チープ・トリック、最新にして最高の必聴アルバム、ついに登場
7月22日にいよいよ国内発売を迎えるチープ・トリックの最新作、『ザ・レイテスト』が、とにかく素晴らしい。2008年春に実現した久しぶりの日本武道館公演も記憶に新しいところだが、あの頃からすでにレコーディングが進められていたのが、実はこの作品。タイトルは単純に“最新作”という意味だが、リック・ニールセンが過去に何度となく「いちばん新しいアルバムが常に最高だと思っている」的な発言を繰り返してきた事実を持ち出すまでもなく、明らかにこのタイトル自体が彼らの自信の大きさを物語っている。要するにこの作品こそが2009年の彼らにとって“レイテスト”であると同時に“グレイテスト”だということなのだ。
このバンドには“パワー・ポップの元祖”といった枕詞がつきものだが、べつに彼らは3分間のポップ・ソングばかりを得意技としているわけではない。1977年にデビュー・アルバムが発表された時点で、彼らの音楽が非常に多面的なものであることは実証されているし、かといって雑多さが売りものというわけじゃないことも、以降の各作品によって裏付けられてきた。
で、2006年発表の前作、『ロックフォード』は、バンドの出身地をタイトルに掲げていたことが物語っているように、やや“ルーツ回帰”的な匂いのする作品で、チープ・トリックの平均的パブリック・イメージに良い意味で忠実なものだったが、今作はちょっと違う。いや、かなり違う。はっきり言って、『ロックフォード』を含む過去15作のオリジナル・アルバムのいずれかと重ね合わせながら解釈するには無理がある。もちろんポジティヴな意味で、だ。それくらいこの作品が色濃い存在感を持っているということであり、もっとストレートに言うなら、それくらい素晴らしいということなのだ。正直、高校時代からずっとリアル・タイムで新譜を聴いてきたこのバンドに、今頃になってここまで大きな感動を与えてもらうことがあろうとは、思ってもみなかった。しかもノスタルジックな匂いとは無縁の感動を。
今回、プロデューサーに起用されているのは前作でも収録曲のひとつでクレジットされていたジュリアン・レイモンド。元ジェリーフィッシュのロジャー・ジョセフ・マニングJr(key)が参加している事実はあるが、他に目立ったゲストはいない。が、超大物プロデューサーや豪華なゲスト陣よりも重要な、充実度の高い楽曲たちが密度濃くここには収録されている。ストリングスを効果的に用いたバラードもあれば、ストレートなロック・チューンも、彼らが最初からずっとオルタナティヴであったことを改めて感じさせるような曲もある。それらが組曲のような完璧さで連結しながら、起伏が豊富でありながら実に体感スピードの速いドラマを作りあげている。これは見事としか言いようがない。
これは本当に傑作だから、老いも若きも聴いたほうがいい。ファン暦の長い人たちには敢えてわざわざ薦めるまでもないと思うが、チープ・トリックのアルバムを1枚も持っていないような人たちにも、過去の歴史を総括するようなアイテム以上に、今はこの作品に触れてもらいたい。何故なら歴史は今さら逃げはしないし、それ以上に『ザ・レイテスト』が本当に“レイテスト”であるうちに、時差なく味わって欲しいからだ。
ところで今作の完成に伴い、先頃、リック・ニールセンとの電話インタビューを行なったのだが、相変わらず早起きで四六時中ハイパーなリック師匠は、電話が繋がるやいなや「オハヨゴザイマス!」と甲高い声で先制攻撃を仕掛けてきた。その際の一部始終は、8月1日発売の『Player』誌9月号に掲載予定なので、是非お読みいただきたい。
ちなみにチープ・トリックは現在、デフ・レパードとポイズンの共演による全米ツアーにスペシャル・ゲストとして同行中。おそらく連日、ジョー・エリオットあたりからの「あのアルバムのあの曲はどうやって作ったの?」的な質問攻めに遭っているに違いない。気になる次回の来日公演については今のところ具体的には決まっていないようだが、僕としては“ふたたびの武道館”よりもむしろ、この最新作をしっかりと軸に据えた内容での全国ツアー実現を期待したいところ。こんなことを言うと「じゃあやってやるから、おまえがすべてアレンジしてくれ」と切り返してくるのがリック師匠の常だったりもするのだが。
増田勇一
このバンドには“パワー・ポップの元祖”といった枕詞がつきものだが、べつに彼らは3分間のポップ・ソングばかりを得意技としているわけではない。1977年にデビュー・アルバムが発表された時点で、彼らの音楽が非常に多面的なものであることは実証されているし、かといって雑多さが売りものというわけじゃないことも、以降の各作品によって裏付けられてきた。
で、2006年発表の前作、『ロックフォード』は、バンドの出身地をタイトルに掲げていたことが物語っているように、やや“ルーツ回帰”的な匂いのする作品で、チープ・トリックの平均的パブリック・イメージに良い意味で忠実なものだったが、今作はちょっと違う。いや、かなり違う。はっきり言って、『ロックフォード』を含む過去15作のオリジナル・アルバムのいずれかと重ね合わせながら解釈するには無理がある。もちろんポジティヴな意味で、だ。それくらいこの作品が色濃い存在感を持っているということであり、もっとストレートに言うなら、それくらい素晴らしいということなのだ。正直、高校時代からずっとリアル・タイムで新譜を聴いてきたこのバンドに、今頃になってここまで大きな感動を与えてもらうことがあろうとは、思ってもみなかった。しかもノスタルジックな匂いとは無縁の感動を。
今回、プロデューサーに起用されているのは前作でも収録曲のひとつでクレジットされていたジュリアン・レイモンド。元ジェリーフィッシュのロジャー・ジョセフ・マニングJr(key)が参加している事実はあるが、他に目立ったゲストはいない。が、超大物プロデューサーや豪華なゲスト陣よりも重要な、充実度の高い楽曲たちが密度濃くここには収録されている。ストリングスを効果的に用いたバラードもあれば、ストレートなロック・チューンも、彼らが最初からずっとオルタナティヴであったことを改めて感じさせるような曲もある。それらが組曲のような完璧さで連結しながら、起伏が豊富でありながら実に体感スピードの速いドラマを作りあげている。これは見事としか言いようがない。
ところで今作の完成に伴い、先頃、リック・ニールセンとの電話インタビューを行なったのだが、相変わらず早起きで四六時中ハイパーなリック師匠は、電話が繋がるやいなや「オハヨゴザイマス!」と甲高い声で先制攻撃を仕掛けてきた。その際の一部始終は、8月1日発売の『Player』誌9月号に掲載予定なので、是非お読みいただきたい。
ちなみにチープ・トリックは現在、デフ・レパードとポイズンの共演による全米ツアーにスペシャル・ゲストとして同行中。おそらく連日、ジョー・エリオットあたりからの「あのアルバムのあの曲はどうやって作ったの?」的な質問攻めに遭っているに違いない。気になる次回の来日公演については今のところ具体的には決まっていないようだが、僕としては“ふたたびの武道館”よりもむしろ、この最新作をしっかりと軸に据えた内容での全国ツアー実現を期待したいところ。こんなことを言うと「じゃあやってやるから、おまえがすべてアレンジしてくれ」と切り返してくるのがリック師匠の常だったりもするのだが。
増田勇一
この記事の関連情報
デフ・レパード、ジャーニーとの新ツアー最初の3公演のダイジェスト映像公開
デフ・レパード、トム・モレロをフィーチャーした「ジャスト・ライク・73」をデジタル・リリース
デフ・レパード、新曲のホットライン開設
デフ・レパードのジョー・エリオット、詐欺メールに警告「俺が君らに金をせびることはない!」
デフ・レパードのジョー・エリオット「ヘヴィ・メタルって言葉に異議あり」
ジョー・エリオット、デフ・レパードに加入できたのは「可哀そうに思われたからだろうね」
デフ・レパードとジャーニー、2024年夏に北米でスタジアム・ツアー開催
モトリー・クルー、日本公演のダイジェスト映像公開
ブレット・マイケルズ、“ヒーロー犬”ブレット・マイケルズの里親に