【特別緊急対談】Ikepy(HNIB)vs 尋(ノクブラ)熱血対談

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▲左より、尋(NOCTURNAL BLOODLUST)、Ikepy(HER NAME In BLOOD)

昨年10月に幕を開けたHER NAME IN BLOOD(以下HNIB)の『BEAST MODE TOUR』も、残すところ大阪、名古屋、東京でのファイナル・シリーズ3公演のみとなった。1月16日の大阪ではTHE 冠、17日の名古屋ではNAMBA69、そしてツアー全体の千秋楽となる1月23日の東京・恵比寿リキッドルーム公演にはNOCTURNAL BLOODLUST(以下ノクブラ)をゲストに迎えての熱闘が繰り広げられることになる。それに先駆け、HNIBとノクブラ双方のフロントマン、Ikepyと尋による対談が実現した。肉体派ヴォーカリストともいうべき屈強なふたりは、お互いの現実と理想を、意外なほど静かに、しかしやはり熱く語りあった。その一部始終をお届けするとしよう。

文・撮影:増田勇一

――HNIBの『BEAST MODE TOUR』もファイナル3本を残すのみ。ツアーのこれまでの過程での手応えはどんなものでしたか?

Ikepy:なんか前回のアルバムのツアー当時よりも、すごく波に乗れてるというか。そういう手応えが大きいですね。単純にお客さんの数が増えてきたっていうのもあるんだけど、そのお客さんが以前よりも曲をしっかり聴き込んできてくれてるのがわかる。だからリアクションの違いも感じさせられるし。

――人数も違えば反応の濃さも違う、と。ノクブラも2015年を通じてさまざまなライヴを経てきて、同じような変化を感じているんじゃないですか?

尋:そうですね。明らかに聴き込んできてくれてるのが伝わってくる。僕らもやっぱり13都市でのワンマン・ツアーとかを経てきて……。アルバム(2014年末発表の『THE OMNIGOD』)が出た当初というのは、僕ら自身もアルバム曲について模索しながらやっていた部分があったし、お客さんも何回も聴き込みながら消化してきてくれたというか。実際にライヴで、曲を肌で感じながらお互いに学んできたというところがあったと思うんです。やっぱり僕らの場合もHNIBと同じようにお客さんが増えてきたというのはあるんだけど、それ以上に、なんかお客さんに対応力がついてきたというのを感じますね。新曲をいきなりやっても、そこにパッと喰いついてくるようになってきた。

Ikepy:それ、ものすごくわかる。新しい音源を作ってツアーをするたびにやっぱ模索するんだけども、お客さんの順応が確かに以前よりも素早くなってる気がするんですよね。

――バンドがファンを鍛えてきたということかもしれません。鬼コーチみたいに。

Ikepy:ふふふ。そうかもしれませんね。

尋:そこで同じように、ヴォーカリストとしても勉強させられてきたし。

Ikepy:そうだよね。ライヴでフロアを見て学ぶことも大きいし。「ここではもっとこうできたよな?」とか、毎回そういうのがあるから。だからまず自分らを鍛えるって感じですかね。

尋:それが結果、お互いの成長に繋がるというか。

――そうしてツアーの過程で進化を経てきた両者が今回、同じステージでぶつかることになるわけですけど、HNIBとしてはどんな形でこのファイナル公演を終えることが理想なんでしょうか?

Ikepy:これまでまわってきたツアーのなかでも最高の盛り上がりと一体感を作りあげたいというのは当然ありますね。ツアー・ファイナルって盛り上がって当然みたいな部分があるし、過去のツアー最終公演もそうだったわけですけど、その基準を圧倒的に超えていきたい。

――大阪、名古屋、東京の各公演で、色の違ったバンドがゲストに招かれていますよね。そこは意図的なんですか?

Ikepy:ですね。意識して、異種格闘技的な感じで今回は選びました。

――Ikepyさんが格闘技とか言うとホントに闘いが始まりそうですけど(笑)、ノクブラとしても「いつ何時でもリングに立つ用意がある」みたいな?

尋:ええ。僕らはもう「いつでも来いや!」っていう感じなので(笑)。まあ、お互いそういう感じですよね。実際、2015年の最初に僕ら主催のライヴで一回、HNIBとぶつかってるんですけど、僕らには去年全体を通じて自分たちのフィールドを広げていこうっていう狙いがあったんですね。そうやって準備を整えたところで、ここから何かを始めていこうという気持ちでもあるんで、こうして2016年の初頭にまた一緒にやれるというのは嬉しいんですよ。1年前よりもひとまわり大きくなった者同士としてぶつかりあえるわけで。そこできっと、お互いの成長が感じられたりもするはずだし。

Ikepy:うん。そういうところは当然お互い意識してるはずで。

尋:なんか同時に、前回の対バンから1年経ってるという気もあんまりしない。この前一緒にやったばかりのような感覚でもあって。

Ikepy:「もうそんなに経つの?」という感じではあるよね。

――こうして毎年同じような時期にぶつかりあってお互いを感じあう、というのが続いていくのもいいですよね。1月4日の東京ドーム(新日本プロレスの恒例の興業)みたいに。

Ikepy+尋:はははは!

尋:僕らも楽しみですけど、ファンも楽しみにしてくれてると思うんですよ。うちのファンも、初めて対バンした時からHNIBのステージを楽しんでたし、その存在自体を気にしてるだろうと思うから。

Ikepy:それはこっちにとっても同じことで。お互いシーンはちょっと違うけど、共通して楽しんでくれてるお客さんが多いな、という実感があるから。

尋:シーンが違うとはいえ、元々は同じところにいたわけだけだけどね。

Ikepy:まあね。お互い同じような場所でライヴをしてきて。

尋:昔、お互いアンチノック(新宿のライヴハウス)で対バンばかりやってた頃って、観に来てくれるお客さんも広がらないし、身内ノリみたいな感じのライヴが多かった。そればかり続けていくことが効率的だとは思えなかったし、僕らとしては広がりを求めたくてヴィジュアル系のほうに進んでいったところがあるんですね。結局、そうやってバンドが広がりを求めていけないならシーン自体も大きくなっていかないと思ったし。で、今回は、お互いにお互いのフィールドで闘ってきたバンド同士が、そのフィールドで手に入れてきたものをぶつけ合うことになる。これってすごくいいことだと思うんですよ。

Ikepy:そうだね。シーンを広げていくために、みたいなことを明確に意図してるというわけじゃないけど、こういった活動をしていくことで自然とそういうふうになっていけばいいなと思っていて。

――今そこにあるシーンに順応していくんではなく、新しいシーンを開拓していきたいという気持ちもあるはずですね? たとえば今、お互いにラウド・ロックと形容されることが多いはずだと思うんですけど、どちらもいわゆるラウド・ロックの典型ではないところがあるわけで。

尋:ええ。僕らの場合、逆にそこから一回離れたわけで。だから改めてラウド・ロックという畑の側に広げていきたいと思いながら活動してる部分もあるんですよね。そうして広げていくための下準備をこれまでしてきたというか。シフト・チェンジするというのとは違うけども、ある程度、自分たちなりのものというのが実ってきたんで、そろそろもっと広く攻めていこうじゃないか、と。どんな世界でも闘える力みたいなものが備わってきたかな、という自負もあるし。自惚れではなくてね(笑)。

Ikepy:うちの場合も、客観的に見たらいわゆる日本のラウド・シーンにいるということになると思うんだけど、そこにだけ留まっているつもりはないし。正統派のメタルのシーンだったり、ヴィジュアル系のシーンだったり、そういうお客さんの前でももっとやっていきたいと思ってるんで。立ってる場所はお互い違うのかもしれないけど、考え方はすごく近いんじゃないかと思う。

尋:うん。交わる部分は確実にあるよね。


――最初に出逢った頃と現在とでは、お互いの印象も違うはず。面と向かっては言いにくいかもしれませんけど、お互いのどんなところをいちばん評価していますか?

尋:HNIBを最初に観た時、日本にはあんまりないような個性というのを感じたんですね。僕はアメリカに留学経験があって、その頃に向こうの尖った音楽シーンというのを肌で感じてきたんですけど、帰国後に彼らの音を初めて聴いた時には「こんなにススんでるやつらが日本にもいるんだ!」と思った。自分の好きなものと温度差を感じなかった、というか。なんか、アメリカナイズされたものを感じるんですよね。ある意味、どこかコミカルな部分があって……。

――Ikepyさん、いいんですか? コミカルとか言わせておいて。

Ikepy:あ、いや、もうその通りなんで(笑)。ごもっともだなと思いますね。嬉しいですよ、そう言われるのは。

尋:僕は単純に好きなんですよ、そういうところが。

Ikepy:よく見てくれてるなって感じますね、今の言葉からも。やっぱりアメリカのバンドへの憧れがすごく強いんです。ヨーロッパよりもやっぱアメリカ、というのがある。だから、挑戦するならやっぱりアメリカで、というのがある。というかヨーロッパへはまだ行ったことがないんだけども(笑)。

――HNIBは昨秋、『KNOTFEST』出演のために渡米していますよね? そこでさらに、アメリカへの思いが強くなったようなところも?

Ikepy:そうですね。『KNOTFEST』に出てみて、もうガチガチのメタル・フェスで、まさにイメージ通りだったんですよ。想像してたアメリカのメタル・フェスそのまんまという感じで。激しくて、強いやつらが暴れまくってて、なんだかもう容赦ない感じ(笑)。実際にライヴをやってても、すごくリアクションも良くて、「これだな!」と思ったんです。俺たちが求めてるものがここにあるな、と。あの、人種が入り乱れたグチャグチャな感じというのも刺激的だったし。なんかもう、すべてのスケールがデカいみたいな感じがあって。

尋:同時にアメリカのバンドって、エンターテインメント性が高いじゃないですか。さっき言ったコミカルというのは、そういう意味で。

Ikepy:うん。ただ、俺たちの場合も、そんなにもコミカルな部分とか面白さというのを出そうと意識してるわけじゃなくて。単純にメンバーの人間性がコミカルっていうか(笑)、ガチガチに真面目な集まりではないので。それが自然と、コミカルさだったりエンターテインメント性に繋がってるんじゃないかと思いますね。

――SCORPIONSの組体操的パフォーマンスを思わせるような場面もHNIBのステージには登場しますもんね。ノクブラの場合も、違った意味でエンターテインメント性というのは意識しているはず。

尋:ええ。僕らの場合、どっちかっていうと雰囲気モノのエンターテインメントって感じですね。シンクロした動きとかはあんまりないし。お客さんを楽しませたいっていう気持ちは一緒だと思うんですけど、HNIBにはHNIBのやり方が合ってると思う。ノクブラのなかでも僕とMASAは、わりとHNIBに近い感覚があると思うんですよ。ちょっとアメリカ型というか。またアメリカの話になっちゃいますけど、かつて向こうに住んでた頃にすごく痛感させられたのが、他の国から入ってくる音楽をあんまり必要としてないってことで。アメリカの音楽だけで足りちゃってるんですよ。ヨーロッパのバンドへの興味とかを口にする人間もまわりにはほとんどいなかったし、日本の音楽についてもそれは同じことで。

――だからこそ挑み甲斐を感じる、というのもあるわけですよね?

尋:そうなんです。今の僕らがあっちに行ったら完全にコテンパンにされると思うし、「誰だよおまえら?」っていうレベルだと思うんですうよ。でも、そこで音楽が向こうに伝わっていくのを待つくらいだったら、自分たち自身がそこに踏み込んでいったほうが早いと思うんです。そうしないと伝わらないんじゃないかと僕は思ってて。もちろんアメリカにも日本のカルチャーとかアニメとかが好きな人が多いんだけど、日本のロックが好きっていう人は、まだまだごく少ない。

――だけど実際にそこに行ってプレイすれば、“打てば響く”ような人たちが確実にいるはずだ、ということですよね? 実際、HNIBは『KNOTFEST』でそれを感じてきたはずで。

Ikepy:ええ、まさにそういうことで。

尋:だからこそいつかは挑んでいきたい。僕がアメリカでバンドやってた当時、僕だけが日本人のメンバーだったんですね。まわりは全員、アメリカ人で。でも、いざライヴで歌って、それが終わると「おまえ、日本人なのにスゲえな!」みたいなことを言われることが結構あって。もちろん日本人の顔をしてるというだけでナメられることもあったけど、そうやって実際に観てもらえれば評価してくれるところがあるから。

――尋さんも“いかにも日本人”というルックスではないですけど、Ikepyさんの場合、日本人に見られないことも少なくないんじゃないですか?

Ikepy:ふふっ。確かにメキシコ系に見られることとか、結構ありますね。

尋:言えてる!(笑)

Ikepy:ちょっときわどいですよね(笑)。

――アメリカへの入国審査の時、日本のパスポートを出して怪訝そうな顔をされたりしませんでした?

Ikepy:それは大丈夫でした(笑)。でも、もしかしたら『KNOTFEST』の時のお客さんのなかには、俺たちが日本人じゃないと思ってた人もいたのかも(笑)。一応、「フロム・ジャパン」とは言ったんですけど。

尋:あはは! ただ、そんなふうにアメリカでやりたいっていう願望は強いんだけど、決して外タレ至上主義みたいな憧れを持ってやってるわけじゃないんです。自分らの個性を武器にしていくべきだし、そのためにはやっぱり日本ならではのものというか、自分らが日本で得てきたものを説得材料にしていかないと、と思うんで。やっぱり自分らの国のものも大事にしながら音楽をやっていかないと駄目だと思うんですよ。本国で闘うことをいちばんに置かないといけない。結局、海外に出て、そこで名前が売れて、逆輸入みたいな形がとれたとしても、僕はあんまり満足できないと思うんです。

――海外での活動については積極的に取り組んでいきたいけども、国内での地盤固めももっと進めていきたい、ということですよね?

尋:うん、まさに。

Ikepy:そこはまったく同感ですね。


――さて、話を戻しますが、Ikepyさんがノクブラに対して一目を置いているのはどんなところですか?

Ikepy:やっぱ、元々同じシーンでゴリゴリでやってきて……。そこからノクブラが変わったというわけじゃないんですよ、サウンド的には。むしろ変わらないままヴィジュアルのシーンに飛び込んでいって、しかもこれだけの評価を得てる。そういうバンドは他にいないと思うし、日本にも世界にも、ノクブラみたいなバンドっていないですよね。そこがとにかくすごいと思う。オリジナリティというか世界観を、ここまで作りあげてるっていうところが。

尋:……なんか照れくさいもんですね、こういうの(笑)。

――旧知の間柄での褒め合いって、確かにくすぐったいですよね。

Ikepy:あんまり普段はこんなこと言わないですからね(笑)。

尋:どう反応していいかわからない(笑)。酒の席だったら「うるせえよ!」とか言ってるんだろうけど(笑)。

Ikepy:ははは!

――でも実際、お互い本音しか口にしていないんだろうし、それくらいのことを言いたくなる者同士だからこそ認め合えるというか。ところで、話の冒頭で異種格闘技という言葉が出ましたけど、どうしてもこのふたりが一緒にいると、「闘うのはステージなのか、リングなのか?」という感じがしてきます(笑)。フロントマンとしてのあり方としての理想という部分でも重なるところがあるんじゃないですか? デカくありたいというか、屈強でありたいというか。

Ikepy:ええ、あんまりいないタイプだと思います。

尋:確かに他にいないですね。僕は元々、音楽とは関係のないところで身体を鍛えてきてたんです。そこに反映させるためというわけじゃなく、単純に運動部だったんで。そこからこういうふうに存在感を醸しだせるとは考えずにやってましたね。今となってはそれもなんか武器のひとつなのかな、みたいな感じではありますけど。

Ikepy:僕も元々そんなに意識はしてなくて。実際、以前は痩せてたんですよ、今よりも20キロぐらい(笑)。

尋:なんで鍛えようと思ったん?

――というか、マイナス20キロの状態が想像できません!

尋:実際、5年前はこんなんじゃなかったんですよ(笑)。なんかもっと普通の大学生っぽい感じだった。

Ikepy:ははは! 同じくらいだったかな、体型で言ったら。

尋:いや、俺よりも細かったんじゃないかな?

Ikepy:自分の場合、まず普通に太り始めてしまって。それは単純に不摂生からだったんですけど(笑)、そこで「これはマズい。鍛えよう」と思って。太ってしまったからにはこれを筋肉に変えるしかない、と。それから鍛え始めて……で、気付いてみたら自分が音源のジャケット写真になってたりとか(笑)。

尋:はははは!

Ikepy:おそらくそれはギターのDaikiのアイデアだったと思うんですけど。でもやっぱり、そうなってからは特に意識するようになりましたね。フロントマンとして、屈強さとかそういったものを。やっぱ憧れてるフロントマンというのが、フィル・アンセルモ(元PANTERA~現DOWN)とかだったりするんで。メタル・バンドの屈強なヴォーカリストっていうのは元々好きだったんですけど、トレーニングするようになってからさらに好きになって、意識するようになりましたね。

――ステージに立っている時の意識とかも変わりました?

Ikepy:変わったと思いますね。やっぱりデカくなってからのほうが、より自信に満ちてるというか。そういうところはあると思います。

尋:明らかに違う。存在感が違うもんね。昔のHNIBは、むしろ5人全員が同じ雰囲気っていう感じのライヴをやってた記憶があって。

Ikepy:ああ、確かに。こないだ久々に昔のライヴ映像を見てみたら、なんかすっげえ無駄な動きが多かった(笑)。無駄に動いて頑張ろうとしてたというか。

尋:今は普通に目が行くもん、そんなに動いてなくても。「デカいな、あのヴォーカル!」って。

――ステージの中央に立つ者としては、やはりどっしりとしていたいはず。

尋:僕の場合、そこを意識するようになったのは1年前くらいからですね。ステージでの存在感をまず向上させないといけないというのが、ひとつの目標だったんですよ。で、べつに筋肉はなくてもそれはできるはずだけど、元々筋トレは好きだったんで結果的にこうなったというか。むしろ僕が憧れてるヴォーカルって、逆にほぼガリガリの人ばっかりなんですよ(笑)。

Ikepy:ああ、わかるわかる。

尋:たとえばSUICIDE SILENCEのミッチ・ラッカー(2012年に他界)とかもそう。すんげえ長身のガリガリだったりするんで。LAMB OF GODのヴォーカルもそうじゃないですか。実際、「やっぱり筋肉ついてたほうがデス・ヴォイスは出るんですかね?」みたいなこをよく訊かれるんだけど……

Ikepy:そうそう。それはよく言われる。俺の場合、デカくなってさらにヴォーカルのスタイルも変わってきたから、余計そういうことを言われるんですよ。だけどあれは、あくまで声の出し方の問題だと思うな。

尋:うん。デス・ヴォイスに必要ないです、筋肉は(笑)。

Ikepy:まあ、何もやらないよりは鍛えてたほうがいいのかもしれないけど、その程度のことじゃないかと思う。

――というわけで筋トレの話をしても仕方がないので本題に戻りますね(笑)。この両バンドだからこその闘い方というのがあるはずだと思うんですけど、果たして1月23日のツアー最終日には、どんなバトルが繰り広げられることになるんでしょうか?

尋:僕たちは今回、呼ばれる側なんで。だからHNIBさんを……

Ikepy:“さん付け”は初めて聞いたな(笑)。

尋:だからまあ、HNIBさんを持ち上げられるような……

Ikepy:いや、そんなこと絶対思ってない(笑)。

尋:思ってないですね、ホントは(笑)。むしろHNIBのお客さんを全部獲りに行くような勢いで攻めたいですね。もう、脅かさないといけないんで。

Ikepy:そこで、こっちとしてはもちろん「脅かしてみろよ!」というふうにも思いますし(笑)。なにしろ自分たちのツアーのファイナルなんで、負けねえぞっていう気持ちが強いですね。なかなか強敵ではありますけど。

尋:でも、全部強敵じゃね? このファイナル3本は。

Ikepy:確かにね。でも、そこで相手によって闘い方を変えていくんじゃなくて、いつもの自分たちのやり方で勝負していくだけだと思ってるんで。これまで、いろいろジャンル的にも違うところでライヴをやってきましたけど、常に自分らの芯のある部分を見せていかないと、いい結果には繋がっていかない。まあ多少は変化をつけてやったりする場合もあるけども、基本的な部分は変えずに押し通していかないと。

尋:そこでの考え方は一緒ですね。2015年は、いろんな曲で闘えるような、どの曲でも対応できるようなスキルを学んでいこうというのがヴォーカリストとしてあったんですね。どのジャンルとぶつかっても自分らしさを出せるようにしよう、というのを目標にしてきて。

Ikepy:それは俺も同じかな。

――お互い、2015年に経てきたプロセスというのが意味的に近いところがあったのかもしれませんね。そして2016年というのも、双方にとってとても大事な年になりそうな気がするんですが。

尋:うん。僕らはやっぱり2015年よりももっと広い視野で見ていきたいな、と。シンプルに言うなら海外とかにも広げていきたい。これまで自分がいた世界がちっぽけだったって思えるぐらい、いろんなところに進出していきたいですね。そういうことを実現していくための年にしたいと思います。

――ノクブラの場合、すでに次のミニ・アルバムのリリースや東名阪のツアーも決まっていますけど、年間を通じてそれを目指していきたいということですね? HNIBにとっての2016年はどうでしょう?

Ikepy:まず日本でもいろんなところ、いろんなシーンでライヴしたいというのは当然のこととして、やっぱり世界でも……。まだ具体的なことが決まってるわけじゃないですけど、もっといろんなところに出て行きたいし、海外でのツアーもしたいし。さらにHNIBとしては、より自分たちのなかで新しいヘヴィ・メタルっていうものを押し出していきたいというのがあるんです。ヘヴィ・メタルはもっとカッコいいものなんだっていうのを、日本にも世界にも発信していきたいですね。日本の新しいヘヴィ・メタルはこうだっていうのを、もっと伝えていきたい。日本にもメタルのファンってすごくいっぱいいるじゃないですか。上の世代の方とかにも、もっと届けたいという気持ちがあって。

――ある意味、メタル・ファンが二極化してるようなところがありますよね。おふたりにとってはずっと目上にあたる層と、メタルコア以降のめちゃくちゃ若い世代の層。それが分断されているようなところがある。

Ikepy:それ、ありますよね。だけどなんか、アメリカに行った時にそういうのをあんまり感じなかったんですよ。いろんな世代が一緒になって共通したものを好んでるという印象があって。だから若い世代にももっとオールドスクールなものとか聴いて欲しいし、逆に目上の世代の方たちにも自分らの音を届けたいというのがあるんです。

尋:うん。ただ、上の世代の人たちが好きそうなものに、自分らの音楽を合わせていく必要は全然ないと思ってて。「今のメタルはこうだぞ!」という主張というよりは、もっと単純に「今のメタルもカッコいいんですよ!」というのを伝えたいんですよね。昔のメタルを好きな人たちにも僕らのスタイルで伝えられることってあるはずだし、それは何だろうって考えながらやってるようなところもあるわけなんで。

Ikepy:うん。だから世代とかを問わず、これまで僕らやノクブラのライヴを観たことがないっていう人たちにも当日は足を運んで欲しいし。

尋:なかなかこういう機会、ないですからね。

Ikepy:確かにこういう機会は少ないかな。僕らは去年、『LOUD∞OUT FEST』(LOUDNESSとOUTRAGEの合同企画によるフェス形式の新しいイベント。今年も5月1日に第二回が開催される)とかにも出させてもらいましたけど、ああいう機会がしょっちゅうあるわけではないので。でも、ああいった場が増えていったらもっと面白くなるだろうな、とは思う。もちろん、あんまり頻繁にやり過ぎると価値が薄れてしまう部分というのもあるのかもしれないけど。

尋:うん。だけどやっぱり、観ればわかるはず、というのはあるし。

――いつかこの二組とかで主催して、新たなフェスができるようであればいいですよね!

尋:そうですね。新しいイベントを作っていくというのも、なかなか難しいことですけど。でも、メタルが響く人たちがこの日本にもたくさんいるわけだから、その人たちに向けてまず発信していかないと。

――届けるべき人たちに、まだ届き切ってないということですもんね?

尋:うん、まだ届き切ってないですね。そのための作業というのも考えたほうがいいですね、2016年は。いろんなところに視野を広げていくっていう意味でも。世界を見ようとするのはいいけども、そこで日本のことが見えてないんでは話にならないわけで。老若男女を問わず、幅広い世代のメタラーたちが集まる場というのを作っていけたらな、と思います。

――今回、初めて両バンドを観る人たちにはどんなことを言っておきたいですか? 何か、やさしい言葉でもかけてくださいよ(笑)。

Ikepy:やさしい言葉、ですか。うーん……。

――やさしくなくても、べつにいいんですけどね(笑)。

尋:逆になんか、カルチャー・ショックを感じてもらったほうが楽しいと思うんですよ。実際、自分も初めてこういう世界に足を踏み入れた時はそうだったし。それこそ初めてSLIPKNOTのライヴを観に行った時、すごいグチャグチャにお客さんが暴れてて、やっぱり最初はびっくりさせられたわけですよ。正直、その輪のなかに入るのは怖かった。だけど実際そこに入ってみたら楽しかったわけで。そんなふうに、カルチャー・ショックから「楽しいな、このバンドのライヴ」ということになっていけばいいんじゃないかな、と。だから、怖がらずに前に進んでいけばいいと思う。

Ikepy:やっぱ、この2バンドのライヴに初めて来るっていうお客さんにとってはかなりの衝撃になるはずだと思うんで。そこで、ちょっと怖いもの見たさというか、お化け屋敷感覚でもいいから(笑)、遊びに来て欲しいですね。ちょっと呑みに行くぐらいの気軽さで、あんまり難しいことは考えずに。

尋:うん。ライヴなんてそんなもんだと思うしね、いい意味で。

Ikepy:自由に楽しんで欲しいですね、理屈抜きで。

尋:先入観を抱えたまま観に来てくれてもいいと思うんです。映像で観るのと、実際に肌で感じるのとは絶対に違うはずだから。

Ikepy:そうだね。この2バンドで作りあげるライヴハウスの空気感というのを感じて欲しい。映像とか音源では感じきれないものが、絶対そこにあるはずだから。

●HER NAME IN BLOOD<BEAST MODE TOUR-FINAL SERIES>
1/16(土)大阪・心斎橋CLUB DROP(GUEST:THE冠)
1/17(日)名古屋・池下CLUB UPSET(GUEST:NABMA69)
1/23(土)東京・恵比寿LIQUIDROOM(GUEST:NOCTURNAL BLOODLUST)
http://www.hernameinblood.com/

●NOCTURNAL BLOODLUST<ONE MAN TOUR『VANADIS』>
3/20(日)名古屋・SPADE BOX
3/21(月・祝)大阪・梅田CLUB QUATTRO
5/22(日)東京・EX THEATER ROPPONGI
http://www.nocturnalbloodlust.com/
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