【ライブレポート】SUPER BEAVER、バンドの真価を見せたフリーライブ「あなたとこの状態で最高の音楽を作れたら、もっとあなたと向き合えそうな気がする」

SUPER BEAVERが、5月24日にフリーライブ<都会のラクダ FREE LIVE at 国立代々木競技場第一体育館>を開催した。
本公演は20周年アニバーサリーライブ第5弾として開催されるもので、SUPER BEAVERでは珍しく昼・夜の2公演の実施となった。元々は、2020年に代々木公園野外ステージで開催予定だったこのフリーライブだが、当時流行し始めていたコロナ禍により“延期”となっていた。この公演でメジャー再契約の発表を予定だったとのことで、彼らにとって本公演がどれだけの意味を持つか、オフィシャルサイト上に記載されていた“延期”という文字を見れば分かるだろう。そんな<都会のラクダ FREE LIVE>が5年越しで幕を開けたのだ。ここでは、昼公演の模様をお届けしていく。
5年前に予定されていたのは代々木公園野外ステージだったが、延期している間にさらに規模を大きくしていった彼ら。公演中のMCで苦笑いで“大人の事情”を話しつつ、野外ステージの隣に打って付けの会場=国立代々木競技場第一体育館という5年前のキャパシティを超えた会場に決定したという。フリーライブといえば屋外で行われるイメージを持つ人が多いだろうが、1万人以上入る会場かつ2公演行うなど、きっと多くのファンがフリーライブの域を超えていると感じたのではないだろうか。そんな枠組みを超えてまで彼らが届けたい“SUPER BEAVERの音楽”は、1時間とは思えないくらい“ライブの楽しさ”で溢れた公演だった。

開演時間ピッタリに楽器隊の柳沢亮太(G)、上杉研太(B)、藤原“36才”広明(Dr)が登場し、逸る気持ちが抑えられずに会場の手拍子のリズムが早くなっていく。少し遅れて渋谷龍太(Vo)がステージに登ると、いきなり「名前を呼ぶよ」を披露。映画『東京リベンジャーズ』主題歌として書き下ろされた本楽曲は、バンドとしての規模をさらに大きくした1曲だ。ボルテージMAXの会場に対し、〈会いに行くよ〉の歌詞を〈会いにきたよ〉と歌うと、すでにクライマックスのような盛り上がりに。しかし、その後に続いた「青い春」で“もうライブが終わってしまうのではないか?”と思うほど、オーディエンスの熱を感じた。メジャー再契約後の代表曲とインディーズ時代からの代表曲を連続で披露できるのも5年間という年月があったからこそではあるのだが、それ以上に会場全体がどちらも曲も歌って楽しんでいたことが印象的だった。コロナ禍にも負けず、ライブバンドとして“ライブの楽しさ”を伝えてきた彼らだから見られる光景なのだろう。
MCでは渋谷が「本日は…無料で…お金を払わずに来たんだな!?」と会場を煽り、さらに「どうやって採算取るの?とか…採算取る気なんて端から無いですから」と言うと、会場は大盛り上がり。「自分たちを主役に据えるような20周年ってちょっと嫌だなと思ったので、俺たちの20周年はあなたが楽しいなと思うようなそんなキッカケに、そんな理由に使ってもらえたら最高だなと思ったんです。やっぱり1番大事なのはあなたの存在です。あなたがいるから音楽ができる、音楽が楽しい、おかげで生きていられる、毎日楽しい、ありがとう!」そう言い切ると、オーディエンスからも「ありがとう!」の声や温かい拍手が上がる。「最後まで最高の1日にするからしっかり付いてきてください」と渋谷が結んでいた髪をほどき、次の楽曲へ続いた。

渋谷の「あなたのお手を拝借」から続くのは、ライブ定番曲である「美しい日」だ。初っ端からクライマックスのようなテンションを保ったままの会場は、藤原の力強くリズミカルなバスドラムに合わせてさらにボルテージを上げていく。その後の4曲目は「証明」。上杉の重くもメロディアスなベースラインに、柳沢のギターソロが光る。柳沢の相棒とも言える黒いギブソン・レスポールを持った彼にスポットライトが上がり、拍手が上がる。
5曲目に差し掛かる前、「初披露の新曲をやってもよかろうか?」というサプライズに会場は歓声を上げる。そうして披露されたのは映画『金子差入店』の主題歌である「まなざし」だった。小気味良いリズムにオーディエンスは体を揺らしつつ、ライブ初披露ということで思い思いに音楽を楽しんでいた。さらに、ステージ上のモニターには歌詞が表示されており、最後の歌詞〈継なぎたいのは心意気だ〉を会場全体で歌う。今回だけではないが、SUPER BEAVERのライブでは会場一体になって歌う場面が多く見られる。本公演で渋谷が「あなたと音楽を作りたい」言っていた言葉がピッタリだと感じた。

続く6曲目にTVアニメ『僕のヒーローアカデミア』第6期オープニング主題歌である「ひたむき」を披露した後、再びMCヘ。渋谷が「俺は無料ということに関して、否定的なんです」と話す。その言葉にざわついた会場に対し、こう続ける。「お金、お金って好きじゃないんだけど、愛情の数値化としては分かりやすいものだと思ってるのね。今日はその数値が表れない日だから、俺たちの真価が問われる日だと思ってんの。何の…アレもなく(笑)、あなたとこの状態で最高の音楽を作れたら、この先もっとあなたと向き合えそうな気がするんだよ」そんな渋谷の言葉を聞いて、彼らがフリーライブを実現した意味がより深く理解できた。ある意味、お互いに“素”のような状態で音楽が楽しめる、音楽を作ることができる日なのだと。

「気持ち見せてくださいね」と渋谷が言い放ち、始まったのは「小さな革命」。本楽曲は、2024年にTBS『音楽の日』の企画内でファンと共に合唱した1曲で、まさに“あなた”と音楽を作るのに打ってつけの楽曲だった。そのままの勢いで続いたのは「アイラヴユー」だ。こちらも言わずもがなオーディエンスと歌う場面が多い楽曲で、これ以上ないくらい会場全体が〈愛してる〉の言葉で埋め尽くされていた。
そして最後の1曲となった9曲目は「切望」。アルバム『音楽』に収録されており、本楽曲でもモニターに歌詞が映し出されていた。その歌詞の中には〈歓ぶ顔が見たい〉〈無償の愛じゃない そこに気持ちの往来〉など今日のライブを表すような言葉が並ぶ。全9曲、1時間ピッタリに幕を閉じた本公演のラストに相応しい楽曲だった。

冒頭にも書いたように、今回のフリーライブは昼・夜の2公演行われた。それはできるだけ多くの人にライブを体感してもらいたいという4人の思いがあったという。本公演でSUPER BEAVERのライブを初めて観た人もきっと多くいただろう。1時間という決して長くはない時間だったが、それでもSUPER BEAVERの音楽の真価、何よりライブの楽しさを十分すぎるほど感じることができた公演だった。
なおSUPER BEAVERは、6月20日・21日に初のスタジアム公演となる<都会のラクダSP at ZOZOマリンスタジアム>を控えている。2日間で6万人以上集まるステージで彼らは、どんなライブを届けるのだろうか? 結成20周年を迎え、ますます勢いを増していくSUPER BEAVERのスタジアム公演に期待が高まるばかりだ。

文◎多木汐里
写真◎青木カズロー
セットリスト
<SUPER BEAVER 20th Anniversary 都会のラクダ FREE LIVE at 国立代々木競技場第一体育館>
日程:2025年5月24日(土)昼公演
会場:東京・国立代々木競技場第一体育館
1.名前を呼ぶよ
2.青い春
3.美しい日
4.証明
5.まなざし
6.ひたむき
7.小さな革命
8.アイラヴユー
9.切望
<SUPER BEAVER 20th Anniversary 『都会のラクダSP at ZOZOマリンスタジアム』>
2025年6月20日(金)千葉・ZOZOマリンスタジアム
2025年6月21日(土)千葉・ZOZOマリンスタジアム
<SUPER BEAVER 20th Anniversary 「都会のラクダ TOUR 2025 〜 ラクダトゥギャザー 〜」>
2025年
9月26日(金)東京・TACHIKAWA STAGE GARDEN
9月28日(日)鳥取・米子コンベンションセンター BiG SHiP
10月10日(金)鹿児島・川商ホール(鹿児島市民文化ホール)第1ホール
10月12日(日)熊本城ホール メインホール
10月17日(金)静岡・アクトシティ浜松大ホール
10月19日(日)青森・リンクステーションホール青森
10月25日(土)石川・金沢歌劇座
11月9日(日)香川・レクザムホール
11月10日(月)愛媛県県民文化会館
11月16日(日)沖縄コンベンションセンター劇場棟
11月22日(土)新潟県民会館
12月1日(月)東京国際フォーラム ホールA
12月2日(火) 東京国際フォーラム ホールA