【ライブレポート】Official髭男dism、初のスタジアムライブツアー「あなたの人生がヒゲダンを強くしてくれていることを忘れないでほしい」

大阪・ヤンマースタジアム長居と神奈川・日産スタジアムで計4公演開催された、Official髭男dism初のスタジアムライブツアー<OFFICIAL HIGE DANDISM LIVE at STADIUM 2025>。ファイナルの日産スタジアム6月1日公演は、開演1時間前に雨に見舞われるも30分ほどで上がり、会場には彼らと7万人の観客を祝福するかのように瑞々しい風が吹き込んでいた。
ヒゲダンの開演直前BGMとしてお馴染みのマイ・ケミカル・ロマンスの「Welcome To The Black Parade」が流れた後は、ステージの端から端まで広がる湾曲状巨大LEDスクリーンに壮大なオープニングムービーが映し出される。和気あいあいとステージに向かうメンバーのリアルタイムの姿が流れたのち、4人がステージに現れると大きな歓声が沸き、藤原聡(Vo, Pf)は7万人の観客を見渡して両腕を振り上げ力強くガッツポーズをするとその声はさらに大きくなった。
冒頭から「Same Blue」「Universe」と、明るい空の下が似合う開放感のある楽曲を爽快感とパワーを兼ね備えた演奏で魅せる。一転「ミックスナッツ」ではサポートメンバー含む総勢14人の音色が飛び道具のごとく勢いよく展開した。それでも音が散漫としないのは、全員が確かな演奏力と音楽を楽しむ無邪気な心を兼ね備えているからであり、さらには藤原がそれらを牽引できる度量のボーカリストだからだろう。2番のAメロでは楢﨑誠(B, Sax)がベースを置いてサイドステージへと躍り出るなどし、ファニーな空気で観客を楽しませた。

7万人の観客とともに素晴らしいツアーファイナルを作ると約束した藤原は「ようやくスタジアムツアーにたどり着いたというよりは、このツアーを経てより良いバンドになる。その幕開けだと思ってこのステージに立っています」と凛々しい笑顔を浮かべる。その後も広い空を漂うような音風景の「パラボラ」、歌詞に“空”や“勝利”という言葉が入った「Laughter」と、スタジアムと親和性の高い楽曲を披露し、観客をさらに楽曲世界の奥深くへといざなった。彼らは音源でもライブでも、スマートに聴き手を自身の音楽の一員にしてしまう。その没入感は日産スタジアムという広大な場でも変わらなかった。
「115万キロのフィルム」でやわらかい音色を響かせ会場を包み込むと、昼と夜をつなぐ狭間の時間を「Pretender」で彩る。ステージとの距離が遠くとも、すぐ隣で聴こえるような内観的なムードに酔いしれていると、「イエスタデイ」ではステージ前の噴水ショーが音と連動して楽曲の透明感と優雅さを引き立て、「Subtitle」ではメンバーの熱い思いが胸にまっすぐ飛び込んできた。彼らがここまで気魄と真心あふれるライブを実現できるのは、リスナーへの愛情や感謝はもちろん、音楽家としての使命と責任を背負っているからではないだろうか。一切の油断がない隅々まで集中力の通った音は、こちらを厄災から守るような安心感を与えてくれた。

あたりが暗くなった頃、SF映画を彷彿とさせる壮大なSEが流れ、小笹大輔(G)と楢﨑と松浦匡希(Dr)の豪快な音色が轟くと同時に、観客のリストバンド、会場のライト、LEDモニターが一斉に真っ赤に染まった。エッジの効いた王道ハードロックのインストを演奏する姿はまさにロックスターで、藤原の呼びかけからなだれ込んだ「FIRE GROUND」ではイントロからステージ前とステージ上に火柱が噴き上げた。リリース当時から“スタジアムロック”と言われ続けてきた同曲が、正真正銘のそれになった景色はまさに圧巻である。ショルダーキーボードを抱えた藤原とギターを抱えた小笹が並んでソロを弾くシーンも痛快だった。
藤原が「日産スタジアムの皆さん、まだまだ祭りができますか!?」と呼びかけると、メンバーがサイドステージに繰り出し観客とともにダンスに興じた「ブラザーズ」、スカやラテンの要素を盛り込んだアレンジの「ノーダウト」、客席を飛び交う鮮烈なレーザーとスタジアムに吹き抜ける冷たい風もアクセントになった「Cry Baby」と、祝祭的な盛り上がりだけでなく地に足のついた情熱を響かせる。松浦と藤原のドラムパフォーマンスからつないだ「ホワイトノイズ」は、曇天を貫くようなポジティブなエネルギーが眩しい。悲しみや苦しみにあたたかな光を当てながら、それらも糧にして高みを目指す。寄り添うよりもダイナミックで、応援よりもソフトなぬくもりに満ちたOfficial髭男dismの音楽は、我々のなかに静かに息づく手放したくない感情、希望や願いにブーストを掛けてくれるようだ。「宿命」ではまさにそれらが美しくあふれ出していた。

ピアノを弾きながら「1曲1曲に心を込めれば込めるほど、あっという間に時が過ぎていく」と語る藤原は、10年前に横浜ワールドポーターズでアコースティックライブをしていた頃や、ライブ中に自身の声が出なくなったこと、小笹のギターがライブハウスの天井に刺さって抜けなくなったことなどを振り返る。そして「どんなにちっちゃいライブでも忘れたくない」「それくらいライブはみんなと僕たちをつなぐ掛け替えのないものだから、最後の一音まで心に刻み付けていく」と自らの意思を伝えると、歌詞の一つひとつを大切に届けるように「TATTOO」を歌い上げた。メンバーも彼の言葉に思いを重ねるように音を奏でる。観客もステージに向かって思いを歌声に乗せ、清らかであたたかな空間が広がった。
ラスト2曲を前にし、藤原はオリジナルメンバー4人が欠けることなく楽しみながら音楽を続けてこれた幸せを噛み締め、この10年強で「自分たちがいいと思う音楽を届けたい」という思いだけでなく、ファンがこの曲を聴いてどんな気持ちになるのか、ライブで共有したらどうなるだろうかと制作中に考えるようになった旨を明かす。「みんながOfficial髭男dismをスタジアムに立てるバンドに育ててくれました」「音楽で世界を変えるとか、悲しみを完全に取り除くことはできないかもしれないけど、少しでも人生に彩りを添えられたら。うれしいときは一緒に喜べるような、悲しいときは隣で一緒に涙できるような、そんな音楽やライブを作ろうと活動しているヒゲダンが僕は大好きです」と続け、「あなたの人生がヒゲダンを強くしてくれていることを忘れないでほしいし、忘れちゃっても何度でも思い出せるように、いい音楽といいライブを作っていきます。それがOfficial髭男dismが死ぬまで追いかけ続ける夢です」と感謝を述べた。その後に披露された「Chessboard」と「50%」は、一切の妥協なく育んできた表現者としての財産を、すべて捧げるような熱演だった。

アンコール冒頭にこれまでの歩みをまとめたムービーが流れると、ステージには藤原と小笹が現れ、ミニマムなスポットライトに照らされながら「I LOVE…」を演奏する。前半の幻想的なギターが作り出すアート性と、後半のバンドのダイナミズムを用いた大胆なライヴアレンジに、噴水アートやミラーボールなど光を効果的に取り入れた演出が交錯し、奥行きと深みのあるロマンチシズムで会場を満たした。
「島根のキャパシティ150のライブハウスからずっと歌っている曲です。日産スタジアムにこの曲を連れてきてくれてありがとう!」と高らかに叫んで「異端なスター」を、パワーダウンなど微塵も感じさせずに「SOULSOUP」を演奏すると、最後に再び藤原が「いい音楽を作って、あなたのそばにいられるように頑張ります。みんなが音楽を聴けない日もずっとそばにいるから。俺たちは音楽をやめない」と堂々と胸を張り、ツアーを「Stand By You」で締めくくる。穏やかな表情を浮かべる松浦、顔をほころばせる楢﨑、いまこの瞬間を心に焼き付けるように観客へと熱視線を送る小笹、強い眼差しで雄大に歌い上げる藤原と、4人がそれぞれの気持ちに正直にラストシーンを噛み締める。曲が終わると同時に花火が次々と打ちあがり、盛大なエンドロールに客席からは大きな歓声と拍手が沸いた。

最後にメンバー4人がステージに残ると、松浦は「涙が出るくらい感動した! もう一度この場所でライブするからまた遊んで」と目を潤ませ、楢﨑は「なぜか人生でいちばんリラックスして演奏できました。だからここに集まった方々は全員俺の家族なんでしょうね」と満面の笑みを見せる。小笹は中学時代にサッカー部の幽霊部員だったことや、不登校の時期にギターを始めてライブハウスに通い出し、そこからいろんなことが吹っ切れて登校し始めたエピソードを明かして「バンドで立つ日産スタジアムむちゃくちゃ楽しいぞ!」と過去の自分にメッセージを送った。最後に藤原は「スタジアムに立ったバンドとして、これからは記録や順位がどうとかじゃなくて、今いるみんなにずっと誇りに思ってもらえるように頑張ります」と告げる。4人は肩を組んで深々と頭を下げ、ステージを後にした。
Official髭男dismのキャリア史上最大規模のワンマンライブを観て、あらためて彼らはポップスもロックも、エンタメもアートも実現できる多彩な表現力と、自らの表現欲求に貪欲で屈強な意志を持ったバンドであること、それは「いい音楽を作り続けたい」「いいライヴをしたい」というシンプルで純粋な思いを原動力にしているからであることを再確認した。どこまでも勇敢で気高い彼らは、今後も自分たちの信じる音楽を妥協なく作り続けるだろう。そんな未来を指し示すような、非常に輝かしい1日だった。
取材・文◎沖さやこ
写真◎TAKAHIRO TAKINAMI
◾︎セットリストプレイリスト
https://HGDN.lnk.to/LIVE_at_STADIUM
『劇場版 OFFICIAL HIGE DANDISM LIVE at STADIUM 2025』
【公開日】2025年10月17日(金)
TOHOシネマズ日比谷ほか全国47都道府県の劇場で公開
※本作は劇場上映用に編集された内容となります。
※上映劇場、上映時間は追って発表となります。
【料金/席種】
全席指定 3,300円(税込)
※映画館によって一部追加料金が必要なお座席がございます。
※学生割引、障がい者割引は2,800円となります。
※各種割引券、招待券使用不可。
サービスデイ割り、シニア割りはございません。
【ムビチケ前売り券(オンライン)】
販売ページ:https://ticket.moviewalker.jp/film/089785?from=official
前売り料金:3,000円(税込)
購入者特典:購入時にライブ写真を使用したオリジナル壁紙、着券時に購入者限定のムビチケデジタルカードをプレゼント。
【上映に関する注意事項】
※内容は全て予定です。内容は予告なしに変更する場合がございます。
※通常の公演と同様に、お客様に楽しんでいただく上映です。
場合によっては、拍手などが起こる場合もございますので、ご理解の上、チケットをご購入ください。
※スタンディングでの鑑賞はご遠慮いただいております。
※ペンライト、光り物、うちわ、その他音の出るアイテムなどのご利用はご遠慮いただいております。
※過度な発声はお控えください。
※転売・転用を目的としたご購入は、固くお断り致します。
※映画館内は、カメラや携帯などのいかなる機材においても録音/録画/撮影/配信を禁止しております。
このような行為が行われた場合は、記録された内容を削除の上ご退場いただきますので、予めご了承下さい。
※当日、マスコミ・メディアの撮影が入る可能性がございます。
その際、お客様が映像等に映り込む可能性がございますので、予めご了承下さい。
※地震発生時・緊急地震速報を受信した場合等、安全確保の為、上映を中断させていただく場合がございます。
※天変地異及びそれに伴う交通機関トラブルの場合でも、上映が行われた際には払い戻しできませんので、予めご了承ください。
※車いすをご利用のお客さまは車いすスペースでのご鑑賞となります。
車いすスペースには限りがありますので、ご利用人数によっては所定のスペース以外でご鑑賞いただく場合がございます。
※ライブ照明による光の変化が激しい演出がある場合がございます。光に対して敏感なお客様は、ご鑑賞いただく際には予めご注意ください。
【お問い合わせ】
ポニーキャニオン カスタマーセンター
営業時間:平日 10:00〜13:00/14:00〜17:00(土日祝・会社の指定日除く)
問い合わせフォーム:https://www.ponycanyon.co.jp/support/inquiry
問い合わせフォームの受付は24時間可能ですが、ご返信につきましては営業時間内となります。
・お問い合わせの際は、イベント名、参加日もご連絡願います。
・イベント前日、当日のお問い合わせにはお答えは出来かねる場合がございます。
・上記お問い合わせ以外、特に会場への直接のお問い合わせは御遠慮願います。
・公演内容や抽選に関するお問い合わせはお受けいたしかねます。
劇場版 OFFICIAL HIGE DANDISM LIVE at STADIUM 2025 特設サイト
https://higedan-stadium-movie.com
<OFFICIAL HIGE DANDISM LIVE at STADIUM 2025>
■大阪公演
日付:2025年5月17日(土)
2025年5月18日(日)
会場:大阪・ヤンマースタジアム長居
開場:15:30 / 開演:17:30
■神奈川公演
日付:2025年5月31日(土)
2025年6月1日(日)
会場:神奈川・日産スタジアム
開場:16:00 / 開演:18:00
スタジアム特設サイト
https://event.higedan.com/feature/stadium_2025