【インタビュー】Yukihide “YT” Takiyama、第三弾アルバム『Talkin’ to My Hand』に封じ込めた高次元の完成度「昔のロックを再現したいわけではない」

Yukihide “YT” Takiyamaが4月8日、3rdアルバム『Talkin’ to My Hand』をリリースする。B’zや氷室京介をはじめ、ビッグアーティストのコンポーザー、アレンジャー、ギタリスト、ベーシストとして活躍するYTの最新作の完成だ。
1stアルバム『Tales of a World』や2ndアルバム『Next Giant Leap』同様、3rdアルバム『Talkin’ to My Hand』もYTが作曲、編曲、プロデュースのすべてを手掛ける新曲群を収録した。その音像は素晴らしく、収録された全7曲がレジェンドロックが持つ高揚感と極彩色の疾走感を現代に昇華させたロックソング。インストゥルメンタルは独創性に溢れ、ボーカル曲はあまりにも躍動感に満ちた仕上がりだ。
また、同アルバムには、2025年1月に行われた一夜限りのワンマンライブ<YUKIHIDE “YT” TAKIYAMA EXCLUSIVE LIVE「NEXT GIANT LEAP>より全18曲を完全収録したライブ映像が付属する。卓越した技量を誇るトリオ編成のスリリングな演奏は圧巻だ。
BARKSは、アルバム『Talkin’ to My Hand』収録全曲のサウンド&プレイをはじめ、ステージ機材、ライブ映像が物語る独自的なスタイルなど、YTサウンドのすべてを語ってもらった。

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■とにかく言葉の響きを大事にしている
■歌を楽器的に捉えているというか
──前アルバム『Next Giant Leap』(2024年9月発表)から約1年半ぶりに3rdアルバム『Talkin’ to My Hand』がリリースされます。その間、TMGやB’zのツアー等の参加がありましたが、アルバム制作に入る前は、どんなことを考えていましたか?
YT:『Next Giant Leap』は、新境地へ向かう姿勢をコンセプトにした作品だったんですが、今回はコンセプトのようなものはなかったです。ある程度できた曲の中から完成度の高いものを選んで、その楽曲を詰めていく流れの中で作ったのが、この7曲です。
──1st(『Tales of a World』2023年6月発表)や2ndアルバムと同じく、ボーカル曲とインストゥルメンタル曲で構成された『Talkin’ to My Hand』は曲調の幅広さも印象的です。それも意識したわけではなかったのでしょうか?
YT:自然と曲が揃った感じですね。ロックな曲は日常的に作ってますし、制作のメインはそっちですけど、気分によって違うイメージの曲も結構浮かんでくるんです。それを作り込んでいくとより完成度が高くなったりもするし、結果、気づいたらいろんな曲ができていたという。

──表現したい楽曲がたくさんあることがわかります。ではまず、『Talkin’ to My Hand』のボーカル曲「Talkin’ to My Hand」「Rock the Boat」「Frontier」について聞かせていただきたいのですが、どのように制作されたものですか?
YT:曲作りの段階では、ボーカル曲にするとかインスト曲にするということは意識していないんです。たとえば、2曲目に収録した「Talkin’ to My Hand」も、もともとはインスト曲にもできる形でしたから。この曲はまず、インスト曲としてギターでメロディーを録ったんですけど、ヴァースがしっくりこなかった。“であれば声を入れよう”と思って、初めはもう少しヴァースにメロディーを入れてみたんですけど、メロディアスなものは違うなと。そこから試行錯誤して最終的に今の形になった、という制作過程があるわけです。
──ロックテイストに溢れた「Talkin’ to My Hand」の歌唱法はすごくカッコいいです。「Rock the Boat」のヴァースはトーキングブルースのようなニュアンスですね。
YT:1stや2ndアルバムもそうでしたけど、僕は歌詞の内容よりも、とにかく言葉の響きを大事にしているんです。歌を楽器的に捉えているというか。「Rock the Boat」もそういうスタンスで制作した結果、着地したのがそのヴァースですね。
──洋楽っぽい雰囲気が魅力的です。それに、こういうヴァースをカッコよく歌うのは難しい気がします。
YT:難しいですね。今回のボーカル曲は3曲全て、メロディーではないところは何回録り直したかわからないくらい、いろいろな歌い方を試したんです。歌ってみて、なにか違うなと思ったら一晩置いて、翌日に違うアプローチで歌うということを繰り返しましたから。
──粘り強く向き合ったことがいい結果を生みましたね。「Frontier」はロックとヒップホップを巧みに融合させた1曲で、ラップっぽいヴァースも絶妙です。
YT:イメージ的には、ビースティ・ボーイズとかB-52’sなんですよ。だから、メロディーを歌っているのかラップなのか、よく分からないみたいなアプローチ。まさしく、やりたかったのはロックとヒップホップのミックスですね。
──“YT=ギタリスト”というイメージを持たれている方が多いと思いますが、シンガーとしてのセンスの良さも見逃せません。声質自体がLAの人っぽいと言いますか、魅力的です。
YT:本当ですか? 自分の声には自信を持てないんですよ(笑)。
──YTさんのボーカルは独自のカッコ良さを持っているし、それが開花していることが今作の聴きどころのひとつになっていると思います。独自といえば、『Talkin’ to My Hand』収録曲は’60~’70年代ロック的な方向性ながら、古びたロックというイメージではないこともポイントです。
YT:その辺りはやっぱり考えますよね。個人的には’60~’70年代のギターリフもののロックが好きですし、自分の根底にあるわけですよ。でも、昔のロックを再現したいわけではないので、それをそのままやっても意味がない。“こういう感じの楽曲だったら、こういうサウンドメイクやアレンジがいい”といったアイデアが自分の中にあって、今のロックのカッコ良さを採り入れつつ、それを形にするべく常に試行錯誤してますね。

──続いて、インストゥルメンタルの「Flying Balloon」「Scream!!」「CYBERPUNK」「Heroes on the Ground」についてうかがいます。先ほど「曲作りの段階では、ボーカル曲とかインスト曲ということは意識していない」という話がありましたが。
YT:そうです。最初にだいたいの曲の形を作って、ボーカル曲にするかインスト曲にするかは、制作過程で柔軟に決めています。
──その結果、インスト曲もギターフレーズを歌に置き換えるとボーカル曲になり得るキャッチーさがあって。インストゥルメンタルにあまり馴染みのないリスナーにも聴きやすい仕上がりです。
YT:そう言っていただけると嬉しいですね。僕はだいたい鼻歌でメロディーラインを作るんですよ。だからインストのギターフレーズも口ずさめるものになっているはずですし、“ここは息継ぎポイント”とかも考えて作ってますから。
──なるほど。インスト曲のギターフレーズも、息継ぎの場所がないと聴いている側がしんどくなるという話を聞いたことがあります。
YT:そのとおりだと思います。楽器ですから、メロディーラインをつなげ続けることもできるけど、そうすると耳が疲れてしまうんです。
──それにYTさんはギターを歌わせることが上手い。“インスト曲は歌うようにギターフレーズを弾くことが難しい”と言うギタリストも多いのに。
YT:それは先ほどのヴァースの話と同じで、ギターフレーズもレコーディング時は何度も模索しますよ。録ったテイクを一度聴いて、“ここを修正しよう”とか考えながら、全体のアプローチが見えたら、もう一回最初から終わりまで弾き直す、というレコーディングが普通ですから。一発目からいい感じで弾ければいいんですけど(笑)。
──フィーリング重視のロックアーティストというイメージもYTさんにはあると思いますが、実際はバークリー音楽大学で学んだ理論をお持ちですし、構築すべき部分は綿密に作り込まれているんですよね。
YT:曲は計画を立てながら熟考して作っていますね。
──それでいて、型枠通りに小さくまとまった音楽にならないからすごいです。1曲ずつうかがいますが、アコギ独奏による「Flying Balloon」はネイティヴな空気感が香ります。
YT:ジミー・ペイジ(レッド・ツェッペリン)がよく使う変則チューニングに“DADGAD”ってあるじゃないですか。去年、ゴダンが提供してくださったエレガットを、試しにDADGADで弾いてみたらイマジネーションが湧いてきたという感じでした。
──それで響きに特徴があるんですね。
YT:そうですね。ガットギターとDADGADのチューニングが生んだ曲ですね。







