――アルバム『ヒア・カムズ・ザ・ティアーズ』は、はっきり耳を惹くメロディを持ちつつ、サイケデリックとも呼びたいほどふくよかにアレンジが様々に広がっていきますね。あなたのソロとも、スウェード後期の曲群とも違うこういった音作りは、やはり「違うものを作りたい」という意識から生まれていったものなのでしょうか。
バーナード:意識的に『違うものを』と常に思いながら作っているわけではないけど、やっぱりアルバムを作るときは常に新しいものにチャレンジして、進化していたいんだ。だから制作していて“今までとは違うな”と感じることが今回は多かったね。特に、ブレット(・アンダーソン:Vo)のヴォーカルを新しいイメージで録りたかった。何も複雑なことをするわけではなく、テクニカルな細かい部分だったり、感情の出し方だったり、エフェクトのかけかただったりを変えるだけなんだけどね。「ゴースト・オブ・ユー」なんかはもそのひとつで、ブレットが今までになく静かで柔らかな歌い方をしている。だろ?
――確かに。
バーナード:そうやって、彼も意欲的に違うヴォーカルに挑んでくれたんだ。そのお陰で発見が多くあった。このアルバムはよりカラフルなものであって欲しいんだ。高揚感から攻撃性まで、あらゆる感情を取り入れたかった。俺はアルバムが完成したら、意図的に何回も何回も聴きなおさないようにしてる。人の手に渡った段階でリスナーのものになるべきだし、俺の仕事はそこから前を向かって新しい作品をつくることだと思っているから。だから、自然と違うものが生まれるんじゃないかな。
――あなたたちの「初期スウェード」が持っていたマジックとは違うから評価できない、と言う人もいるようです。そういう意見に関しては「そもそも別モノだろう!」と腹が立ったりはしませんか?
『ヒア・カムズ・ザ・ティアーズ』 V2 Records Japan V2CP-232 ¥2,520(tax in) 1. レフュジーズ 2. オートグラフ 3. コ-スター 4. インパーフェクション 5. ザ・ゴースト・オブ・ユー 6. ツー・クリーチャーズ 7. ラバーズ 8. フォールン・アイドル 9. ブレイブ・ニュー・センチュリー 10. ビューティフル・ペイン 11. ジ・アサイラム 12. アポロ 13 13. ア・ラブ・アズ・ストロング・アズ・デス |
バーナード:まあ、そういったことを言うやつはどんな時代でもいるんだよ。腹が立つとか受け入れようと言う以前に、気にしていない。より音楽的で建設的な意見に関しては耳を傾けても、こういった漠然とした私見に関してはイチイチ反応しているより、次の曲のことに夢中になっていたいね。
――わかりました。では結成時の頃に話をさかのぼらせて、ブレットから実際に電話があったときはどういう気持ちになりましたか?
バーナード:素直にうれしかったよ。興奮もした。絶対に電話が来ると思っていたし(笑)。かかってきたときはいつのまにかスッと普通に会話していたよ。
――あなたがスウェードを脱退するときに抱いていた満たされぬ思いや不平は、やはり時間が解消したのでしょうか。それともブレットに会ってようやく雲散霧消した感じなのでしょうか。
バーナード:うーん、正直言って(スウェード脱退は)あまりにも昔の話なんで、不満だったことも忘れてしまっているよ。そして今こういう状況になったので、あえて思い出そうという気もない。今はまったく不満はないしね。
――今作の歌詞では、恋愛関係という形をとって「2人」のあり方を歌うものがいくつもあります。あなたの目から見て、その「2人」が自分とブレットの一面を伝えているな、と思う歌詞もありますか?
バーナード:それは、あまり意識しなかったな。昔のことは昔としてお互いに清算していて、イチイチそれについて戻ったりしていない。今は非常にいい関係だよ。常に一緒にいて制作したり音楽について話しているし、アイディアがどんどん出てきている時期なんだ。ただ、2人で“どちらかが飽きるものしかできなかったら、やめよう”と話してる。それは作品に必ず出てしまうし、潔く引くこともファンに対しては重要なことだと思っているしね。
――あなたにとって、この1年半の曲作りからレコーディング、ライヴの日々の中で、一番うれしい記憶として心に残っているのはどういう1日でしたか?
バーナード:レコーディングが全て終わって、違うスタジオでストリングスだけ別録りしたときかな。アルバムのうち5、6曲にストリングス・セクションを入れたんだけど、今回全てのストリングスを自分で考え、アレンジして楽譜に落としたんだ。だから、スタジオのガラス越しにプロのオーケストラが入って演奏してくれたのを見たときは、本当にうれしい瞬間だったな。アルバムを一枚レコーディングするということは、俺の場合いつもギターを首からぶらさげてどっぷり向き合う感じなんだ。だから、そうやってスタジオの反対側でちょっと距離を置いて、客観的にレコーディングを見れるのは新鮮なことだったね。
――ストリングスも自分でアレンジされたんですか!
バーナード:うん、何ヶ月も何ヶ月も練って作ったから、ストリングスのレコーディングは自分の頭の中にあったものと遂に実際出会えた瞬間だったんだ。「ラヴ・アズ・ストロング・アズ・デス」にはフレンチ・ホーン、フルート、ハープなど壮大なストリングス・パートがあってね。それをスタジオで聴いたときには、やっぱり自然と涙が出てきたよ。
――さらに曲作りの意欲が沸く出来事ですね。
バーナード:実際、昨年よりも今年のほうが曲作りの意欲が沸いてきてるよ。もう。次のアルバムを見据えているからね。
取材・文●妹沢奈美
▼THE TEARSオフィシャル・サイト(V2 Records Japan) ▼PRESENT オリジナルTシャツ(応募締め切り2005年8月15日) |
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