【対談インタビュー】薫(DIR EN GREY)× 来夢(キズ)、初対談で “バンド”を語る「今がベストなのが一番」

◾︎今みたいな仲の良い関係で、もっとカッコいいバンドになれたら(来夢)
──DIR EN GREYもキズも、絶対君主みたいなリーダーがいるバンドとは明らかに違いますよね。メンバーとの関係性を大事にしているというか。
来夢:もちろん違うと思うんですけど、今まで曲に関してもバンドでやりたいことに関して案を出した時も、メンバーから「これは嫌だ」って反対されたことは一度もなくて。で、それがどうしてなのか自分でもわかんなくて、それが不安で。だからたまに「なんか不満とかない?」ってこっちから聞きたくなることはあります(笑)。
──逆に気を遣うわけですね。
来夢:それぐらい僕のことを信じてくれてるってことだから、自分がもっと頑張らないとっていう責任感は強くなるし、リーダーになるつもりじゃなくても、やっぱりバンドを背負ってるところはあると思います。
──薫さんはバンドを背負ってる意識はありますか?
薫:もちろんありますよ。でもそれはリーダーだからってわけじゃなくて、メンバーそれぞれにあるんじゃないかな。
──いろんなことを必ず5人で決めるバンドじゃないですか、DIR EN GREYって。メンバー全員の合意がルールというか。民主的ではありつつも、まとめ役としては大変じゃないかと。
薫:どうなんですかね。他のバンドを経験してないから比べようないですけど……でもまあ大変ですね(笑)。
来夢:ははははは。
──さっきも言いましたが、全部を一人で抱え込む絶対君主的なリーダーもいます。
薫:そういう人は全てを自分がやらないと気がすまないんだろうなって思う。例えば曲の創作に関して言うと、自分の場合は一人だと面白くないんですよ。自分が想像した以上のものだったり、自分を裏切るようなものにはならない。そこはやっぱり1ミリでもいいから、誰かの意見とかアイディアが入って来て欲しい。それで「こんなことになるんだ!」みたいなことが起こって、そこから新しい何かが生まれたりするんで。
来夢:自分はちょっと違ってて。8割ぐらい出来てる状態の曲をメンバーに渡して、そこにアレンジを足してもらう感じですね。でも、その8割ぐらいの状態にまでするのに、ものすごく一人で苦しむんですよ。だから曲作りは一人で苦しむもの、っていう感覚がありますね。

──曲作りに時間がかかると、ご自身でも公言されてますよね。
薫:まあ俺もそうですけど。
来夢:たぶん僕、曲作りが苦手なんですよ。これまでいろんな方法を試してみたんですけど、結果的に一人で苦しみながら作るのが一番いい作品になることを知ったんで。そこはもう諦めて、自分の部屋でずっと抱え込んでます(笑)。
薫:「抱え込む」っていうところは俺も近いかもしれない。最終的にメンバーそれぞれから出てきたものをまとめるのは自分なんで、そこの局面ではやっぱり抱え込んでしまうというか。しかも「こんな感じになったら面白いんじゃないか?」みたいな意見だけメンバーからもらっても、「そんな口で言うほど簡単にはいかんよ?」みたいな(笑)。
──リーダーならではの苦労ですね(笑)。
薫:でもそういう意見が出てくることが俺は大事やと思ってるんで。だから「こういうのはどうかな?」って言われたのが仮に良くない意見だとしても、それを一旦は受け入れることにして。
来夢:そうなんですか?
薫:そこで突っぱねちゃうと、意見した本人のモチベーションも下がるし、その状態で曲と向き合っても気持ちが入らなくなるのも良くないし。
──確かにそうですね。
薫:やっぱり5人の気持ちがちゃんと入った曲になることがバンドにとって大事なんで。そのためにわざわざ回り道をしてるところはありますね。でも回り道をすればするほど、メンバーの気持ちが曲に入っていくんで。
──非効率ではあるけど、そうやってバンドらしさが作品になっていくわけですね。
薫:ウチの場合はそう。寄り道をあえてすることが大事やし、面白いものになるっていう。
──どうですか、今の話を聞いて。
来夢:いやあ……マジでめちゃめちゃ勉強になります。自分の場合、もしメンバーから絶対これ違うよなっていう意見を言われたら「は?」ってなって終わっちゃうんで(笑)。たぶんそれを受け入れたり試すような余裕がないんですよ。それぐらい制作の時はピリついてるし、苦しんでる。メンバーのことすら視界に入らなくなっちゃうんですよ。曲そのものが自分の子供みたいな感覚にもなるし。
薫:それはわかる。
来夢:そこでメンバーの意見を受け入れることも出来た方がいい時もあるかもしれない……って今の話を聞いて思いました。ていうか今まで一回も意見もらったことないんだよな(笑)。

──でもそのぶんキズはメンバー同士がすごく仲が良いというか、学校の部室みたいなノリのバンドで。
来夢:楽屋でもずーっと4人で喋ってますからね。今8年目ですけど、大きな喧嘩とかも全然なくて。だからそのぶん仲悪くなるのがちょっと怖いですね。
薫:それでいいと思うよ。ウチらにもそういう時期は大昔にあったけど……ま、一緒にいる時間が長いとね、いろんなこともあるし。
来夢:そうですよね。
薫:一緒にいて空気が悪くならないようにはしてるかな。ある程度距離を置いてみたり。そういう空気はいつもある。
来夢:僕らもいつかそうなるのかな……。
薫:や、仲がいいに越したことはないからね。
来夢:そうですよね。今もけっこう文化祭モードっていうか、いつもワイワイやってるんで。
──ちなみに今回の対談もそうですが、リーダー同士がお互いの悩みを打ち明けたり、相談することはありますか?
薫:誰かに相談は……ないですね。それこそ外部にバンドの内情を知らせることになるし、それってあんまり誰かに知られたくないことでもあって。そもそも人に相談することでもない気がするんで。
──来夢さんは?
来夢:僕もないですね。キズの場合、自分がリーダーだっていう意識よりも、とにかくメンバーをいかに感動させるような曲を書くことができるか?ってことに意識があって。ほぼ完成形に近い状態まで一人で作ってメンバーに渡した時、まずは彼らに感動してもらわないとファンにも届かないだろうし。
薫:それは俺もそう。
来夢:だからリーダーとしての悩みとか相談っていう発想がないですね。
──とはいえ来夢さんは、ヴィジュアル系シーンを盛り上げるべく、その旗振り役を買って出てる印象があります。
来夢:自分的には旗振り役っていうつもりでもなくて。ただ、このシーンってバンドの数が少なくなってきてるし、若い世代に憧れを残せていない──自分含めてですけど、そういういちバンドのいちボーカリストとしての意見を言ってるだけで。僕が先頭に立ってシーンを引っ張っていこうみたいな意識というよりも、思ってることをただ発信してるっていうか。あとはそれを発信することで、自分自身に言い聞かせてるところもあります。
薫:発信していくのはいいことだと思うよ。そうやって誰かが口にしないと何も変わらないから。思ってるだけじゃどうしようもないんで、意見するのはいいと思う。
──わかりました。さらにリーダーとしての質問ですが、今までリーダーとして挫折とか、後悔していることがあれば。
薫:後悔してることなんかいっぱいありますよ(笑)。一番は……やっぱりフリーウィルに入ったことかな(笑)。
一同:ははははははは!
──冗談として受け止めておきます(笑)。来夢さんはどうでしょう。
来夢:制作になるとどうしても熱くなって、メンバーに強く言ってしまう時があって。「ここはこうして欲しい」みたいなことを。でもメンバーはみんな優しくて、言い合いにはならない。そういう時は後から反省じゃないけど、申し訳ないなって。でも、本当に彼らのことをリスペクトしてるし、そこで彼らと言い合いにならないのも僕のことをリスペクトしてくれてるからだと思っていて。だからなるべく今みたいな仲の良い関係で、もっとカッコいいバンドになれたらと思ってます。
──今、リスペクトという発言がありましたけど、やはり薫さんもそういう思いでメンバーと接していると?
薫:それはまあ……ここまで長く一緒にいると、もはやリスペクトがどうとかでもないっていうか(笑)。もちろんこの5人でいるからこそここまでがあったし、これから先があるとも思ってますけど、だからってお互いをライバル視してるかっていったらそうでもなく。むしろ……それぞれが自分と戦っているような感じなんですよ。自分と戦ってるメンバー5人の集合体っていうか。それを各々が俯瞰しながら全体のバランスを取ってる感じですね。
来夢:なんか……曲作りの話もそうですけど、初めて知ることが多いです。そういうバンドなんだ、みたいな。
──ちなみにキズの新曲「 R/E/D/ 」の歌詞の中には、リスペクトしているバンドへのオマージュ的な表現があって、それがこの対談のきっかけになってるんですが、薫さんから曲の感想があれば。
薫:言葉を発信できる立場にいる人が思っていることをそのまま言葉にすることって大事だと思うんですよ。ただ、長くやっていると、「こういうことは言葉にして出していいのか」みたいなことを考えてしまうこともある。自ら発信することにストップをかけてしまうというか。けど、そういうことを考えずに思ったことを出せる時はそのまま出したほうがいいと思うし、今はどんどんそれをやっていっていいんじゃないかな……っていうのが曲を聴いた感想ですかね。これからいろんな経験を積み重ねていけば、どうしても考えながら曲を書いたり言葉を発信していくことになるだろうから。
来夢:ありがとうございます。確かに今、そういうことを少し考えてしまうところもあって。例えば最近、喉を潰した時に治りが遅くなって「いつまでこのキーで歌えるんだろう?」とか思ったんですね。でも、今の自分が表現できることを先のことまで考えてセーブしたくないし、むしろ年々表現の幅は広がっている実感もあるんで、このまま行けるところまで行こうと思ってますね。
薫:将来のことを今から考えてもしょうがないんで。今がベストなのが一番。
──では最後の質問です。キズは1月に初の武道館ワンマンをやりましたが、その時来夢さんは「またここでやる」といった再演を誓ってましたが、それは悔しさみたいなものがあったから?
来夢:ソールドアウトできなかったことに対する悔しさはありましたね。でも、ライブそのものに関してはやりきったと思ってます。
薫:初めてでそう思えるのはすごいな。
──ちなみにDIR EN GREYの初武道館は……。
薫:その話は辞めましょう(笑)。
来夢:はははははは。
──さて、対談してみた感想で締めたいと思います。
来夢:やっぱり曲作りの話ですね。メンバーの意見をいったん受け入れてみるっていうのは、むちゃくちゃ刺さりました。
──薫さんはどうでしたか?
薫:ま……これからいっぱい大変なこと起きてくるだろうなって(笑)。
来夢:ははははははは。
薫:そう思いながら話を聞いてたけど、ただ、この先どんなことがあっても、それぞれがバンドをどれだけ大事に思えているかどうかだから。それさえあれば全然大丈夫じゃないかな。
取材・文◎樋口靖幸
写真◎荒熊流星
<キズ 8th Anniversary FREELIVE『傷痕』>
2025年4月19日(土)
イオンモール幕張新都心 GRAND MALL1F グランドスクエア
開場 13:30 / 開演 14:00
※雨天開催・荒天中止
【イベント内容】
ミニライブ 開演 14:00予定
DVD販売 10:00~13:30
グッズ販売 詳細後日解禁
SNS投稿キャンペーン 特典引き換え10:00~16:00
フォトスポット 10:00〜16:00
詳細はこちら【https://ki-zu.com/news/7226/】
LIVE DVD『キズ 単独公演「焔」2025.1.6 日本武道館』
2025年4月9日(水) RELEASE
詳細:https://ki-zu.com/discography/