【インタビュー】Yukihide “YT” Takiyama、第三弾アルバム『Talkin’ to My Hand』に封じ込めた高次元の完成度「昔のロックを再現したいわけではない」

■必要最小限のトリオ編成によるライブは
■NAGAIさんとGinの存在が心強かった
──3曲目の「Scream!!」はスモーキーなボトルネック奏法が魅力的です。
YT:最初に形になった段階でメロディーラインはあったんですけど、その時はスライドで弾くつもりはなくて、ボーカル曲にするかインスト曲にするか、少し悩みましたね。結果、スライドを試したらハマったという。
──スライドのスモーキーなトーンや表現力に富んだプレイに耳を奪われました。
YT:アルミ製のスライドバーを使っているんですよ。Rocky Mountain Slides Companyという米国のスライドバーブランドが僕のシグネチャーを作ってくれていて、「試しにアルミで作ったから使ってみて」と送ってくれたんです。
──スティール製やガラス製に比較すると柔らかいのでしょうか?
YT:ニュアンスは全然違いますね。ガラス製、スティール製、陶器製とか、いろいろなスライドバーでこの曲を弾いてみたけど、一番しっくりきてスムーズに弾けたのがアルミ製だった。ただの印象論かもしれないけど、音がスッと抜ける感じがして、この曲にぴったり合ったんですよね。
──それにサビ部分ですが、スライドギターとモジュレーション系エフェクトをかけたギターの交互の掛け合いアレンジも光っています。
YT:2本のギターの掛け合いパートは、最初の段階から入れてました。たとえボーカル曲になったとしても、サビは掛け合いにしたいと思っていたので。ただ、両方スライドだとグシャグシャになるので、片方はエフェクティヴに。歌ものの曲でいえば、メインボーカルとバックボーカルのかけ合いみたいなイメージですよね。

──そして「Scream!!」もスライドをフィーチャーしたブルージーな曲ですが、ギターソロでタッピングしていませんか?
YT:うーんと…やっていますね。なぜタッピングしたのかな。
──ブルージーな曲だからソロもレイドバックさせようって思考ではないということですよね。
YT:そういうふうに考えることはないですね。フレーズの流れ的に自然だったんですよ。タッピングしながら高音域へ上がっていったんだと思います。
──YTさんにとってタッピングは特別なものではないということですね。そして4曲目の「CYBERPUNK」は、翳りを帯びたエモーショナルなナンバーで、今作のアクセントになっています。
YT:エモいかどうかは自分では分かりませんが(笑)、こういう曲も好きなんですよ。前アルバム『Next Giant Leap』でも、GOSPELS OF JUDASでもありましたから、やっぱり自分の中のどこかにあるんでしょうね。意図的に作ったわけではないので。

──続いて、『Talkin’ to My Hand』に付属されているライブ映像ですが、2025年1月に東京・池袋 harevutaiで開催された<YUKIHIDE “YT” TAKIYAMA EXCLUSIVE LIVE「NEXT GIANT LEAP」>の模様が完全収録されています。
YT:タイトル通り、2ndアルバム『Next Giant Leap』をフォローする形で行ったライブです。前作は“トリオで演奏できる音楽”もコンセプトのひとつだったんですね。このライブもトリオを前提に、極力トラックを流さずに行いました。トリオは必要最小限のバンド編成ですから、ある意味、音がスカスカになってしまうこともあって、最初は“大丈夫かな”という不安もあったんです。でも、音のすき間を活かすのもいいかというふうに考え方を変えつつ、ベースのGin(Kitagawa)にいろいろアレンジを注文して、いい感じになりましたね。
──Kitagawaさんのベースプレイには衝撃を受けました。バイオリンベースとは思えないファットな音を鳴らされていますし、プレイもユニークですし、歌も上手い。
YT:Ginとはバークリー音楽大学で知り合って、一緒にバンドとかもやってたんですよ。卒業後に彼は日本に戻って作曲家・編曲家としていろいろな活動をしていますが、とにかく当時からベースが上手かった。自分のソロライブのベーシストは彼以外は考えられなかったですね。アルバム『Talkin’ to My Hand』の制作でも彼がアレンジとか作詞を手伝ってくれてますし。
──「Rock the Boat」の作詞クレジットはYTさんとKitagawaさんの共作となってます。
YT:そう。音楽的な面ですごく信用できるんです。私生活は知らないけど(笑)。
──そして、ドラムは氷室京介さんやGLAYのサポートなどで知られるTOSHI NAGAI(永井利光)さん。
YT:NAGAIさんはすごいですよ。僕はライブで歌いながらギターを弾いていると、少し走り気味になってしまうんですけど、NAGAIさんが一緒にいってくれるから走っているように聴こえないんですよ。ひとつだけNAGAIさんに注文したのは「とにかく叩きまくってくれ」ということで、ちゃんと叩きまくってくれました(笑)。NAGAIさんとGinが後ろにいるので、すごく心強かったです。

──YTさんのギタープレイは見どころだらけなのですが、たとえば、テクニカルなプレイを得意とするギタリストは右手をブリッジの辺りに固定して弾くことが多いですが、YTさんは右手がかなりフリーじゃないですか? マニアックな話ですが、右手を浮かしたフォームでなぜこんなに正確なプレイができるのだろう?と不思議に思います。
YT:僕はギターを構える位置が低いこともあって、ブリッジに手を乗せると弾きにくいんです。あと、昔から弦を引っぱたくように弾くんですよ。ずっとそのスタイルでやってきているから、僕の中ではごく自然なことになっていますね。
──ワイルドな弾き方がカッコいいし、だから音も激しいんでしょうね。それに、タッピングも右手でミュートしないのに音がクリアなんですが。
YT:左手でミュートしているんです。使っていない指をどうにか動かしてミュートする。それも無意識のうちに身についたものですね。
──YTさんの凄さは音源でも十分伝わりますが、ライブを観ると一層よく分かります。
YT:自分では反省ばかりですよ(笑)。

──そして機材についてもうかがいたいのですが、アルバム『Talkin’ to My Hand』のギターサウンドはYTさんならではの太いハムバッカーサウンドですね。レコーディングで使用したギターは?
YT:基本的にほとんどすべてギブソンのレスポールカスタムですね。’78年製の黒いレスポールカスタムなんですけど、これが僕の基準となるギターなんです。たとえば、自分のアンプセッティングを決める時は絶対にそのギターで弾きますし、“トーンを少し絞るとこういう音になる”とかも知り尽くしているギターなので、レコーディングでは一番信用してます。50年近く前に作られたギターだから、少しヘタってきているんですけどね(笑)。ピックアップの出力が結構弱まったんですよ。音的にも結構マイルドでいい感じの音になってくれていて、トーンとしてはすごくいい。あと、ギブソンのSGも使っていますね。
──ご自身のInstagramにアップしていたSGですね。
YT:氷室さんからいただいた結構新しいギターなんです。ギブソン・カスタムショップ製で、ボディー構造はメイプルトップ/マホガニーバック。トラ目が透けてみえるトランスペアレント・ブルー・フィニッシュで、一時期少量生産していた珍しいモデルみたいです。スライドする時は、だいたいSGを使ってましたね、少し弦高を上げて。







