[クロスビート編集部員リレー・コラム] 杉山編「若手によるブルース・スプリングスティーンのカヴァーを検証」
クロスビート2010年12月号のコラムで紹介した通り、ヴァンパイア・ウィークエンドがブルース・スプリングスティーンの「アイム・ゴーイン グ・ダウン」をカヴァー。サックス・ソロを完全にスルーした新解釈に「なるほど」と改めてセンスのよさを感じたが、実はこの曲、最近カヴァーしたのは彼らだけじゃない。現在ツアー中のフリー・エナジーは、原曲に通じる男くさい演奏でボスへのリスペクトを表現。その上彼ららしく抜けた部分が あってそこがまたいいのだけど、そんな偶然もあり、スプリングスティーンのカヴァー曲を聴き返してみた。
ボスのカヴァーは数えきれないほどあるが、現在の若手アクトに絞るなら、その再評価を決定付けたのは2007年のアーケイド・ファイアとの共演だろう。実際、ほぼ同時期/それ以降にインディペンデントな若手アクトによるカヴァーが多数。バット・フォー・ラッシェズによる「アイム・オン・ファイア」はビートを排したエキゾティックなバラードで、先日久々の新曲を発表したクロマティックスは、同曲のカヴァーで冷めたセクシーさを追加していた。最も極端なのはダークなUS新人、セーラムによる「ストリーツ・オブ・フィラデルフィア」の再解釈。亡霊がうめくような冒頭から一転、徐々に光が射す後半には、見たことのないボス像が広がるはずだ。
時代を越えて絡み合う糸を辿ってみると、その先は意外な場所に通じている。やはり音楽は、寄り道をする時が一番楽しいのだ。
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