーが深くなっていき、さらにトレモロに変わってスピードがだんだん速くなり、最後はヘビー・オクターブがかかる。
これらのエフェクトは、どれも大げさではなく、どちらかといえば控え目にかかるのだが、それでも効果はかなりのもの。とくにローランド伝家の宝刀とも言えるコーラスやフランジャーは、クリーンでも歪み系でも相性がよく、音が分厚くなって前に出てくるように聴こえるから、ついつい使いたくなる。80年代AORなどの16ビート・カッティングなんかはクリーンのまま、あるいは軽く歪ませてコーラスをかければバッチリOKという感じ。ヘビー・オクターブはいわゆるオクターバーで、弾いた音の1オクターブ下の音が追加されるもの。クセがなく低音が重苦しくならないので、自然に厚みを増した音になる。
このほかに独立してディレイとリバーブも装備される。ディレイは、つまみでディレイ音の音量を調整するタイプのショートディレイだ。ディレイタイムは、つまみのそばにあるTAPスイッチを長押ししたあと、REC/PLAY/DUBスイッチを何回か押して、あらかじめ30ms/50ms/70ms/90msの4段階から選択しておく。このディレイも演奏を邪魔しない自然な響きなのがすごくいい。また、リバーブにはスプリングとプレートの両方が用意されているのがうれしいところ。これも前述のエフェクトと同様、つまみの12時までがスプリング、そこから先がプレートとなっている。スプリングリバーブは“ボヨンボヨン”、プレートは“グワーン”という、どちらも昔からギターアンプについていたあのリバーブの音そのものだ。古き良きロック好きの読者なら、“ギターのリバーブはこれじゃなきゃ”、と思うこと請け合いのサウンドだ。
■一人セッションも可能なLOOPER機能、80秒までのフレーズ録音
面白いのが、弾いたフレーズをその場で録音、再生が可能なLOOPER機能だ。たとえばリフをひととおり録音し、それを再生しながらソロを重ねたりといったことが簡単にできるのだ。複数回重ねて録音することもできるので、複雑なアンサンブルを組み立てることも可能だ。マルチエフェクターのサンプラー機能を使ってよくやるアレを、アンプだけでできるようにしてしまったというわけだ。
では、最初にコードバッキングを入れ、次にリフ、そしてソロを重ねてみよう。まずつまみをLOOPER位置に回し、REC/PLAY/DUBボタンを押す。これでボタンが赤く点灯し、録音待機状態になる。これでギターを弾けば、録音が自動的に開始される。まずはコードバッキング。8小節ほど弾いたところで再びREC/PLAY/DUBボタンを押して録音を終え、再生して聴いてみる。フレーズのアタマが切れるようなことはないし、音もクリーンだ。次にリフに進もう。再生中にREC/PLAY/DUBボタンを押せば録音開始だ。先ほど録ったコードバッキングは、TAP/STOPボタンで停止するまで、ループ再生されるので、いくらでも重ねることができる。あまり面白いので、次々にアンプ・タイプを切り替えて、色々な音色で録音してしまった。この機能、ぜひ試してみてほしい。ハマること間違いなしだ。
■図太く、力強く、迫力あるサウンドは魅力大
CUBE-80XLでギターを弾いてみて感じたのは、とにかく力強く、パンチがあり、前に出てくる音だということ。締まっていて輪郭も明瞭。これはどのアンプタイプでも共通だ。その迫力は、30cmスピーカー、出力80Wとは思えないほどパワフルなのだ。一般的なアンプシミュレーターは、歪んではいるものの、音がやせ気味だったりつぶれすぎだったり、軽い音になってしまうものも多いが、それとは一線を画する太いサウンドは本当に魅力的だ。そして当然ながら、ロック史に残る名機のサウンドを瞬時に呼び出せるのもうれしい。これだけの音が出るのだから、スタジオでの練習はもちろん、レコーディングやライヴにも十分対応するだろう。さらに、音量を小さくしても音がボケることがないし、ヘッドフォン端子も装備しているから、自宅での練習にも最適。CUBE-80XLは、オールラウンドにどこでも使える高性能アンプなのだ。
text by BARKS編集部 森本
○CUBE-80XL 主な仕様
定格出力:80W
規定入力レベル:INPUT=-10dBu/1MΩ、AUX IN=-10dBu
スピーカー:30cm
接続端子:INPUT端子(標準タイプ)、AUX IN端子(ステレオ・ミニ・タイプ)、LINE OUT端子(標準タイプ)、RECORDING OUT/PHONES端子(ステレオ標準タイプ)、EXT SPEAKER端子(標準タイプ)※、FOOT SW端子(TIP:SELECT、RING:SOLO)(TRS標準タイプ)、FOOT SW端子(TIP:EFX、RING:REVERB)(TRS標準タイプ)、FOOT SW端子(TIP:DELAY/REC/PLAY/DUB、RING:TAP/STOP)(TRS標準タイプ)
電源:AC100V(50Hz/60Hz)
消費電力:75W
付属品:取扱説明書、保証書、ローランド ユーザー登録カード
外形寸法:幅(W) 440 mm ×奥行き(D) 265 mm ×高さ(H) 440 mm
質量:16.0 kg
CUBE-80XL
価格:オープン (予想実売価格 4万円前後)
発売中
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◆ローランドアンプ・カテゴリーサイト
◆ローランド
◆ローランド チャンネル
◆BARKS 楽器チャンネル
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