――確か、1stアルバム『TRUE』が完成した直後、「やっとアルバムができた、っていう実感があまり湧かない」っておっしゃっていたけど、今作を作り上げて、前とは違う達成感はありますか?
「まだ、全然わかってない。あの時と同じですね。というか、(シングルなど楽曲制作が)ずっと続いているし、今も次の曲制作に入っちゃてるから、全部つながってる感じで。そういう達成感とか今後もわかんないと思いますよ。1stと比べてみて……、難しいですね。でも、いいアルバムができたな、って実感はすごくある、私にしては珍しく…。 自分はすっごくいい曲歌ってたんだな、ってアルバムを通して聴いて気づいたっていうか」
――タイトルは
ときましたね。
「それは最後に決まったんです。今年の最初に<愛を歌おう>ってテーマを決めたのは、単なるプロデューサーの思いつきですね(笑)。でもそれって、当たり前のことだよ、って。改めてテーマに、なんて言うことじゃない、って思った(笑)」
――デビュー時と比べて、歌に対しての姿勢など変化はありますか?
「全然。あんまり考え方も変わってないし、感じ方も」
――スローナンバーの良さはさることながら、
「Love Addict」のようなアップテンポの曲では、果敢なチャレンジ精神が感じられて、充実の仕上がりですね。
「アップは、ジャズっぽいのとか、好きな曲調があって。そういう曲調が好きだってことは元々わかってはいたんですけど、歌わせてもらってよりわかったというか」
――そしてミディアム系がすごく充実してる。歌のふくよかさが素晴らしい。
「え?エビアン系?(と聞き間違えて)。あぁ、ミディアム。エビアン系、いいかも。私っぽいのはエビアン系(笑)」
――(笑)。今回は楽曲やバックサウンドへの注文など結構しましたか?
「こういう曲が欲しいって言って決めたものもある。「Love Addict」は、100曲ぐらいの候補の中から決めたんです。もうあの時は頭おかしくなるかと思った。ずっと絞っていった中の最後にこの曲が入ってたんですよ。でもね、そういう作業が実は好きみたい。全然飽きなかった。ホント、音とか曲とか全部グレードアップしてますよね。なんか、シングルごとにそう感じてた」
――スタッフやらミュージシャンやらいろんな人と中島さんとの出会いによって出来上がった幸福なアルバムって印象を受けますね。大勢の人の熱やら理想やらが幾重にも折り重なって、この煌めきに溢れたサウンドが作り上げられている気がするんです。やっぱり出会いの喜びって大きいでしょ?
「
うん。でも、現実には出会いが多すぎるし、そのスピードが速すぎて、追いつけてないですね…」
――なるほど、そうか。レコーディングでの辛かったエピソードなどあります?
「スタジオが建物の4階にあるんですけど、そこに階段で行かなきゃならなかったこと(笑)。それも、段の高さが一つずつ違うんだよね(笑)。ボロボロなんですよ、そこ。震度4ぐらいで倒れちゃうんじゃないか、ってぐらいで。でも、そこはデビュー時から使っているスタジオでなんか居心地がいいんです。妙にキレイなスタジオだと落ち着かない。いかにも、仕事しに来ました、って感じになっちゃうし」
――作詞を手掛けた曲もどんどん増えてきてますね。いざ書くにあたって前もっていろいろ考えたりしているのですか?
「でも、ほとんどフィクション。だいたいが想像の世界で。書く場所は、別に決まっているわけじゃなくて、どこでも」
――描かれている世界を読み進めると、現実と想像の狭間を揺れているような微妙な感覚が浮かんできますね。例えば聴いた人の感想など、どういうものが多いですか?
「大きく二つに分かれることが多いですね。すごくリアルに「わかります!」って人もいれば、「メルヘンチックですね」っていう人もいたり」
――新曲のうちの一つ「LOVE NO CRY」の歌詞は、<笑うし かない程 重くなっていく『期待』から 逃げ場を遮って/自分を映す 鏡を探した>と語られているように、中島さんの心情がストレートに綴られていると思うんですけど。
「うん。でも、みんなこういうシチュエーションってあるんじゃないかな、って思って書いたんです」
――今、余裕を持って自分を客観的に見るってことは難しいだろうと想像するんですが、例えば、中島美嘉とはどういうシンガーなのか?なんて考えたりすることはないですか?
「自分が歌うことに関しては、絶対に、冷静に、客観的に見れない。例えば、バックの音に関してとか、今回アコースティックな感じですごくいい、と思ったりするけど……自分に関しては無理。周りから、こういう風だね、って言われても、そう思われてるんだなってぐらいしか考えないし」
――先の話ですが、2004年2月14日からスタートするツアーは前回より本数も増えて、かなりの長期ロードですね。