ショーン・ポールは’96年にジャマイカで1stシングル「Baby Girl」をリリース。以来、ダンスホール・レゲエ界で大きな力として認められている。以後6年間、彼の勢いは止まらず、2000年にデビュー・アルバム『Stage One』をリリース、’02年にはクロスオーバー・スマッシュとなった『Dutty Rock』を発表した。
誰もが羨む立場に立ったショーンは、先日、ニューヨークで『Dutty Rock』から数曲をパフォーマンス。その彼にLAUNCH.comの編集者、ビリー・ジョンソンJr.がインタヴューを試みた。ショーンは、サード・ワールドやシャギーのマネージャーとの出会い、レゲエとヒップホップのギャップ、大学時代の料理実習、ビデオに出演している素晴らしいダンサーたち(インタヴュアーが個人的にいちばん好きなトピック)について語ってくれた。
――ビデオに出演してるダンサーたちについて聞かせて? 動きが正真正銘のジャマイカ人という感じだけれど。
ショーン:もちろん。ジャマイカの文化は、ほとんどの場合、国際的にきちんと伝わっていない。実際にはジャマイカに存在しないダンスが、いろいろ出回っている。けれど、ビデオのダンスは曲にしっかりマッチしてると思う。ジャマイカでは、3、4年ごとに新しいダンスが誕生するんだ。だから、過去から現在まで、たくさんのダンスがある。俺はそういったのを伝えるのが大切だと思っている。ヒップホップがブレイクしたのも、そうしたからだろう。ヒップホップにはきちんとしたダンスがあって、音楽もある。全体がひとつの文化なんだ。そういうことを意識してほしい。
――ライヴのとき、オーディエンスがビデオと同じ動きをしているのを見ると、トリップする?
ショーン:そのとおり。特にヘアスタイルとか、ジャマイカではよく見かけるしね。ジャマイカでは、誰もが同じようにレゲエを踊る。こうした動きを見るのは、ジャマイカの文化が外に発信されてるからで、ひとりのジャマイカ人として誇りに思う。
――ジャマイカ本国での反応は? あのビデオを喜んでいる?
ショーン:ビデオがあったからこそ、「Gimme The Light」が1位になったんだ。ジャマイカでは、ウケてる。1位かどうかじゃなく、ビデオが発表されたら……バーン! トップに一直進さ。ダンスが本物で、他とは違うから。プリプリの女の子を使って、全身をなめるように見せようとしてるわけじゃない。そんなことしなくても、セクシーなんだ。ヴァイブがよかった。
――妥協した形でなく、本物で成功した気分は?
ショーン:う~ん、どんな場合でもステップが……。音楽を前面に押し出すには、どんなジャンルであっても、その人なりのステップがあるんだ。分かる? 俺は過去に人々がやった事を、ダメだとか、質が悪いといったような判断はしない。世界がヒップホップやストリート・ミュージックを受け入れようとしているわけだし、ヒップホップっぽいビデオとか、そういったのを組み合わせる必要があった。もっと前に自分たちのダンスを始めていれば、世界と時代はまったく違ったものになっていただろう。どんな人にもステップがあって、その人なりの段階というのがある。俺は今、人生で、人々にこれをもっと見せたいと思うような時期を生きている。準備は整っていると思う。15年から20年かかってるんだ。だから、今取るべきステップを踏む。確実にね。
――レゲエとヒップホップの溝をダンスホールという形で埋めようとしたのはなぜ?
ショーン:レゲエとヒップホップはお互いにリンクしている。ダンスホールはヒップホップのかけがえのない兄弟なんだ。ヒップホップというのは、社会問題とか、日常の出来事、様々な事柄について、人生の告白をテーマに扱っている。それが若者の意見なんだ。実際、無視できない。聞く耳を持つべきだ。ダンスホールはレゲエから飛び出て来た。必ずしも抗議の音楽じゃなく、啓蒙の音楽。間違った物事に火を放って、ポジティヴな方向に持っていく。第三世界の社会に意見を言うのが目的だったりする。だから、そういう意味でヒップホップと凄く似ていると思う。ストリートの音楽で若者の意見を繁栄している。