【インタビュー】Toshl、アルバム『IM A SINGER VOL.4』に龍玄としという人間の純真「“明るく楽しく幸せありがとう”という感じですね」

2026.07.07 19:00

Share

■どんな高い音だろうが、全部声で表現する
■このチャレンジをやって本当に良かった

──カッコいいと思います。で、アルバムの中で、意外だったのが『セーラームーン』の曲だったんですよ。Toshlさんは女性シンガーの歌もたくさん歌っていますが、しかし「ムーンライト伝説」はさすがに意外な感じが強いです。

Toshl:ですね。やっぱり、意外性も大事ですから(笑)。セーラームーンは女の子たちの憧れであり、思い出で……彼女たちの基礎を作ったようなアニメでもあるし、そういう歌でもあると思うんです。たとえば僕が仮面ライダーのお弁当箱とか水筒なんかのグッズを集めていたように、たぶん女子でセーラームーンのグッズを集めてた方は非常に多いんじゃないかと思っていて。そのぐらい、幼少時からの思い出が詰まった歌だと思うんです。もちろん男性ファンも多いんですけれど。今回はそこにあえて寄せていくというか、僕の乙女心を炸裂させたいな!と(笑)。そこに自分もフォーカスを当ててやってみたいな、と思いました。

──乙女心ですか(笑)。まさに世代を超えて人気がある作品ですからね。では次の「魂のルフラン」は?

Toshl:これは以前、「残酷な天使のテーゼ」を歌わせていただいたんですけど、その『エヴァ』(新世紀エヴァンゲリオン)の世界観の中で、「魂のルフラン」は異質な曲と言ったらいいんでしょうか。男性として聴くと、母性があふれているというか……もう《私に還(かえ)りなさい》から始まりますから、もう“還ります”みたいな、丸まりたくなるところがあって(笑)。そこから宇宙が広がっていくというか、独特な安心感があって……それがまた美しい曲なんですよね。それを今風にアレンジして僕が歌ったらまた面白い世界観ができるんじゃないかな?というヴィジョンが見えていたので、選ばさせていただきました。

──なるほど。母性に包まれたい、そんな感覚というか。

Toshl:うんうん、守られたい男心というか。そういうのがありましたね。

──歌を歌うにあたって、そういうニュアンスまで解釈しながら歌っているわけですね。

Toshl:そうですね。アニソンは、多くの方々の人生に深く関与してるんですよね。その人にとって、大切なものじゃないですか。だから失礼のないように、大切なものを壊さないように、自分は関与していかなきゃいけないと思うんです。そういう意味で先ほど「ハードルが高い、壁が厚い」という表現をしたんです。だから楽曲をすごく聴き込んだし、ひとつひとつの歌詞も自分なりに解釈して、それを歌う側の人間としてどう表現していくのかを研究していきましたし。毎回そうですが、今回はその研究に時間を費やすことが、特に大切でしたね。そういうことの学びにもなりました。

──それだけの歌になっていると思います。では「secret base ~君がくれたもの~」はいかがでしょう? これもオリジナルは女性グループの歌唱曲ですね。

Toshl:『あの花』(=あの日見た花の名前を僕たちはまだ知らない。)は、僕がいろんなアニメを見てきた中で、おそらく一番泣いた作品なんです。何でしょう……あの青春感というか、せつなさというか。なので、歌ってみたいなという気持ちは大きかったですね。さっきドラマ性と言われましたけど、そのドラマ性というものは、アレンジとか音使い、楽器選びとかにも僕は反映させてきたつもりなんです。で、この曲は、みんなの心の中にある夏休み……少年の頃、少女の頃の夏の思い出というか、そんなイメージなんですね。だからオルゴールのサウンドから始まったり、懐かしいような音を入れてみたり、そんなふうにアレンジをして。で、最後に転調して、10年後の8月に飛ぶ、みたいなドラマチックなイメージを膨らませながら作っていきました。

──そうですね。だからアルバムをこうして聴いてくると、徐々にその少女性や少年性というナイーヴなところに、その深みに、だんだん連れて行かれてる気がします。1〜2曲目は盛り上がったけど、だんだんと透明な、美しいものに帰結していってると思うんですよね。それは続く「虹」もそうなんですよ。

Toshl:ありがとうございます。今回はバラードが少なめだけど、やっぱりバラードで締めたいな、というのがあって。いくつか候補がある中で、自分が歌いながら泣けた曲はどれかな?と思うと、どうしても「虹」だったんですよね。『ドラえもん』の映画のストーリーも含めて、みんなが深いところでキューンとくる歌を(カバー曲の)最後に持ってきたかったんです。

──はい。すごく純粋で、心が清らかになる感覚があります。

Toshl:やっぱりどの曲も歌が強いし、曲が美しいですよね。特に「虹」は多くの人の心にストレートに入ってきて、それを“そうだよな” “ありがとう”みたいな気持ちをストレートに感じさせてくれるんです。本当に純粋な曲だと思うんですよね。

──ええ。そして、それをまっすぐに歌えるToshlさんもすごいと思います。

Toshl:いやいやいや(笑)。これ、レコーディング的には一番最後に歌った曲なんです。順番的にも、最後に持ってきたかったんですよね。だから最後に「虹」を……ある意味泣きながら歌うことができて、このアルバムを作れたんだと思う。ありがたさとか、感謝とか、周りの人たちに対するいろいろな思いも含めて、そうして心を込めて歌えたことが、自分にとっては本当にうれしかったですね。

──そうだったんですね。しかもそこで自分自身が歌いながら泣いてしまう曲を選ぶのは、Toshlさんが持つイノセンスを表してると思います。

Toshl:いえいえ(笑)。ありがとうございます。やっぱり歌って、そういう純粋なものなんでしょうね。先ほどお話したように、その人の子供時代とかイノセントなもの、ピュアネスみたいなものを、歌は包み込んでくれてるじゃないですか。僕もそれを歌っていくことで大切なものを取り戻して、つかんでいったんじゃないかな。それがきっとまっすぐな歌として現れてくれたのかな、と……今思えば、そんな感じもします。

──いい話ですね。で、8曲目からはオリジナル曲なんですけど。「ブチかませ」はボカロPであるさたぱんPさんから提供された楽曲なんですね。

Toshl:これは“何か面白いことできないかな?” “今っぽいことで何かできないかな?”と探してた時に、ボカロというものを思いついて。“本来であれば機械が歌う楽曲を俺が歌ったらどうなるの? それは面白いチャレンジじゃないかな”と思ったんです。で、いろんなボカロPさんの楽曲を聴いた中で、さたぱんPさんが“一番面白そう、相性が合いそう”だと感じたので、「どうですか?」って話をさせていただいたら、「ぜひ楽曲を書かせてください!」ということだったので。チャレンジでしたね、これは。

──さたぱんPさんは自身のYouTubeチャンネルで「刺激的に歌ったり弾いたり、刺激的なボカロ曲作る」と自己紹介を書いているほどの方で。そういう意味ではToshlさんのアグレッションなところに合ったんだろうなと思いました。

Toshl:そうなんですか。いや、めっちゃ刺激的でしたね。ボーカルディレクションも彼に任せたんですけど、「もう忌憚なく、どんどんリクエストしてくれ」と言ったら、若いから何でも言ってくるんですよ! 途中からたぶん僕のことを機械だと思ってたと思う(笑)。で、僕も言われたら“必ずやってやる!”と思う人間なんです。“どんな高い音だろうが、どんな低い音だろうが、全部声で表現する!”と。だからボーカル録りに一番時間がかかったのはこの曲ですね。

──そうですよね。そもそも曲自体がボカロ仕様だし、歌うのが難しそうです。

Toshl:複雑なんですよね。あとハーモニーもたくさんあって、聴こえてないような声までたくさんあるんです。それを機械じゃなく、人間味を持って、歌うことにチャレンジしました。しかもさたぱんPさんは、そこの追求に忖度がないんです(笑)。おかげで、“え? 僕、まだこんな声出るんだな” “こんな領域まで行けるんだな”とか、そういう新たな扉を開けていただきましたね。その意味ではまさに刺激的なレコーディングだったし、このチャレンジをやって本当に良かったなと思いました。

──そうだったんですね。曲自体もハードロックやヘヴィメタルだったり、Toshlさんの音楽性のルーツのひとつがしっかり盛り込まれていますよね。

Toshl:そうなんです。だから曲のことはもう大丈夫だと思ってました。彼もギター弾きで、非常にテクニカルなギターを弾く方なんですね。で、歌詞はいろいろあったんですけど、最終的には「さたぱんPさんが思う僕のイメージをぶつけてくれ」という感じで。そうしたら、“オリジナルであれ!”というメッセージになったんですよ。それは最初の段階からあったんですけど、彼が“オリジナルであれ、そういう道を行け!”みたいなイメージをされてることが、僕にはうれしかったですね。“唯一無二で行ってくれ、自分の道を進んで行け!”みたいな。さたぱんPさんのその歌詞に応援していただいたようなイメージです。僕は今の若者にそういうふうに見られてるのかなって思うとうれしかったし、だったらそれを思いっきり表現してやろうと思って。ガナリからシャウトから、もう全部入れました(笑)。