【インタビュー】この夏、ヨーロッパ最大級のヴィジュアル系イベントがパリで開催。プロデューサーのベルトラン・トルペド氏が語るヴィジュアル系の魅力

日本発祥のコンテンツとして、海外でも根強い人気を誇るヴィジュアル系。アニメやゲームのキャラクターを彷彿とさせるバンドの立ち姿は、まさに日本が誇るサブカルチャーのひとつと言ってもいいかもしれない。
そんなヴィジュアル系アーティストを約20年に渡ってサポートしてきたのが、ライブ・プロデューサーのフランス人、ベルトラン・トルペド氏である。彼は今年、自身の20年にわたる活動の節目にパリで日本のヴィジュアル系アーティストを集めたイベント<B7KLAN J-ROCK FEST>(7月11、12日の2 DAYS)を企画し、話題を集めている。そんなトルペド氏が各方面の打ち合わせのために来日。その合間にインタビューの機会を得ることができた。海外目線で見た日本特有の文化は、果たしてどう見えているのだろうか。彼自身が抱くヴィジュアル系への思いや、今後の展開などを語ってもらった。
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──まず、日本発祥のヴィジュアル系に興味を持ったのはどういう経緯だったんですか?
ベルトラン:最初にヴィジュアル系のバンドを見たのはドイツのフェス<Rock Am Ring>(2005年頃)に出演したDIR EN GREYでした。その時は彼らのことは全く知らなかったんですが、すごく衝撃を受けましたね。その後、2006年にはDioというバンドと仕事をしたんです。彼らはすごくクレイジーなルックスで、もちろん僕は彼らを知らなかったんですけど、ライブはソールドアウトしていて、観客もすごくもり上がってました。もう20年も前のことです。
──ベルトランさんにとって、ヴィジュアル系というのはすごいインパクトがあったんですね。
ベルトラン:そうです。なぜなら、自分がこれまでに見てきたバンドとは完全に違っていたからです。
──日本のヴィジュアル系の中には欧米の音楽に影響を受けたバンドも多いはずなんですが、どういう違いを感じましたか? 例えば、彼らのメイクはアニメやゲームのキャラクターを思い起こさせるような印象がありますよね。欧米のハードロック系のバンドは思い切り悪魔的なメイクだったり、メンバーもマッチョだったりするので、その辺はかなり違う部分かもしれません。
ベルトラン:確かに! そこにはすごく驚きました。特に衣装やメイクを落としたあとのメンバーは、全然雰囲気が違うおとなしい印象だったので。きっとヴィジュアル系のバンドにとって、メイクや衣装はすごく大事な要素なんだと思います。専属のメイクさんがいるのも新鮮でした。先ほど、ヴィジュアル系バンドと欧米のバンドの違いをおっしゃってましたけど、やはり僕にとってヴィジュアル系は完全に日本独自のものなんですよね。レゲエがジャマイカを象徴する音楽であるように、ヴィジュアル系は100パーセント日本を象徴する音楽という感覚です。たとえ、ヨーロッパのバンドがヴィジュアル系のような音楽をやったとしても……それは素晴らしいことですが、根本的に本家のヴィジュアル系と同じではないんですよ。ヴィジュアル系はまさに日本のオリジナルなんだと思います。
──何か嬉しいですね(笑)。
ベルトラン:ヴィジュアル系のセンスは誇れるべきものだと思います。決して商業的ではないかもしれないし、誰にとっても届きやすい音楽ではないかもしれないけれど、ファンにとってはちゃんとしたジャンルであり、コミュニティーになっていますから。

──ヨーロッパ、特にフランスでは若い層にもヴィジュアル系が受け入れられているような気がします。彼らはヴィジュアル系のどういうところに惹かれていると思いますか?
ベルトラン:20年前、僕がヴィジュアル系と関わるようになってから、実際どうやって人々がヴィジュアル系を知っていったのがよくわからないんです。大概は雑誌やインターネットのウェブサイト、そしてファン自身がツアーをオーガナイズし始めてからだと思います。ただ、2015年まではフランスでも結構盛り上がってきていたんですが、それ以降、人気が下降気味になったんですよ。でも最近、改めて我々もヴィジュアル系のコンサートをオーガナイズし始めたんですが、きっとTikTokやインスタグラムといったソーシャルメディアの発達もあって、これが新たなヴィジュアル系の波になっていったと思います。
──ヨーロッパでは最近ヴィジュアル系がリバイバルしているという傾向もあると言われていますね。
ベルトラン:個人的には、音楽にはサイクルがあると思っているんです。どんなジャンルでもね。ヴィジュアル系にもサイクルがあって、それが今につながっているのかもしれません。あとは何組かのバンドがずっと諦めずに活動を続けてきたからだと思いますよ。中には長期のインターバルを経て復活したバンドもいますよね。今、東京に滞在しているんですが、昨日D’ESPAIRSRAYのライブを見たんです。彼らもリユニオンしたバンドですが、チケットはソールドアウトしていました。
──リアルタイムで体験していなかったバンドのリユニオンは若いファンにとっては嬉しいと思います。初めて見る人もいるでしょうし。YouTubeでオススメの映像として表示されて知った人もいるはずです。やはりネットの力は大きいですね。
ベルトラン:そうですね。TikTokやインスタグラムなどのソーシャル・メディアによる影響はあると思います。

──ところで、ベルトランさんには好きなヴィジュアル系バンドはいるんですか?
ベルトラン:個人的にですか? 実は特定のバンドが好きというわけではないんです。
──え? そうなんですか!
ベルトラン:なぜなら僕は非常に多くのバンドと仕事をしているし、プロデューサーとしていろんなバンドを発掘していると、それぞれの音楽性も多岐にわたっているのを知っているんです。例えばLM.Cは非常にキャッチーでポップだし、激しいタイプの音楽を作っているthe GazettEやVersaillesの中にもそれぞれ好きな曲はありますから。
──曲の良さ重視ということですね。
ベルトラン:ただ、僕が一緒に仕事をしてきたバンドはみんな素晴らしい人達で、一緒にツアーをまわったりすると、楽しい時間を共有することができているんです。僕はプロとして関わった全てのアーティストをリスペクトしているし、ファンのこともリスペクトしています。そういう意味でも、すごく平等に仕事ができていると思います。
──さて、7月11、12日の2日間、パリで日本を代表するヴィジュアル系バンドが集結するイベント、<B7KLAN J-ROCK FEST>が開催されますね。ベルトランさんはこちらのイベントを主催されていますが、日本でもなかなかこのメンツが集まる機会は少ないような気がします。バンドのセレクトはどういうポイントだったんでしょう?
ベルトラン:僕がこのシーンと関わり始めたのが2006年なので、ちょうど20周年の節目なんですね。そして、ヴィジュアル系というのは僕にとって非常に大事なものなんですよ。というのも、これまで多くのバンドの海外ツアーをオーガナイズしてきましたからね。でも、こういう大きなイベントをやるのは、やはり簡単ではなかったんです。それぞれのバンドのスケジュールもありましたから。でも、声をかけたバンドの多くが、非常に前向きな反応を返してくれて。出演するバンドはポップだったり、ゴシック、シンフォニックメタル、メタルコアなど、異なる音楽性のバンドが集まっているので、すごくいいバランスになったと思います。僕としては、東京でもやってみたいですね。
──すでにヨーロッパでライブを行った日本のバンドのメンバーが“ヨーロッパのファンは熱狂的だった”とか“大きな声で一緒に歌ってくれて嬉しい”という声もあります。日本でも観客のノリは熱狂的ですが、全編歌うファンはあまりいないんですよね。この違いは面白いと思います。
ベルトラン:日本の観客は、すごくリスペクトをもって楽しんでいる気がします。ヨーロッパはとにかくクレイジーだし、はちゃめちゃにノったりするけど、そういうライブは日本のバンドにとってすごく心に残ると思う。

──海外で日本のバンドのパフォーマンスが盛り上がってくれるのは嬉しいですね。ところで、ヴィジュアル系というジャンルは、サブカルチャーという側面もあると思います。このジャンルがもっとステップアップしていくには、何が必要だと思いますか?
ベルトラン:それは難しい質問ですね。例えばもしヴィジュアル系のバンドが映像の撮影を解禁すれば……日本では基本的にライブの撮影は禁止されていますよね? K-POPのグループのように撮影がOKになったりすれば、広がっていくかもしれません。僕がプロデューサーの立場として、ヴィジュアル系のバンドがもっとビッグになるためにも、僕はこのフェスティバルを通して、もっと日本のバンドに世界への窓を開いてあげられたらいいなと思っているんです。
──海外では撮影OKは常識ですし、ファンの皆さんが拡散してくれるのが普通なんですが……。
ベルトラン:ヴィジュアル系にとって、ヴィジュアルやメイク、衣装、そしてイメージはとても重要ですからね。彼らは楽屋でのオフショットを撮られるのが好きじゃなかったりするけど、彼らにとってバンドのイメージは非常に大事なんだと思います。
──もうひとつ、言葉の問題もあるかもしれません。
ベルトラン:実際、英語が話せたら、もっと世界に広まっていく可能性はあると思います。
──逆にヨーロッパのファンの中には日本語を勉強されている人も多い気がします。でも、バンドをもっと知ってもらうにはコミュニケーションができた方がいいのでは?
ベルトラン:少なくとも英語は話せた方がいいでしょうね。でも、歌詞は別に英語である必要はないと思います。もちろん、英語の方が伝わりやすいけど、このシーンのヨーロッパのファンは、すでに日本の良さを知っていますから。
──そういう意味でも<B7KLAN J-ROCK FEST>がこの先、定期的に行われたらいいなと思ってしまいますね。
ベルトラン:今回が初めてなので(笑)。でも僕はそんなに焦っているわけではないので、しっかり考えていきたいです。ただ、先ほどのヴィジュアル系のリバイバルの話もあるように、今回のイベントは本当にベストのタイミングだったと思います。
──スケジュールの都合で参加できなかったバンドもいたと思うので、ぜひ次のチャンスがあるといいですね。ところで、<B7KLAN J-ROCK FEST>には、日本からのファンも参加しているのではないですか?
ベルトラン:今のところ、日本から160人くらいの方がチケットを購入しています。
──日本のファンは見る機会も多いと思いますが、わざわざ応援に来るのは嬉しいですね!
ベルトラン:今回のイベントでは9組のバンドをブッキングしたんですが、実は10組目のバンドをオーディションでピックアップしたんですよ。日本には小さいライブハウスがいっぱいあって、たくさんのバンドが小さいライブハウスで対バンしてますよね。僕はまだまだ知られていない新しいバンドを紹介できるのもすごく楽しみにしているんです。そういうのも、お互いにいい冒険になると思っています。
──オーディションを勝ち抜いてフランスでライブする機会を得たというのは素晴らしいチャンスですね! では、最後に日本はもちろん、海外のヴィジュアル系ファンに向けてメッセージをお願いします。
ベルトラン:今回、スケジュールの都合で参加できなかったバンドもいました。それでも今回のラインナップは素晴らしいと確信しています。ヨーロッパの人にとっては参加しやすいので、ぜひ来て欲しいです。このフェスティバルはヨーロッパ初のイベントですし、間違いなく世界的なイベントでもあります。僕は全てのファンやバンドを世界に広げていきたいと思っているんですよ。イベントを通してヴィジュアル系バンドの助けになればいいと思うし、このジャンルを再び、盛り上げたい。できれは、この先もこういう仕事を続けていきたいですね。
取材・文◎海江敦士
撮影◎荒熊流星
<B7KLAN J-ROCK FEST>
2026年7月11日(土)・12日(日)
【チケット情報】
https://www.envolprod.com
https://shotgun.live/en
イベント詳細:https://www.envolprod.com/b7klan-jrock-fest
(プロフィール)
ベルトラン・トルペド(Bertrand Torpedo)
ベルラン・トルペドは、パリを拠点に活動するフランス人ライブ・プロデューサー/国際ツアープロモーター。1998年より世界各国でコンサートやツアー制作を手掛け、ブラック・アイド・ピーズ、グロリア・ゲイナー、ユッスー・ンドゥールなど数多くのアーティストと仕事をしてきた。2006年からは日本人アーティストの海外展開に注力し、ONE OK ROCK、ASIAN KUNG-FU GENERATION、RADWIMPS、MAN WITH A MISSION、久石譲などの欧州公演をプロデュース。日本音楽の海外普及における先駆者の一人として知られる。2026年には日本との活動20周年を迎え、その集大成としてヴィジュアル系文化をテーマにした「B7KLAN J-ROCK FEST」を7月11、12日の2日間、パリで開催する。






