【ライブレポート】上木彩矢、20周年記念公演<Return to ZERO>ファイナルが一夜限りの集大成「心臓の鼓動が止まる瞬間まで歌っていられたら」

2026.04.02 18:00

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2025年春にソロ活動を再開した上木彩矢が3月29日、東京・新宿ReNYにて<AYAKAMIKI 20th ANNIVERSARY LIVE “Return to ZERO” 2026>と題した復活ライブを開催した。同ツアーは上木生誕の地でもあり、メジャーデビュー以前からの思い出が詰まっている大阪のライブハウス・hillsパン工場での2DAYS公演からスタートし、東京公演でファイナルを迎えるかたちだ。

2006年のメジャーデビュー以降、リリースされるシングルのほとんどにタイアップがついていたほか、B’z楽曲「ピエロ」のカバーがヒットを記録するなど、上昇気流を描き続けながらシーンを駆け抜けていった上木。その後は、2015年のプロジェクト“UROBOROS”始動や、2017年にギタリストMIYAKOとユニット“SONIC LOVER RECKLESS”を結成するなど、ロックボーカリストとして活動の幅を広げつつ、結婚や出産を経た近年は表立った活動が伝えられてこなかった。

それだけに今春発表された上木彩矢として14年ぶりの新曲「Nonfiction」は衝撃的であり、カリスマ性を増したビジュアル、アグレッシヴなボーカルスタイル、ヘヴィなバンドサウンドには“攻めの姿勢”が感じられた。上木バンドのバンマスを務めるメンバーが、技巧派ギタリストのLedaであることも期待を募らせた。

東京公演は大阪公演とは異なる曲目で上木もMCで言っていた通り、20周年ならではの最初で最後のセットリスト。ライブが進むにつれ、上木と復活を待ち望んでいたファンが14年のブランクを埋めるように一体となる感動的な光景が広がった。

開演時刻の16時、歓声が上がる中、バンドメンバーの中村“マーボー”真行(Dr)、Shoyo (B)、KANATA (Vn, Pf)、Leda (G)が定位置につき、上木は「Nonfiction」のMVと同じ衣装でフラッグを掲げてステージに登場した。

幕開けはメジャーデビューシングル「Communication Break」だ。グラマラスで尖ったR&Rがのっけから会場を盛り上げ、2曲目にして代表曲「ピエロ」を投下するとイントロで大歓声。Ledaのエッジの効いたギターリフに呼応するように上木がシャウトし、スタンドマイクを客席に向けてコール&レスポンス。弦楽器陣がステージ前に出て煽るなど、序盤から攻めのアクトだ。そのエンディングでマイクスタンドを宙高く掲げた上木。その華のあるパフォーマンスにも惹きつけられる。

「この流れ、カンのいいみんなならわかるよね。20周年、この日にしかやらない、最初で最後のセットリストです。楽しんでください」──上木彩矢

続いてTVアニメ『名探偵コナン』エンディングテーマに起用された3rdシングル「もう君だけを離したりはしない」が披露されると早くもシンガロング。あちこちから「上木!」と絶叫する声が上がる。

挨拶に続けて、MCでは「大阪公演に来てくれた人は?」と客席とコミニュケーションを図り、「東京公演では2006年3月15日にデビューした上木彩矢のシングルを中心に披露する」と宣言。実際、ここまでの3曲はリリース順に披露されており、同日はメジャーリリースされたシングル12曲全てが歌われるという一夜限りのセットリストとなった。「やれるのか? ウチらはやれるぜ!」と上木が煽り、空間を共有することを待ちわびていたファンからの頼もしい歓声が場内に響く。

半端ない存在感で独特のハスキーボイスを操る上木が女王なのは言うまでもないが、ステージのスタイルはロックバンドの在り方そのもの。LedaがStrandbergに持ち替えて力強いストロークと細やかな演奏で曲を彩り、KANATAとShoyoが背中合わせのプレイで魅せた1stアルバムのタイトル曲「Secret code」。4thシングル「眠っていた気持ち 眠っていたココロ」ではヘヴィなギターとマーボーの重量感のあるドラムプレイがライブならではの臨場感を演出した。拳が突き上げられる中、上木が大切な人に想いをうまく伝えられないもどかしさを歌い、5thシングル「ミセカケのI Love you」はヴァイオレットカラーの照明の中、バイオリンの優美な音色を活かしたアプローチ。ファルセットも美しい上木の艶のある歌声が場内に響いた。

そして、Ledaの情景を描き出していくような多彩でテクニカルなギターソロ・コーナーを前奏として、ライブは中盤戦に。センターからほぼ動かなかった上木が開放へと舵を切ったのはここからだった。CMソングに起用された6thシングル「明日のために」では両手を広げて笑顔を見せ、“逢いに行きたいんだ”という箇所では膝まづいてファンの顔を見て歌い、Ledaと肩を組む場面も。メンバーともアイコンタクトをとり、チャーミングな側面を見せた。

そんな空気の変化に反応するように女子ファンから「彩矢ちゃん」コールが飛び交い、「懐かしいね。彩矢ちゃんコールありがとう!」と相好を崩す上木。以前なら後半やアンコールに持ってきていた曲たちが前半で歌われるセットリストに「新鮮な感じがしませんか?」と問いかけ、フロアに感想を聞き、前列の女子の顔を見て「泣いてるな」と微笑んだ。

ヒリヒリしたロックはもちろん、ポップチューンやバラードまで歌いこなす表現力と彩り豊かなヴォーカリゼーションも彼女の武器だ。桜色の照明の中、披露された7thシングル「SUNDAY MORNING」ではスイートな歌声で魅了し、青空が似合う8ビートの8thシングル「君去りし誘惑」ではハンドクラップ。

2026年から上木バンドに参加したKANATAがエレクトリックバイオリンで奏でる風雅な旋律のソロ・コーナーを前奏として「Summer Memories」へと移行した中盤では、風が吹いてくるように切なく瑞々しい歌と演奏を届けた。

ロックボーカリスト然としたオーラの奥に、繊細や優しさ、親しみやすさが垣間見えるのも上木の魅力だろう。大阪公演を観に来てくれた人から、「あの当時8歳でしたが、今は30歳です」と言われたという微笑みを誘うエピソードには歴史も感じさせる。さらに、「私も今年41歳になります」と伝えると場内からは「おめでとう!」の声が飛び、「あんたらも歳食ったんやで」と笑わせた。

ライブ後半は3rdアルバムのタイトル曲「Are you Happy Now?」から一気に加速。曲が進むにつれて交わす熱の相乗効果で、解き放たれたように伸びやかにパワフルになっていく上木のボーカルはまさに生(ライブ)ならではのリアリティだ。ゲームソフト『428 〜封鎖された渋谷で〜』(2008年発表)のテーマ曲に起用された10thシングル「世界はそれでも変わりはしない」ではイントロのフェイクも上木らしく、Ledaのテクニカルかつエモーショナルなギターソロに呼応するように身体を折り曲げ、エネルギッシュな歌で圧倒した。

MCでは完全復活を遂げた上木が、未来のことについて触れた。ひとつは前述のゲームソフトのチームが再集結して、20年後となる2028年に渋谷をモチーフにした新たなゲームを発売し、その主題歌を担当することが決まっているということ。そしてもうひとつは、今回のライブのタイトルに込めた上木自身の想いであった。

「上木彩矢はデビューする前、インディーズ時代に2枚ミニアルバムをリリースさせていただいています。「A constellation」というミニアルバム『CONSTELLATION』のタイトル曲は、先日の大阪会場(hillsパン工場)で一番最初に歌いました。それが今回の物語の最初になっております。
 私にとって20周年は一言では言い表せない想いでいっぱいですが、今回のライブタイトルにもなっている<Return to ZERO>は、20年を一つの区切りとしてゼロに帰り、上木彩矢がこの先、50歳になっても60歳になっても70歳になっても、“心臓の鼓動が止まる瞬間まで歌っていられたらいいな”、そして、“またみんなと再会できたらいいな。もう一度歩みを進めていけたらいいな”という願いを込めてつけました。その最初の曲を20周年のスペシャルバージョンでお届けしたいと思います」──上木彩矢

そして届けられたのはKANATAのバイオリンとLedaのアコースティックギターで始まった「A constellation」のアコースティックバージョン。丁寧に愛おしむように紡ぐ上木の歌が染み込んでいく。

ライブ後半には本ツアー初披露のスペシャルな2曲が盛り込まれていた。もう1曲は、コロナ禍で多くの人がストレスやそれぞれの想いを溜め込んでいた時期、配信で繋がった人たちに今の想いを伝えてほしいと上木自身が募集し、ひとりひとりの言葉を繋げて歌詞にしたという音源未発表曲だった。

「“ワンワードでみんなの想いを伝えて”って。その言葉たちを私が繋いで制作した曲です。この20周年のステージに押し出してくれた皆さん、ひとりひとりの想いと言葉です。曲を作曲してくれたのはギタリストのLeda。その曲にバイオリンとピアノで生命を吹き込んでくれたのがKANATA。そして、作詞をしてくれたのは、みんなです」──上木彩矢

上木彩矢 with上木ファミリーというネーミングで紹介された楽曲「P.S Love you」は上木にスポットライトが当たる演出も印象的。未来への希望を繋いでいくような壮大で愛に溢れたバラードが場内を包み込んだ。

「感動ゾーンは終わりよ! 20年経とうが40年経とうが、この命の灯火はバンバンに燃やしていこうと思う!」と煽り、再び場内は一体に。上木のシューティングポーズもクールなロックナンバー「Revolver」ではLedaのギターソロが炸裂。本編は上木のライブでおなじみの「江戸まぼろし」で暴れ倒して、爽快なエンディングを迎えた。

熱が冷めやらない場内に響いたのはアンコールの拍手とファンによる「Nonfiction」の歌声だった。ステージに登場した上木はファンの歌に耳を傾けるジェスチャー。そして、このファンから上木へのサプライズに「みんな100点満点!」と笑顔全開だ。

メンバー紹介を経て、「Nonfiction」は“スマホでの撮影OK”が告げられた。フラッグを掲げ、「ぶち上げていこうぜ! 14年ぶりの新曲!」と煽って投下された同曲は、復活の狼煙を上げるという表現がふさわしいヘヴィでアグレッシヴなナンバーだ。フラッグを背負ってパフォーマンスしながら歌う上木の威風堂々とした姿は、こんな時代だからこそ刺さるはず。ギターソロでの上木のフェイクとLedaのギターがシンクロする瞬間は鳥肌モノだ。

最後の曲は、上木が「私はみんなの顔が見たい! みんなの声が聞きたい!」と叫んだ「W-B-X~W Boiled Extreme〜」。『仮面ライダーW』主題歌として“上木彩矢 w/ TAKUYA(元JUDY AND MARY)”名義で2009年に発売された楽曲だ。同楽曲はステージ左右のスクリーンに映し出された映像と共に届けられた。

「愛してるよ!」と何度も絶叫した上木。すべての演奏を終えると、前述の「W-B-X~W Boiled Extreme〜」の映像について語られた。これは4歳の頃から『仮面ライダーW』の大ファンで、現在特撮の仕事に憧れて勉強中の学生が、今回のライブのための映像を制作することになったという経緯を明かし、その本人である19歳の青年がステージに呼び込まれるシーンもあった。デビュー20周年公演が描いたのは、歩んできた歴史と受け継がれる物語。復活ライブであり“最初で最後のセットリスト”となったこの夜は、ゼロから未来へと繋ぐ光を浮かび上がらせる架け橋でもあった。

取材・文◎山本弘子
撮影◎Unitegraphica

 

■<AYAKAMIKI 20th ANNIVERSARY LIVE “Return to ZERO” 2026>3月29日(日)@東京・新宿ReNY セットリスト
01.Communication Break
02.ピエロ
03.もう君だけを離したりはしない
04.Secret Code
05.眠ってた気持ち眠ってたココロ
06.ミセカケのI Love you
07.明日のために
08.SUNDAY MORNING
09.君去し誘惑
10.Summer Memories
11.Are you happy now?
12.世界はそれでも変わりはしない
13.A constellation
14.P.S Love you
15.Revolver
16.江戸まぼろし
encore
17.Nonfiction
18.W-B-X ~W Boiled Extreme~