増田勇一のライヴ日記【9】2007年7月29日(日)the studs@渋谷クラブクアトロ
大佑(vo)、aie(g)、yukino(b)、響(ds)という顔ぶれによる2007年生まれのバンド、the studsを初めて観た。去る6月14日、代官山UNITにて結成後初のライヴを行ない、同公演を皮切りに『tour ‘07 spread from warm rain』と題された全国ツアー(しかもパリ公演を含む)を展開してきた彼らだが、この夜はその最終公演。まさにツアーの成果がどれほどのものであったかが問われるべき機会となった。
まず結論から簡単に言ってしまうと、想像していた以上にこのバンドが前に進んでいることを実感できるライヴだった。誤解を恐れずに言えば、6月にリリースされた彼らの最初の音源、『studs』は、公開実験記録のような作品だった気がする。「この4人が合体すると、こうなる」というのが、敢えてコンセプトやイメージでごまかすことなくそこに体現されていた。だからこそ各収録曲は、録音した時点での“とりあえずの完成形”ではあっても、まだまだ“化ける”余地をあらかじめ残していた。で、そこを基点としたときの前進の幅の大きさに、この夜、僕は驚かされたのだ。
とにかく“バンド力”のある連中だ。技術云々ももちろんだが、とにかくロック・バンド然とした空気がある。それは1曲目に演奏されたタイトル通りの役割を持ったインストゥルメンタル・チューン、「intro」を聴いただけでも明らかだった。そしてそこにしっかりと“自分”を持ったヴォーカルが載るのだから、良くないはずがない。
スキマの充分にあるそのバンド・サウンドは、ヘヴィな音圧のライヴに慣れた(というか慣らされた)人たちの耳には、一瞬、衝撃度不足のものとして感じられることになるのかもしれない。が、このバンドのメンバーたちが“音”で会話し、バンド・サウンドの渦のなかで呼吸していることにひとたび気付かされたなら、そうした認識も一変し、この音に身をゆだねる心地好さに病みつきになることだろう。少なくとも僕は、この夜の演奏を聴いて、また彼らのライヴに足を運びたいと感じた。もっとこのバンドが“化けて”いくのを目撃していきたいと思った。
敢えてここでは、個々のメンバーの前歴などについてはまったく触れずにきたが、逆に彼らの過去を知らない人たちには、先入観のないままにthe studsというライヴ・バンドを味わうことができる特権を行使して欲しいところだし、この4人の素性を知り尽くしている人たちにも、一度アタマのなかに蓄積されたものを放り出して、“素”の状態で彼らと対峙してみて欲しい。
確かに彼らは、薄汚れた格好でステージに立ち、汗だくで「俺たちに共感してくれ!」と叫ぶバンドたちに比べたらずいぶんとスタイリッシュだし、勢いまかせに激情を吐き出すことが売りもののバンドたちに比べたら、ある意味、演奏も歌もクオリティが高すぎる。もしかしたら時代とは、かならずしも適合してはいないのかもしれない。が、そこでちょっと視点をずらしてみれば、きっとあなたも気付かされることになるはずなのだ。実は「ありそうでなかったバンド」がここに存在していることに。
文●増田勇一
まず結論から簡単に言ってしまうと、想像していた以上にこのバンドが前に進んでいることを実感できるライヴだった。誤解を恐れずに言えば、6月にリリースされた彼らの最初の音源、『studs』は、公開実験記録のような作品だった気がする。「この4人が合体すると、こうなる」というのが、敢えてコンセプトやイメージでごまかすことなくそこに体現されていた。だからこそ各収録曲は、録音した時点での“とりあえずの完成形”ではあっても、まだまだ“化ける”余地をあらかじめ残していた。で、そこを基点としたときの前進の幅の大きさに、この夜、僕は驚かされたのだ。
とにかく“バンド力”のある連中だ。技術云々ももちろんだが、とにかくロック・バンド然とした空気がある。それは1曲目に演奏されたタイトル通りの役割を持ったインストゥルメンタル・チューン、「intro」を聴いただけでも明らかだった。そしてそこにしっかりと“自分”を持ったヴォーカルが載るのだから、良くないはずがない。
スキマの充分にあるそのバンド・サウンドは、ヘヴィな音圧のライヴに慣れた(というか慣らされた)人たちの耳には、一瞬、衝撃度不足のものとして感じられることになるのかもしれない。が、このバンドのメンバーたちが“音”で会話し、バンド・サウンドの渦のなかで呼吸していることにひとたび気付かされたなら、そうした認識も一変し、この音に身をゆだねる心地好さに病みつきになることだろう。少なくとも僕は、この夜の演奏を聴いて、また彼らのライヴに足を運びたいと感じた。もっとこのバンドが“化けて”いくのを目撃していきたいと思った。
敢えてここでは、個々のメンバーの前歴などについてはまったく触れずにきたが、逆に彼らの過去を知らない人たちには、先入観のないままにthe studsというライヴ・バンドを味わうことができる特権を行使して欲しいところだし、この4人の素性を知り尽くしている人たちにも、一度アタマのなかに蓄積されたものを放り出して、“素”の状態で彼らと対峙してみて欲しい。
確かに彼らは、薄汚れた格好でステージに立ち、汗だくで「俺たちに共感してくれ!」と叫ぶバンドたちに比べたらずいぶんとスタイリッシュだし、勢いまかせに激情を吐き出すことが売りもののバンドたちに比べたら、ある意味、演奏も歌もクオリティが高すぎる。もしかしたら時代とは、かならずしも適合してはいないのかもしれない。が、そこでちょっと視点をずらしてみれば、きっとあなたも気付かされることになるはずなのだ。実は「ありそうでなかったバンド」がここに存在していることに。
文●増田勇一
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