[クロスビート編集部員リレー・コラム] 荒野編「トミー・ホーエン」

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パワー・ポッパーの訃報が続く。メンフィスを拠点に活躍、ビッグ・スターのアレックス・チルトンやクリス・ベルともコラボしたトミー・ホーエンが、6月24日に癌のため亡くなった。享年55歳。

トミーの名が一躍知れ渡ったのは1993年、ライノ・レコーズが編集したパワー・ポップの名コンピ『Come Out And Play』に彼の「ブロウ・ユアセルフ・アップ」が収録されてから。同コンピの続編『Shake It Up』にもトミーがジョン・ティヴェンらと共に組んでいたプリックスの「ラヴ・ユー・トゥナイト」が収められ、ビッグ・スター解散後のメンフィスに彼らの音楽性を受け継ぐアーティスト達(後にコンビを組むヴァン・デューレン、スクラフスなど)がいたことを知らしめる契機となった。

プリックスが1975~1976年にかけて残した音源は、日本のエアー・メイルがCD『ヒストリックス』(2002年)にまとめたが、現在廃盤。パンク前夜の熱気に満ちた本作は、トミーの強烈なハイトーンが胸に迫る名曲揃いで、是非とも再発をお願いしたい一枚だ。

メジャーからのソロ・デビュー作『ルージング・ユー・トゥ・スリープ』(1978年)はサウンドから角が取れ、シンガー・ソングライター的アレンジで統一。先述の「ブロウ・ユアセルフ・アップ」やプリックスの曲の再演など、充実した内容だ。現行CDには発売目前でお蔵入りになった次作用の楽曲も追加。トミーの優れたポップ・センスを堪能して欲しい。

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