菊地成孔コンサート 2009、オーチャードホールで2days
●12月5日(土) 菊地成孔DUB SEXTET special guest:UA
午後から降り出した冷たい雨が土砂降りに変わるころ、会場の扉が開いた。悪天候にも関わらず、詰め掛けた(こちらも3年間で最多の)観客に微笑んだのは、雨女か、それとも晴れ男か。
2007年末に1stアルバムをリリース、2008年春のクラブ・サーキットでお目見えしたジャズ・バンド、菊地成孔DUB SEXTET。菊地のサックス、類家心平のトランペットの2管、ピアノ、ベース、ドラムス、ステージ中央にはリアルタイム・ダブ・エフェクトが陣取る。
オープニングの「Dub Liz」「Susan Sontag」からミディアム・スロウ「AAAL」「Caroline Champetier」を経てウェイン・ショーター「Orbits」まで、研ぎ澄まされたプレイの応酬に、会場は水を打ったような静寂に包まれた。
もともとはクラブ仕様だったDUB SEXTET。2008年の同公演ではDJの沖野修也を向かえたパーティ・スタイルのコンサートを見せたが、今回際立ったのは、意外なまでに正統派なスタイル。かつてカーネギー・ホールで喝采を浴びたMiles Davisのように、DUB SEXTETもまた、コンサートホールに高い親和性を持ち合わせたのだ。幾多のステージを経て、バンドとしての安定感を増したDUB SEXTETが聴かせた演奏に、洗練の極みを見た。クラブ対応にシフトするペペ・トルメント・アスカラールと、期せずしてシンメトリーを築いたかたちだ。
コンサート終盤は、2006年限定の活動を経て、オーチャードホール公演の1年目(2007年)にたった1夜の再演を果たしたcure jazzの再々演。ブルーのドレスのアシンメトリーなヘムラインをなびかせてUAが登場。ベースラインが導きUAの野性味溢れるエレガンスが炸裂する「Night In Tunisia」に場内の空気は一変、にわかに熱を帯び、興奮が静かに渦巻く。
奇才同士の絶妙なかけあいによるMCに続いて菊地作曲のアッパーなナンバー「Honeys and scorpions」。ここでの菊地、類家の2管は、先ほどまでの刃を収め、軽やかにフレーズを刻む。cure jazzパートのラストは「Over The Rainbow」。一節、また一節、吐息の如きUAの声に、飛行機の比翼が雲を引くようにディレイがかけられ、天井までゆっくり昇って滲んで消えた。
UAが去るや否や、余韻を切り裂く勢いで「Dub Sorcerer」。ダブ・エフェクトに支配された本田珠也の圧巻のドラミングは、DUB SEXTET定番のエンディング。
アンコールで菊地が再びUAを呼び入れる。と、UAのピンヒールが、なんとステージの床を踏み抜くハプニング。これには菊地も苦笑い。
「今日は雨になっちゃってすみません。全部、UAさんのせいですからね(笑)。(※UAの雨女ぶりは有名) みなさんがお帰りになるころにはやんでいますから。降り続いていたら、菊地がやられた(負けた)と思ってください」。MCの後は、UAと菊地のダブル・ヴォーカルに類家心平のトランペットがからむ「This City Is Too Jazzy To Be In Love」。2人の華麗なスキャット・バトルの決着は、今回もおあずけのようだ。
3年間のオーチャードホール公演のラストは、ダンス・チューン「MONKEY MUSH DOWN」で約3時間のステージは大団円。
終演後、サイン会が長蛇の列をなす傍ら、ビュッフェでは菊地のセレクトによる「音楽とマリアージュする」ワインやシャンパンがふるまわれ、宴の余韻を肴に、名残惜しむ観客の賑わいがいつまでも続いた。会場を出ると、快晴の夜空が広がっていた。
photo:土居政則
菊地成孔とペペ・トルメント・アスカラール
GUEST:林正子
2010年2月4日(木)
@恵比寿・LIQUIDROOM
Ticket : 12/26(土) 10:00a.m.一般発売開始
All Standing adv.¥4,000 door ¥4,500(いずれもドリンク代別途要)
※6歳未満入場不可
[問]サンライズプロモーション東京 TEL:0570-00-3337
午後から降り出した冷たい雨が土砂降りに変わるころ、会場の扉が開いた。悪天候にも関わらず、詰め掛けた(こちらも3年間で最多の)観客に微笑んだのは、雨女か、それとも晴れ男か。
2007年末に1stアルバムをリリース、2008年春のクラブ・サーキットでお目見えしたジャズ・バンド、菊地成孔DUB SEXTET。菊地のサックス、類家心平のトランペットの2管、ピアノ、ベース、ドラムス、ステージ中央にはリアルタイム・ダブ・エフェクトが陣取る。
オープニングの「Dub Liz」「Susan Sontag」からミディアム・スロウ「AAAL」「Caroline Champetier」を経てウェイン・ショーター「Orbits」まで、研ぎ澄まされたプレイの応酬に、会場は水を打ったような静寂に包まれた。
もともとはクラブ仕様だったDUB SEXTET。2008年の同公演ではDJの沖野修也を向かえたパーティ・スタイルのコンサートを見せたが、今回際立ったのは、意外なまでに正統派なスタイル。かつてカーネギー・ホールで喝采を浴びたMiles Davisのように、DUB SEXTETもまた、コンサートホールに高い親和性を持ち合わせたのだ。幾多のステージを経て、バンドとしての安定感を増したDUB SEXTETが聴かせた演奏に、洗練の極みを見た。クラブ対応にシフトするペペ・トルメント・アスカラールと、期せずしてシンメトリーを築いたかたちだ。
コンサート終盤は、2006年限定の活動を経て、オーチャードホール公演の1年目(2007年)にたった1夜の再演を果たしたcure jazzの再々演。ブルーのドレスのアシンメトリーなヘムラインをなびかせてUAが登場。ベースラインが導きUAの野性味溢れるエレガンスが炸裂する「Night In Tunisia」に場内の空気は一変、にわかに熱を帯び、興奮が静かに渦巻く。
奇才同士の絶妙なかけあいによるMCに続いて菊地作曲のアッパーなナンバー「Honeys and scorpions」。ここでの菊地、類家の2管は、先ほどまでの刃を収め、軽やかにフレーズを刻む。cure jazzパートのラストは「Over The Rainbow」。一節、また一節、吐息の如きUAの声に、飛行機の比翼が雲を引くようにディレイがかけられ、天井までゆっくり昇って滲んで消えた。
UAが去るや否や、余韻を切り裂く勢いで「Dub Sorcerer」。ダブ・エフェクトに支配された本田珠也の圧巻のドラミングは、DUB SEXTET定番のエンディング。
アンコールで菊地が再びUAを呼び入れる。と、UAのピンヒールが、なんとステージの床を踏み抜くハプニング。これには菊地も苦笑い。
「今日は雨になっちゃってすみません。全部、UAさんのせいですからね(笑)。(※UAの雨女ぶりは有名) みなさんがお帰りになるころにはやんでいますから。降り続いていたら、菊地がやられた(負けた)と思ってください」。MCの後は、UAと菊地のダブル・ヴォーカルに類家心平のトランペットがからむ「This City Is Too Jazzy To Be In Love」。2人の華麗なスキャット・バトルの決着は、今回もおあずけのようだ。
3年間のオーチャードホール公演のラストは、ダンス・チューン「MONKEY MUSH DOWN」で約3時間のステージは大団円。
終演後、サイン会が長蛇の列をなす傍ら、ビュッフェでは菊地のセレクトによる「音楽とマリアージュする」ワインやシャンパンがふるまわれ、宴の余韻を肴に、名残惜しむ観客の賑わいがいつまでも続いた。会場を出ると、快晴の夜空が広がっていた。
photo:土居政則
菊地成孔とペペ・トルメント・アスカラール
GUEST:林正子
2010年2月4日(木)
@恵比寿・LIQUIDROOM
Ticket : 12/26(土) 10:00a.m.一般発売開始
All Standing adv.¥4,000 door ¥4,500(いずれもドリンク代別途要)
※6歳未満入場不可
[問]サンライズプロモーション東京 TEL:0570-00-3337
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