[クロスビート編集部員リレー・コラム] 杉山編「スプーン」
モデスト・マウス、シンズ、デス・キャブ・フォー・キューティーなど、2007年以降全米規模で成功したUSインディ勢。その中で個人的に一番感動したのは、スプーンの全米10位だった。と書くと「また地味な…」と言われそうだが、彼らの『ガガガガガ』は、アメリカン・ドリームに対する皮肉を含んだ傑作だったと思う。
今となっては不思議な話だが、この周辺のバンドには当時までバイトをしていたメンバーもいて、つまりは文字通りのどインディ。そうした人々がエンターテインメントの中心、アメリカの音楽シーンに切り込んでいく逆説的な面白さは、あの作品の“アンダードッグ(=負け犬)”に顕著だった。
そんなスプーンの新作が、本国で1月19日にリリースされる。タイトルは「Transference」。2009年3月に出たEPに収録の「Got Nuffin」などを含む全11曲だ。先立ってラジオ局NPRでは新曲を先行放送。それを聴く限り、前作で手に入れたプロダクションの妙を活かしつつ、彼ら本来のクロいグルーヴをより発展させた印象。しかも嬉しいのは、成功した事実を過度に意識しない、伸びやかなスプーン節が広がっていたということだった。やはり苦労人は、やることが誠実なのだ。
…と、まだアルバムを聴いていない時点で盛り上がってしまったが、彼らは今作で、冒頭のバンドにも匹敵する評価を受けるはず。本当にそうなったら、感動して涙が出てしまいそうだ。
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