──ニュー・アルバムが世界中で本当に大ヒットしてますよね。おめでとう。率直に今、どういう気分?
クリス:正直、今回はうまく行くかどうか、心配ではあったんだ。特にアルバムの作り方とか、歌詞の部分でね。これまで僕らは一つの流れに添ったアルバム作りを心掛けていたけど、今回はレコーディング場所が2つになったことも少し関係してるけど、曲によってはアルバムが散漫に聴こえかねないような、ちょっとテーマの異なる曲なんかもあえて入れてたりもしてたからね。あと、すごくパーソナルな部分とかもね。だから、そういう試みがファンに受け入れられるか気になってたけど、結果的にうまく行ったみたいだね。
──そして今回はいよいよアメリカでもブレイクですよ。トップ10入りしましたね。この成功は予想できました?
クリス:いや、全然。正直、アメリカという場所は、何ヶ所もツアーしないといけなかったり、なかなか大変ではあるからね。
──でも、前作(『アブソルーション』)のリード曲だった「タイム・イズ・ランニング・アウト」はアメリカでもよくラジオで流れていたりもしていたから、成功の布石はできていたとは思いますよ。
クリス:まあ、幸いにそうだったんだけどね。
──あなたたちの場合すごいのは、アメリカ進出するにしても、アメリカのやり方に合わせるのではなく、自分たちのやり方を徹頭徹尾通した結果、それを認めさせたことだと思います。
クリス:ありがとう。それは自分たちでも自信があるところだよ。僕たちは何もアメリカでウケるために自分のポリシーをまげたりしない。そんなことするくらいだったら、行かない方がマシだよ。
──日本のファンは今回のあなたたちの成功を間違いなく喜んでいますよ。世界に先駆けて、ミューズ人気に火がついた国ですからね。
クリス:全くその通りだね。日本は僕たちのことを1stアルバムの時点で評価してくれた本当に数少ない国の一つだ。そのことを僕たちは忘れることはないよ。
──そう言えば、その1stアルバムが出た年(2000年)に、第1回の<SUMMER SONIC>に出演したんですよね。
クリス:そう! そうなんだよ。あの時の僕らの出番、朝の10時だったんだよね! あんな経験、後にも先にもあれだけだよ(笑)。
──サマソニはそれ以来の出演ですよね。今やそれが見事にスタジアムのトリから2番目の出演ですよ。
クリス:そうだね。その間にフジロック(2003年)の出演もあったけど、さっきの朝10時の思い出がある分、感慨深いよ(笑)。
──それにしても、あれから6年ですよ。そう言えばあの頃、あなたたちはしょっちゅうレディオヘッドと比べられてましたよね。それも今となっては嘘みたいです(笑)。
クリス:全くね(笑)。まあ、デビュー当時っていうのは、どんなアーティストでも、似て聴こえるバンドと比較される形で紹介されるからそれは避けられないことだよね。
──その意味でミューズの今回のアルバムも、いろんな要素を感じさせますよね。デペッシュ・モードみたいな部分やU2みたいな要素があったり、シンガー・ソングライターみたいなところもあったり。でも、何をやろうとも、あなたたちの場合、全て“ミューズ”に結局のところ聴こえてしまいますよね。
クリス:いろんなことにトライしていくのが、僕たち最大の持ち味でもあるからね。
──聞くところによると、今回のアルバムでは、ストロークスやフランツ・フェルディナンドのことを意識したとか。
クリス:うん。特に「スーパーマッシヴ・ブラック・ホール」なんかはね。ほら、前の2枚のアルバムはさ、ハードロックとかクラシックなピアノの音色とかをサウンドに取り入れたりしただろ。僕としても、ライヴで激しい曲というのを求めていた部分もあったんだけど、その意味でフランツみたいなバンドって意義があったと思うんだ。“ロックで暴れる”のではなくて“ロックで踊る”という感覚が、あれで生まれたところはあると思う。だから、僕たちが新しくトライする、やりがいのあるものだったと確かに思うね。
──そんなストロークスやフランツは今年フジロックのメンン・ステージのトリでした。そして、あなたたちはサマソニでトリ前です。僕としては“いよいよこの世代のバンドがトリをとるようになった!”という感慨があるんですが。
クリス:う~ん、そこまで深くは考えていなかったけど、言われてみたらそうかもね。
──ミューズの場合は、もう一昨年にグラストンベリーのトリまでやっているからピンと来ないかもしれないけど、やっぱりこのテの大型フェスだと、まだまだ90年代に一時代を築いたバンドがトリっていうイメージがありますよ。
クリス:たしかに90年代までの大物バンドと比べると、今の人気バンドの方がサウンドの選択肢が増えたことは確かだね。いいことだと思う。
──今年のサマソニ、頑張ってくださいね! そして、このサマソニが終わったら、もうみんなはその次のライヴに期待してると思うんですよ。ズバリ、次のジャパン・ツアーはいつ頃になりますか?
クリス:ジャパン・ツアーはもちろんあるし、僕たちも本当に楽しみにしてるよ。来年になってしまうけど、来年の早いうちには戻って来るから楽しみにしててくれよ!
取材・文●沢田太陽
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