【ライブレポート】年末恒例<DECEMBER’S CHILDREN>、yonige、w.o.d.、PEDROなど5組が刻んだ現在地「1週間早いけれどクリスマスソングを」

2025.12.22 18:26

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2025年12月17日、東京・恵比寿 LIQUIDROOMにて、音楽事務所ムーヴィング・オンが主催する年末恒例のライブイベント<DECEMBER’S CHILDREN>が開催された。同イベントのオフィシャルレポートをお届けしたい。

ニューカマーを招きながらジャンルの壁を飛び越え、一夜限りのケミストリーを生み出すべく2012年にスタートしたイベントが<DECEMBER’S CHILDREN>だ。iVy、PEDRO、w.o.d.、yonigeの4組に、オープニングアクトを務めたRons weekを加えた全5組が出演した今回は、2025年を締めくくり、それぞれの現在地を確認するようなライブが繰り広げられた。

【Rons week】

Rons week

オープニングアクトとして登場したのは、2020年7月に結成された2人組ユニット・Rons week。開幕の号砲として鳴らされた「Buddy」から、アンニュイな質感を携えたHonamiの歌唱と、ミドルハイの親しみやすさが特徴的なMasamiの歌声が共鳴し合っていく。

柔らかなクラップが会場を満たす中、最後に披露された「Stay with me」の“Stay with me now”というラインは、共に今宵を至極のものにしていくための約束であり、おまじないみたいな響きを備えていた。

【iVy】

iVy

一軒家の輪郭をなぞるように配されたライトがふわりと光る中、「ホワイト・リバー・ジャンクション」でiVyのアクトが幕を上げた。タフで存在感を放つようになったfuki(G, Vo)の歌声は即座に会場へ染み渡っていくのだが、やはりiVyをiVyたらしめているのは、吐き出したロングトーンをひと息で回収するみたいな唱法や数行のポエトリーリーディングを筆頭とする、悲劇をその声に抱え込んだ歌唱なのだろう。そして、そんなボーカリゼーションは“君の声も指も嘘も足も歌も いらない”なんてリリックと連動しながら、今にも終わってしまいそうな世紀末を描き出していくのだ。

であるならば、バグさながらにウォンウォンとハウリングが唸ったのち、クラシカルなメロディが流れた「any n○ise」や、エンディングを彩った「kirakirakiller」は、そんな世界で踊り明かすpupu(Key, Vo)とfukiの姿を表しているよう。共依存的な関係に脳内でアラートを鳴らし続けたり、脱意味的な歌詞世界で“今日は NEONしたい!”と明朗快活に伝えてみたりする2人は、我々に“ねぇ遊ぼうよ”と問いかけるようだった。

【PEDRO】

PEDRO

「PEDROです。よろしくどうぞ!」と元気いっぱいに走り出したPEDROは、“ありのままの僕で叫び続けるよ もう君が悲しみに暮れないでいいように”と現在の命題を歌い上げる「1999」でキックオフ。冒頭のパートで自虐を積み上げていくアユニ・D(B, Vo)は、決して自分の無力さに絶望しているわけではなく、どこか晴れ晴れとした表情を浮かべており、なさけなさもだらしなさもを受け入れる決意を固めたことが窺える。それは続く「ZAWAMEKI IN MY HEART」で放られた“くだばるまで とことん生きてみようよ!”という絶叫からも、取り憑かれたみたいに頭を掻きむしりながら届けた「清く、正しく」の“私は私を調えたい”という決心からも明白。

2025年を振り返ったのち「拝啓、僕へ」をドロップしたことからも読み解けるように、彼らにとって初期衝動を詰め込み直したEP『ちっぽけな夜明け』の存在は大きかったのだろう。とことん生きる。完全無欠のヒーローである必要なんて気づいた彼らのステージは、この一言を具現化していたのだ。

【w.o.d.】

w.o.d.

4番手のw.o.d.がこの日改めて見せつけたのは、2024年10月にドロップしたメジャー1stアルバム以降顕著である音楽性の拡大と深化であった。

「カッコいいギターから始めます」とプレイした「STARS」や「1994」を筆頭に、凶暴なリズム隊と土煙を巻き上げるギター、ロマンチシズムを垂らした歌詞が三位一体となって次から次に飛来する最中、彼らはオープニングナンバーに「TOKYO CALLING」を、ラストに「My Generetion」を配置。グリッチノイズにも似た電子音がぐにゃりと視界を回転させ、5つ打ちからビートが変容していく前者も、繰り返される“Ok Alright now”で最終行へブーストしていく後者も、ストイックで無骨なロックバンド像をビビッドに刷新していく。これでもかと飛び跳ねるフロアを染め上げていた虹色のライト。それは彼らがフィルム写真のようなセピアカラーやモノトーンに留まらないバンドへ、脱皮を続けていると裏付けていたのである。

【yonige】

yonige

「LIQUIDROOMいけますか!」と軽やかに誘った「Super Express」から「アボカド」を連ねたライブ冒頭で、良い47都道府県ツアーを回ってきたのだと思い知らされた。誤解を恐れずに記せば、決してyonigeはエネルギーを外へと放射していくバンドではなかったし、「アボカド」が形成したパブリックイメージから逃れたがっていたように思う。しかし、現在の彼らは至極当然のことして観客をアジテーションし、「愛しあって」が生まれ落ちるまで封印されていたラブソングたちを躊躇いなしにやってのけている。この変化の背景には、2024年1月に世へ放ったアルバム『Empire』があり、先日終えたばかりのドサ回りがあり、これまで以上にライブを重ねていく中で自然と発生していった4人の連帯感が横たわっているのだろう。

「1週間早いけれど、クリスマスソングを」と投下した「メリークリスマスイヴ」は、ツリーを片付ける時の名残惜しさや散らかった包装紙を眺める祭りの後の喪失感に目を向け、“雪は降らない今日は メリークリスマスイヴ”と締めくくる1曲だ。ホワイトクリスマスでもないし、12月25日当日でもない1日を捉えたこの楽曲には、決して特別ではない日を淡々と書き起こしてきたyonigeのペン遣いが深く息づいているよう。そして、その書きっぷりは本編最後に据えられた「さよならプリズナー」にも通底しているもの。何でもあると何にもないを往復しながら君の不在を浮き彫りにし、<DECEMBER’S CHILDREN>のゴールテープを切った。

取材・文◎横堀つばさ
撮影◎河本悠貴

 

■<DECEMBER’S CHILDREN>2025年12月17日(水)@東京・恵比寿 LIQUIDROOM セットリスト
【Rons week】
01 Buddy
02 RAW
03 ほろ酔いくらいが丁度いい
04 Stay with me
05 SE
【iVy】
01 ホワイトリバージャンクション
02 tea time mytery!!
03 ユーガッタメール
04 any n◯ise
05 クラスルーム
06 pupu6
07 kirakira killer
08 SCF空蝉
【PEDRO】
01 1999
02 ZAWAMEKI IN MY HEART
03 清く、正しく
04 万々歳
05 グリーンハイツ
06 拝啓、僕へ
07 春夏秋冬
08 いたいのとんでけ
09 吸って、吐いて
【w.o.d.】
01 TOKYO CALLING
02 イカロス
03 1994
04 あばく
05 2024
06 あらしのよるに
07 STARS
08 楽園
09 踊る阿呆に見る阿呆
10 My Generation
【yonige】
01 Super Express
02 アボカド
03 DRIVE
04 愛し合って
05 メリークリスマスイヴ
06 沙希
07 対岸の彼女
08 バッドエンド週末
09 スクールカースト
10 さよならプリズナー
encore
en1 さよならアイデンティティー

 

関連リンク
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