【ライブレポート】DOLL PARTS、レコ発ワンマンで見せた妖艶で熱く激しい唯一無二の世界

2025.05.22 07:00

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DOLL PARTSのニューアルバム『B.O.G bragging out garbage』の発売を記念した2ケ月連続DOLL PARTSワンマンライブのDAY2が、4月19日(土)青山RizMにて開催された。



ニューアルバム『B.O.G bragging out garbage』の一般流通ルートでの発売開始は5月28日(水)となるが、この日のライブ終了後から先行販売が行われるため、1日も早く新譜を楽しみたいファンが会場を埋め尽くしていた。


今か今かと待つファンの雰囲気を一気に断ち切るように会場が暗転し、DOLL PARTSのARISA、児太郎がステージに現れた。ARISAが手をあげると、すかさず会場も大きな声援で応える。ライブは新曲「支配」からスタート。この曲はアルバムリリースに先駆けミュージック・ビデオが公開されており「DOLL PARTSの新しいマスターピース」との呼び声高い楽曲である。

イントロ、印象的なベースラインと心地のよいミドルテンポなグランジサウンドが会場を包み込み始める中、 ARISAが歌い出すその瞬間、スポットライトが暗闇から彼女を鮮やかに映し出す。妖艶に客席を煽るその様子はMVの世界がそのまま眼前に現れたようで、ファンの達のボルテージは一気にあがる。そして、左足をモニターにかけ、ギターをかき鳴らし歌うARISA。自身の世界観に観客全員を引き込もうとする素晴らしい出立ちだ。


ライブが始まって数曲の時点で確信する。このレコ発ライブは、観客の盛り上がりが緩むことはない、素晴らしいステージになる、そう思えるほどARISAの歌唱とギタープレイ、そして児太郎のドラミングは序盤から会場全体を熱し、引締め、次々に演奏される楽曲達の素晴らしい音楽性を見せつけてくるのだ。



前半のMCではARISAから改めてニューアルバムのタイトル“bragging out garbage”の意味が告げられ、「どうだ!この“ゴミみたいな曲”は、めっちゃカッコよかろうが!」と自慢しているイメージであること。また頭文字を取った「B.O.G」は“沼”という意味にもなり、「DOLL PARTSに皆を沼らせたい、抜けれんようにする」と地元である博多弁で意気込み微笑んだ。

オーディエンスもすぐさま湧き上がり、その際にARISAが応えた「いいねぇ」の一言と笑顔はとても印象的で、充実したライブの滑り出しと、今後DOLL PARTSが突き進む先に見据える光を我々にも見せてくれたような気がしたのだ。



新曲の「My place」では、大きなうねりを児太郎のスタイリシュでタイトなドラムが引き締め、ARISAの歌う詞は身近な環境を題材としながらも、抱く心の熱さや切なさの情動をしっかりと感じさせてくれる。Bメロでは、観客の身体が一斉に自然にゆったりと揺れる。また、コンポーザー&プロデューサーでありライブではサポートギターでもあるCOZZiのギタープレイには注目せずにはいられない、究極のプレイサウンドを余すところなく魅せ聴かせてくれる一曲でもあった。





ライブ中盤、前作のアルバム『DOPE』の人気曲である「恋は幻」や「Wait!!」も披露され、会場の熱量も後半に向け上がり続ける中、新曲「わたしの正体」が演奏される。この曲はこれまでの楽曲と比べ異彩を放つ、ダークな雰囲気に彩られたハードチューンだ。ダークは今回のアルバムから香るDOLL PARTSの新しいテイストであり、コアな音楽ファンをも唸らせるサウンドと構成、歌詞からなる素晴らしい楽曲だ。

ガールズバンド、メタル、J-POP等、バンドのファン層は一定のカテゴリーに足が赴きがちで、固定化していくように感じることが多いが、DOLL PARTSのオーディエンスは、そのような垣根を越えファンを拡大しているように強く感じる。さらに昨今、海外のファンにも広がりも見せている。さまざまな音楽ファンが一緒の空間で熱く盛り上がる。これはやはりDOLL PARTSの特徴でもあり、楽曲とステージの織りなす世界観の強みである。



ライブの終盤、ファンにとっては外せないナンバーとなった「夢の底」では、ARISAはギターを下ろし自ら観客に預け、ギターのない状態のまま柵によじ登り、ワイルドに煽る。このARISAの盛り上がりぶりも、ファン達を釘付けにし、会場のボルテージの限界を越えさせている欠かせない要素であり、DOLL PARTSのライブの醍醐味でもある。

本編終了が伝えられ全22曲が披露されたが、オーディエンスの興奮は止まない。熱いアンコールに応え、DOLL PARTSのメンバーが再び戻り、人気曲の「PERSONA」「FAKE」をプレイ。アンコールは2回続き、最後は新曲の「I’m always on your side.」で終演した。

この2ndアンコールの「I’m always on your side.」は、Cherry Redレーベルのアコースティックバラードを想起させるような優しいメロディーライン。しかし耳に届くのは、まぎれもなくロックだ。「いつだって、私はあなた達の味方だよ」そのままを言葉にしなくても、その気持ちが伝わる素晴らしい楽曲であった。



ライブが終演し振り返ってみると、今回のライブはレコ発ライブではあるもののニューアルバムの収録曲以外の楽曲も多くセットリストに入っていたところも実にDOLL PARTSらしい。そこには未だ音源化されていない楽曲も多くあり、「曲を知らなくても、楽しめるライブをする」それが彼女らの信条なのだと思い当たらせる。言い換えると、それだけ全ての楽曲には観客を引き込む力があり完成度も高いのだ。

ライブ中盤には、MCでARISAから1年後の2026年4月18日に渋谷のCLUB ASIAでのワンマンライブを行う事が告知され、「これからも音楽で皆に恩返ししたい。」という想いが直に伝えられた。是非、この2025年にも多くのライブを行ってくれるものだと期待している。

そして、是非このレポートを読み、興味を持った方はDOLL PARTSをチェックし、楽曲を聴いていただきたい。ライブでは音源以上に何倍もの素晴らしいサウンドを与えてくれるはずだ。





<DOLL PARTS New album release 2 consecutive months one-man Live!!DAY2>

2025年4月19日(土)
@青山RizM
1.支配(新曲)
2.WE EXIST HERE
3.流れてゆく景色
4.Step&Bomb
5.赤
6.シャイなあなた
7.My place(新曲)
8.愛の物乞い
9.Taste of you
10.Daite
11.二人過ごした日々
12.Monochrome
13.My eyes
14.恋は幻
15.Freak out!!
16.Wait!!
17.わたしの正体(新曲)
・Drum Solo
18.愛はベッドにぶら下がっている
19.夢の底
20.罠
21.壊したい
EC1.22.PERSONA
EC1.23.FAKE
EC2.24.I’m always on your side.(新曲)

◆   ◆   ◆


2023年3月にリリースされた前作『DOPE』から2年ぶりとなるニューアルバム『B.O.G bragging out garbage』の発売は5月28日(水)、DOLL PARTSのフルアルバムとしては2枚目の作品である。タイトルのBragging out garbageは直訳すると「ゴミを自慢する」。頭文字B.O.Gは「沼」を意味する。逆説的に「本作の内容に絶対の自信がある。私たちに沼って」ということか。

前作『DOPE』のトラッシュ感はそのままに、全体を貫くうねりが広く太くなった。収録曲は「ライブで演ってきた未音源化、または入手困難であった楽曲」8曲と「完全な新曲」4曲で構成されている。ライブバンドであるDOLL PARTSの活動時間軸の中で生き残ってきた楽曲群に、経験値を増して制作された新曲を加えた組み合わせが、悪いはずがない。

グランジ、パワーポップ、ブリットポップの激しさを基調に、歌詞とメロディーの美しさをも融合した、いわば独自の「メロディアス・グランジ」な世界観が続く。すんなり聴き入れるキャッチ―さと、飽きが来ない絶妙なアレンジを共存させる事に成功しており、長年のファンにとっては、フォトアルバムをめくるようにDOLL PARTSと積み重ねてきた時間を振り返ることができ、新しいファンも一緒に歩みながら未来を作っていけるはずだ。

同時に、歌詞もまたDOLL PARTSの大きな魅力の構成要素である。瞳は一般的に輝いたり燃えたりする表現が定石だが、新曲の「支配」における瞳には濁りを感じる。究極の愛のカタチとして死があり、その2つは通底し不可分。キラキラしているものだけが愛ではないとARISAは考えているのではないか。世間体は関知せず、時に強く深く切ない愛の視点でむき出された、自分に正直な感情が容赦なく吐露されている。歌詞カードを読むだけでも、「ARISA文学」として詩集を読了したような余韻を残し、それが楽曲にのってフィードバックされると、更に抜け出せなくなる中毒性を湛えている。


ARISA

児太郎

ボーカルのARISAは従前より、高音域でもがならず伸びやかに唄い、声が濡れている。キュートな歌声はそのままでも男女問わず心を掴んで離さないが、本作では中音域にスモーキーで包容力のある魅力が加わった。往年のクリッシー・ハインド(プリテンダーズ)のような大人の女感が出てきた。アルバムを通じ「支配」「わたしの正体」「壊したい」等のややダークでドロドロとした情念の発露・交流を経た後、後半に訪れる「二人過ごした日々」のイノセントでどこまでも透き通った歌唱に心が浄化される想いだ。

ドラムの児太郎は、ルックスこそ中性的な魅力があるが、そのドラミングは蒼い炎のように熱い。常に凛とした冷徹な空気感を纏い、端正に強いビートを鳴らす。本来、リズム楽器であるが、音像はメロディー楽器的にニュアンスが多彩で、一度「I’m always on your side.」のドラムを抜いたつもりで脳内再生してみて欲しい。この曲を彩り、ロックたらしめているのは児太郎のドラムに他ならないのである。

コンポーザーでありプロデュースの要であるCOZZiのギターは、いわゆる速弾きタイプではない。しかし、至上に荒々しくエモーショナルで時に雨だれのような深遠な残響は、心にしっかりと雨跡を染み付かせる。「STRAY SHEEP」のギターソロの咆哮は、無慈悲な神に「なぜだ」と問いかけているようにも聞こえる。

従来からプロデュースはCOZZiが担当しているが、本作ではARISA、児太郎が名を連ね、制作面でも3人のバンド感が増しているようだ。パッケージで『B.O.G “Bragging out garbage”』を手にした際には、まずはそのままCDの音に身を委ね、次に歌詞カードでARISA文学を味わい、是非とも生のライブを楽しんでみて頂きたい。凶暴な愛が詰まった宝箱。メロディアス・グランジの世界標準となり得る可能性を秘めた作品である。

文◎Hidenao Adachi
写真◎Peter Lim / Kotaro Sakane

『B.O.G “Bragging out garbage”』

2025年4月19日先行リリース
1.支配
2.罠
3.My place
4.Monochrome
5.Step&Bomb
6.STRAY SHEEP
7.Daite
8.わたしの正体
9.WE EXIST HERE
10.壊したい
11.I’m always on your side.
12.My eyes
13.二人過ごした日々
14.I exist here


◆DOLL PARTSオフィシャルサイト