【ライブレポート】トライアンフ、30年ぶりツアーが開幕、和解の先に実現した50周年の奇跡

2026.04.30 12:08

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カナダのレジェンド、トライアンフのツアーとしては30年ぶりとなる50周年を祝う北米ツアーが開幕した。

メンバーのリック・エメットは、これまで何度も「絶対にない」と言ってきた再結成ツアーだ。彼は「この20年間、メンバーとは話しもしたくなかった」とも打ち明けている。それだけに、このバンドのツアーというのは奇跡であるし、カナダ10都市・アメリカ17都市に及ぶ大規模な北米ツアーを遂行するには年齢的にも過酷なスケジュールに思う。それでも彼らは自分たちのファンに対する責任を取ってくれようとしている、何がそうさせたのかはツアーを観てわかった事がある。

1975年結成、ギル・ムーア(Dr, Vo)、マイク・レヴィン(B, Key)、リック・エメット(G, Vo)のトリオで活動してきたトライアンフは、9枚のアルバムをリリースし、照明や花火など派手なステージングと多くのヒット曲で成功を手にした。1983年の<USフェスティバル>の映像は何度も観てきたが、才能の塊としか言いようのない3人が織り成すステージは今観ても何度でも感動できる。そんなバンドも、1988年にリックがバンドを去る事になる。この時は相当に険悪だったようで、その後、リックの後任として加入したのがフィル・X(現在ボン・ジョヴィのG)だが、フィル加入の作品についてはメロディの質感も変わり、当時はあまり思い入れもなかったのが正直なところだった。このリリースを最後にバンドは解散する。

2007年にはカナダ音楽業界の殿堂入りを果たしたことでオリジナルメンバーが再集結。翌2008年にも『ジュノー賞』で殿堂入りし、スウェーデンでの<Sweden Rock Festival>と アメリカでの<Rocklahoma>の2つのフェスティバルにトライアンフは再結成して出演した。その翌年からは北米ツアーを行うというアナウンスがあったものの、実現には至らなかった。私自身、この時のフェスに行けなかった事を長年悔やんでもきた。

その後、世の中がパンデミックだった2021年にドキュメンタリー映画『Rock & Roll Machine』のプレミア上映でもカナダではメンバーが登場。この時点で和解していたのかは不明だが、新しいグッズも制作・販売され、プロモーション用のギル、マイク、リックの3人が並んだ写真にはジンと来るものがあった。

そして2025年、オールスターによるトライアンフのトリビュートアルバム『MAGIC POWER』がリリース。セバスチャン・バック、レブ・ビーチ、ジャック・ブレイズなどに加えて、トライアンフのメンバーであったフィル・Xも参加している。このリリース直後、NHL(ナショナルホッケーリーグ)2025年スタンレーカップ決勝戦で開催される無料野外コンサート<Rogers Festival at the Final>にトライアンフが出演、メンバーにはフィル・X、スラッシュ feat. マイルス・ケネディ&ザ・コンスピレイターズのトッド・カーンズ(B, Vo)、ブレント・フィッツ(Dr, Key)も参加した。

当時のトライアンフでは、フィル・Xは在籍時代はリックとは被っていないにもかかわらず、今になってここまで存在が大きい事に改めて驚く。今、高齢となったバンドにはフィルの存在が再結成を実現させた要因のひとつではないだろうか。

遂に開幕した今回の50周年ツアー。カナダはオンタリオ州のスーセントマリーとトロントの2公演を観る事が出来た。オープナーには同じくカナダ出身のエイプリル・ワインが帯同している。中心人物が他界してしまっているが、こちらも素晴らしいステージで国民に愛されているのを感じた。

トライアンフのステージには透明のドラムセットが2台設置、左側がギル・ムーア、右側にはブレント・フィッツ(Dr, Key)。ベースにはトッド・カーンズ、そしてフィルX(G, Vo)、リック・エメット(G, Vo)だ。残念ながらマイク・レヴィン(B, Key)は一番の最年長であり、健康上の問題を抱えている為に欠席。トッドがマイクのベースとヴォーカルはカバー、鍵盤はブレントもカバーしている。

「Time Canon」が流れる中、これまでのロゴやアルバムアートワークと共にメンバー3人がスクリーンに映し出されると、観客が大歓声で迎えた「When the Lights Go Down」から、彼らのサウンドの醍醐味を体感するものとなった。リック自身も歓声の大きさには信じられないような表情を浮かべ、映像演出では様々なメモリアルな場面が登場する。そしてパイロも彼らのステージには欠かせないところだ。ツアーが開幕して3公演目となるこの日は、カナダツアーの初日でもあったが、開幕直後にしてとにかく完成度が高い。これはバンドが本気で臨んでいることを示していると思う。

いま5人でフルにプレイしている事を当時は3人で完成していた上にあれだけのエネルギッシュなステージを見せていたのだから本当に偉業だったと思う。メンバーの負担を考えれば、若手ミュージシャンを加えてこういうステージにする事は個人的には賛成だ。客席には若い層も多く見られたのは、トリビュートアルバム『MAGIC POWER』のリリースやNHLでのプロモーションも大きかったのではないだろうか。

ヒット曲に加え、ジョー・ウォルシュのカヴァー「Rocky Mountain Way」ではギルがフロントに出てヴォーカルを担当していた。トロント公演では序盤からフロントへ出てくる場面もあり、凱旋公演となる事で感情の高ぶりも非常に感じられた。今回の再結成ツアーにおいては、ギルが諦めなかった事も大きかったと聞いている。また「Rock & Roll Machine」では、ブレントのドラムソロに加えて、リックはロックからジャズ、そしてグリーグの「ペールギュント」をギターソロで披露、今も彼のギタリストとしての技術は卓越しているし、終始パワフルなステージングも変わらぬままだった。

終盤、リックが静かに話す場面では、「あの歌が私をここに連れて来てくれたんだ」「これは70代の私に起こりうる最高の出来事のひとつで、本当にファンタスティック!」「みんなが希望を取り戻してくれた、魔法の力だよ」とも言って、「MAGIC POWER」が始まった(感動)。

和解するには時間がかかり過ぎたとも言っている彼らだが、このステージを観れば過去のわだかまりよりも、今ここに居ることが最高だと見せてくれた。欠席のマイクについては、体調によってはベースを持つ機会があるかもしれないとの事。追加の日程も含めて、更なる奇跡も起こるかもしれない。

文・写真◎Sweeet Rock / Aki

<Triumph ~ The Rock & Roll Machine Reloaded 2026~>

2026.4.22 GFL Memorial Gardens, Sault Ste. Marie, ON, Canada
2026.4.24 Scotiabank Arena, Toronto, ON, Canada
1.When the Lights Go Down
2.Somebody’s Out There
3.Spellbound
4.Hold On
5.Allied Forces
6.Blinding Light Show
7.Rock & Roll Machine
8.Rocky Mountain Way (Joe Walsh cover)
9.Never Surrender
10.Lay It on the Line
11.Follow Your Heart (With 24 Hours a Day Into)
12.Magic Power
Encore
13.I Live for the Weekend
14.Fight the Good Fight