増田勇一のライヴ日記 年末七番勝負(2)2007年12月25日(火)DIR EN GREY@東京・新木場STUDIO COAST
クリスマスにはDIR EN GREYを観た。自分自身に対する好奇心から改めて調べてみたら、このバンドのライヴは生涯119回目。多分、これ以上の頻度で観てきたバンドは他にいないだろうと思う。もちろん基本的には“仕事だから”という部分もあるわけだが、何故こんなにも彼らのライヴに足を運ぶのかといえば、詰まるところ“飽きないから”なのかもしれない。
実は僕は、インディーズ時代の彼らをまったく観ていない。あの、良くも悪くも伝説化している最初の武道館公演すらも体験していないのだ。実は当時、そのライヴに関する取材の発注を某雑誌から受けていたのだが、たまたま公演当日に海外出張が入っていたため、僕は断らざるを得なかった。で、その公演を観たある同業者から聞かされたのは「史上最悪の武道館だった」という言葉。とにかく演奏力から何から、メチャクチャだったのだという。そして僕が初めて彼らを観たのは1999年3月、赤坂ブリッツでのこと。当日の率直な感想は「覚悟してたほど下手くそじゃないじゃん」だった。
カッコ悪いバンドがカッコ良くなることはとても困難だが、下手くそが上手くなることは可能だし、ことに“なりたい自分”という理想がある人たちの場合は、さまざまなことを時間が解決してくれる部分が多々ある。そんな持論のある僕にとっては、DIR EN GREYはそのときからとても興味をひかれる存在になった。気障に言えば「変化の過程を目撃していきたい」と思えたし、もっと率直に言えば「次はどうなっているんだろう?」と感じられたわけである。が、まさか2007年の彼らが、これほど強靭なバンドになっていようとは思ってもみなかった。年間通算ライヴ本数、121本。日本を含めた公演開催国、12ヵ国。そして海外滞在日数、99日。そんな事実に裏付けられた濃密な2007年の活動から得られたものを、音と存在感で語ってくれるようなライヴだった。
ライヴそのものの内容については、別掲のセットリストをご参照のうえ、勝手に想像するなり妄想するなりして欲しい。が、珍しいほどに饒舌だったこの夜の京が語った言葉の一部をお伝えしておきたい。彼は、「何が何やらようわからん」状況のなかで「いつ終わんねん」と思っていた長いツアーがこうして終了することについて「ちょっと悲しい」気分であることを認め、次のツアーについて「けっこう先やねん」と予告したあと、こう言い切った。
「その間に、サイキョーのアルバム、作ってくるから」
正確に言うと、彼はこの言葉を二度繰り返した。敢えて“サイキョー”とカタカナ表記にしたのは、さまざまな漢字が当てはまるはずだと思えたからだ。最強。最凶。最狂。終演後、打ち上げの席で京自身にそのことを告げると、彼が選んだのはやはり“最狂”だった。そして、確信した。2008年も、僕はDIR EN GREYに飽きることがないのだろう、と。
増田勇一
カッコ悪いバンドがカッコ良くなることはとても困難だが、下手くそが上手くなることは可能だし、ことに“なりたい自分”という理想がある人たちの場合は、さまざまなことを時間が解決してくれる部分が多々ある。そんな持論のある僕にとっては、DIR EN GREYはそのときからとても興味をひかれる存在になった。気障に言えば「変化の過程を目撃していきたい」と思えたし、もっと率直に言えば「次はどうなっているんだろう?」と感じられたわけである。が、まさか2007年の彼らが、これほど強靭なバンドになっていようとは思ってもみなかった。年間通算ライヴ本数、121本。日本を含めた公演開催国、12ヵ国。そして海外滞在日数、99日。そんな事実に裏付けられた濃密な2007年の活動から得られたものを、音と存在感で語ってくれるようなライヴだった。
▲12月25日21時25分。終演の瞬間。この少し前、京は「くそったれメリー・クリスマス」と吐き捨てた。まさに「メリー“ファッキン”クリスマス」といったところか。 |
「その間に、サイキョーのアルバム、作ってくるから」
正確に言うと、彼はこの言葉を二度繰り返した。敢えて“サイキョー”とカタカナ表記にしたのは、さまざまな漢字が当てはまるはずだと思えたからだ。最強。最凶。最狂。終演後、打ち上げの席で京自身にそのことを告げると、彼が選んだのはやはり“最狂”だった。そして、確信した。2008年も、僕はDIR EN GREYに飽きることがないのだろう、と。
増田勇一
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