【ライヴレポート】hide with Spread Beaver、hideへの想いが積み重なって生まれたワンマンライブ<REPSYCLE>

2025.05.05 03:00

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こんなにも数奇な運命をたどったバンドはない。彼らは1998年1月1日、新聞の全面広告の中にhide with Spread Beaverという名前で登場した。

◆hide with Spread Beaver 画像

メンバーはhideとそのソロ活動を支えてきた仲間たち。改めてバンド名を得てさらなるステップアップが、と誰もが思った。発表前夜がX JAPANのラストライヴであったゆえ、よけいに期待は盛り上がった。そのわずか4カ月後、3rdアルバム『Ja,Zoo』制作途中にhideは去った。様々なメディアで熱く未来を語り続けていた真っ最中に。しかし、苦闘のちI.N.A.を中心にhide with Spread Beaverのメンバーは制作途中の3rdアルバムを完成させ、hide不在のまま全国ツアーを行なっている。そしてアルバム『Ja,Zoo』はミリオンセラーに。

普通だったら、ここで終わっていただろう。あるいはクイーンなどのように新たなボーカリストを迎えて活動を継続していったかもしれない。けれどもhide with Spread Beaverは違った。映像の中のhideと共に’08年味の素スタジアム、’16年幕張メッセ’18年お台場野外特設ステージとビッグステージに登場しつづけた。’23年には再びワンマンツアーすら行なっている。

hideに代わりはいない、ということを身を持って示し続けた歳月。メンバーとスタッフの努力は、回を重ねるごとに映像とバンドがより一体化していく、という奇跡をも産んでいた。

そして、hideの生誕60周年を記念して制作された永久保存版スペシャルBOX『REPSYCLE 〜hide 60th Anniversary Special Box〜』の発売を記念して開催するライヴの日がやってきた。場所は東京体育館。その公演の2日目に足を運んだ。

DJブース、hideの愛車の展示、難病や復興支援のテント、沢山の親子連れを含む単独アーティストのライヴとは思えない多彩なお客さんたち。この場外の光景がすでに特別さを伝えていた。

オープニングではスクリーン映像の中で、登場した各メンバーのアーティスト写真とリアルタイム動画が紐付けられていく。hideの写真のあとに映し出されたのは舞台中央に置かれた愛用のギター、イエローハートだった。冒頭の3曲は「POSE」「BACTERIA」「DAMAGE」。こんなにも激ハードなレパートリーを取り揃えつつ大メジャーな存在でいられたhideの不思議さを改めて想う。

「hideが帰ってきたぜ。祭りだぜー!」と叫んだKIYOSHI(G)にすかさず「江戸っ子だってね」と返す映像の中のhideに思わず笑った。こうした部分も明らかに進化している。「Cafe Le Psyence」ではさらに凝ったコンビネーションが。D.I.E.(Key)の素晴らしいピアノソロに対してhideが絶賛する。指遣いをも褒めるとリアルで指がアップになる。しかも、背景でCHIROLYN(B)が歌い続けることで虚と実の境目がさらにあいまいになる、といった具合に。

8曲目「PINK SPIDER」あたりで気づいたのは、過去一ボーカルが鮮明という点だ。hide withSpread Beaverならではの轟音感あふれるオケの中でもクッキリと聴こえてくる。「EYES LOVE YOU(DEATH HOLLYWOOD ver.)」も、彼の中では特異な朗々とした歌い方が鮮明に浮かび上がっていた。「オモチャ箱をひっくりかえしたような」という生前のhideの言葉が蘇ってきたのが「FISH SCRATCH FEVER」。ここでは背中側に魚の尻尾、前側に頭が飛び出したシャツを着たD.I.E.が音頭をとって、メンバー全員を魚に例えつつコール&レスポンス。ヘヴィだったりポップだったりする楽曲群の中に謎の、そして懐かしい空間が生まれていた。

15分間の休憩を経て始まった2部は木村世治(Vo, G/ZEPPET STORE)のソロコーナーだ。’96年の仙台サンプラザ公演でステージに彼を呼び込んだhideが「めちゃめちゃ愛してる彼の歌を聴いてください」と言った映像がまず流れ、弾き語りで「FLAKE」、途中からhideが加わって「GOOD-BYE」を披露した。「木村、いつかデュエットしようぜ」と言ってくれたhideさんの言葉が叶った、と彼はしめた。

第3部は「PSYCHOMMUNITY」の映像から始まった。ギーガー作マスクのお面をかぶって遊ぶ子供たちの映像は今見ても強烈だ。もうこの時点からhideは未来を歩いてたんだな、と思う。

曲は再び「DICE」「DOUBT」とヘヴィーチューンを披露のち車椅子でPATA(G)が登場。「はい、行ってまいります」と言って「CELEBRATION」のリフを弾き始める。さらに「松本さん、今夜もお借りします」とイエローハートを手にして「TELL ME」。頭上には金銀のテープが舞い、間奏ではKIYOSHI、CHIROLYN、K.A.Z(G)がPATAを囲んだ。さらに「でっけえロケットを打ち上げようぜ!」とCHIROLYNがさけんで「ROCKET DIVE」へ。エンディングで彼は、腹の底から“We are hide with Spread Beaver!”と叫んだ。

最後に舞台の前に並んで手を取り合い掲げたメンバーたち。が、真ん中が1カ所だけ空いている。その奥にイエローハートが見えてハッとした。色んな場面で、彼がいるような気になっていた自分に気付かされて。「こんなときhideだったらどうするか?」とは、あの日以来メンバーやスタッフがたえず口にしてきた言葉だ。その気持ちの汲み方が27年ぶん積み重なって生まれたこの日。ゴーグルをつけて観るより遥かに愛しい、バーチャルライヴが立ち現れていた。

写真◎Kazuko Tanaka (CAPS)

公演情報

<hide Memorial Day 2025
hide with Spread Beaver
“REPSYCLE” 〜Life is still going on!! 〜>

公演日:2025年5月2日(金)、5月3日(土)
会場:東京体育館

◆5月3日 (土) セットリスト
SE PSYENCE
M1 POSE
M2 BACTERIA
M3 DAMAGE
M4 BEAUTY & STUPID
M5 限界破裂
M6 Cafe Le Psyence
M7 FLAME
M8 PINK SPIDER
M9 EYES LOVE YOU (DEATH HOLLYWOOD ver.) 〜 EYES LOVE YOU
M10 MISERY
M11 Junk Story
M12 FISH SCRATCH FEVER
M13 ever free
《2部》
Guest1 木村世治 (FLAKE)
Guest2 木村世治 feat. hide (GOOD-BYE)
《3部》
SE PSYCHOMMUNITY
M14 DICE
M15 DOUBT
M16 CELEBRATION
M17 TELL ME
M18 ROCKET DIVE
SE HURRY GO ROUND

◆5月3日公演をWOWOWで6月に独占放送&配信決定
「hide Memorial Day 2025 hide with Spread Beaver “REPSYCLE” ~Life is still going on!!~」  
hide with Spread Beaver東京体育館公演2日目を6月29日(日)18時〜WOWOWで独占放送&配信決定。7月にはhide MV集と、映画2作品『hide 50th anniversary FILM JUNK STORY』『TELL ME~hideと見た景色~』もあわせてお届け
詳細:https://www.wowow.co.jp/music/hide/

ライヴ情報

<hide Birthday Party 2025>
日時:2025年12月13日(土)OPEN 14:00 / START 14:45
会場:CLUB CITTA’
出演:hide / Chirolyn / defspiral / DIE / DJ-INA / JOE / PATA / 木村世治 / 桃知みなみ(Opening DJ)
and more

5月2日(金)17:00よりhideオフィシャルファンクラブ『JETS』会員最速チケット先行スタート
特設ページ:https://www.hide-city.com/feature/specialsite_bday2025
公演についてのお問い合わせ:クラブチッタ 044-246-8888 (平日12:00〜19:00)

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