【インタビュー】超学生、2ndフルアルバム『アンフィテアトルム』発売「これを経て表現も変わっていくといいなと」

超学生の2ndフルアルバム『アンフィテアトルム』が完成した。
約2年8ヶ月ぶりのフルアルバムとなる同作にはこれまでリリースされた5曲のデジタルシングルに、先行リリースされたTVアニメ『桃源暗鬼』第二クール・練馬編のOP主題歌「阿弥陀籤」を含む新曲6曲を収録している。新曲は超学生自身が制作した楽曲をはじめ、原口沙輔、弌誠、宮守文学といった著名クリエイター、エレクトロ・スウィングの楽曲制作を得意とするトラックメイカー/ダンサーのzensenが参加するなど、超学生が惚れ込む音楽を追求した作品となった。
2025年に行った超学生のインタビューは、超学生初の作詞作曲楽曲「アイラブインターネット」、ソングライターであるチバニャンとの対談「しゅきしゅきメイドマスカレイド」に続き今回が3本目となる。これまでのインタビューの流れを踏まえ、8月31日から全国5ヶ所を回った初のホールワンマンツアー<音欲の秋>の話題を入り口に、最新作の根幹を探った。
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◼︎展覧会を回るようなイメージで決めていった
──2ndフルアルバム『アンフィテアトルム』、超学生さんだからこそ作れたアルバムだと感じました。
超学生:なかなかやれないことをたくさんさせてもらえたので、うれしいですね。いろんな作家さんに入っていただいたので、曲調に統一感がありながらも多彩で、こんなに豪華なアルバムはすごいなと自分でも思います。
──超学生さんの人間味が出たアルバムだとも思います。リリース前に開催した全国ホールワンマンツアー<音欲の秋>もそういう内容になったのではないでしょうか。東京公演にお邪魔したところ、MCで同ツアーについて「僕の正直な音楽をぶつけることを目標に取り組んだ」とおっしゃっていました。
超学生:<音欲の秋>は各地でセットリストを変えながらも、根本の伝えたいことや、やりたい表現は一貫していたんですよね。いろいろ考えた末の現段階での最適解と最高傑作を全公演全力でやることに集中しました。僕の思う“正直さ”は、ごまかしのきかない部分をどんどん増やしていくことだと思っているんです。クオリティをキープしつつ、クールに決めるべきところは決めつつも、今回は泥くさくやってみました。メジャーデビュー以降で世界観を突き詰めたライブや表現は結構な量をやらせてもらったので、一旦人間味を出してみようかなと。
──「今までやってこなかったこういうことも試してみようかな」というような。
超学生:そうですね。超学生が人間味を出すことを重んじるようになったというよりは、<Lucky Fes 2025>やいろんなイベントに出させてもらったりして、今後ライブをどんどんやっていくならそういう要素に挑戦する必要があるなと、通過点としてやっているだけというか。衣装や照明とか視覚的な要素で着飾っていただいているぶん、僕は人間性全出しでやってみようかなという意味での“正直な音楽”です。それまでは「みんな僕の人間性にはあんまり興味ないだろうな」と思って活動していたところも正直あって。
──以前もそれに近いことをおっしゃっていましたよね。インターネットやSNS文化はまず楽曲がフィーチャーされることが多いので、超学生さんがそう思うのも自然なことかもしれません。
超学生:だからこそライブも音楽に集中してもらえるような、楽曲の世界観を研ぎ澄ましていくような作りにしていたんです。けど去年以降いろんな方のライブを観に行って「ライブはこんなにフレキシブルでいいんだな」とたくさん学ばせてもらったので、僕も1回それをやってみようと。
──実際にやってみて、いかがでしたか?
超学生:やってよかったですね。それまでのライブの感想は「歌が良かった」「演出が良かった」がほとんどだったんです。今回はそれにプラスして僕の音楽への思いを受け取ってくれた方や、今後の展望をお伝えしたのもあって「そこに行けるように応援したい」と強く思ってくださった方がたくさんいらっしゃったんですよね。普段の配信やラジオ、SNSでは言えないこともだいぶ正直に話せたので、MCを入れて良かったです。
──インターネットの場が日常の超学生さんでも、人の顔を直接見ないと言えないことがあるということでしょうか。
超学生:インターネットでの発信は音声や文字だけがほとんどなので、いきなり思いを伝えてもなかなか受け取りにくいときもある気がするんです。ライブは音楽をたくさん浴びたうえでMCを聞けたり、皆さんがMCで(アーティスト側の)思いを受け取った後にこちらから音楽を届けられるので、音楽と一緒に順序立てて気持ちを伝えられるんですよね。
──ライブもものづくりのように捉えてらっしゃるんですね。
超学生:途中のコーナーは生配信みたいなことを取り入れたりして、普段文字でもらうコメントを声で直接リアルタイムでもらったりもして、新しい体験でした。要望を叶えるためにスタッフさんにも協力していただいて、今回もいろんなわがままをたくさん聞いてもらったので、なるべく完璧にこなせるように、でも自由さを大切にして思いついたことはどんどんやっていきました。そのために練習や準備に全力で取り組みましたね。

──その<音欲の秋>と、『アンフィテアトルム』がつながる気がしたんですよね。「永久アンフィテアトルへようこそ」はライブを彷彿とさせましたし、この曲を筆頭にアルバムの前半にはライブの空間が思い浮かぶ楽曲が集中しているように受け取れて。
超学生:なるほど。それは全然意識していなかったです。言われてみると、3曲目の「CLAPTRAP」もクラップができるし、ライブを牽引していくカリスマ性や絶対王政の暴君みたいなものを感じさせますよね。「pa pa pa」もコール&レスポンスできるところがありますし、「阿弥陀籤」然り音作りの生命力や歌の生々しさ、野生味みたいなものを感じる曲が前半は多いですね。
──中盤の「CGS」がリアルとファンタジーの潮目で、その次の「ファンデモーニカ」がiPhoneの録画ボタンの音から始まるので、ここからディープなデジタルの世界に沈んでいって、最後に「アイラブインターネット」という混沌で終わるイメージというか。
超学生:言われてみるとそんな感じがします。もしかしたら無意識下で、僕の中にジャンル分けとかがあったかもしれない。最後の曲は「アイラブインターネット」にしたいなとは思っていたんですけど、1曲1曲が結構なパワーを持っているので「この順番で来てくれたらうれしいな」みたいな、展覧会を回るようなイメージで決めていったんです。だから曲順に特別な意味はないんですよね。
──そのなかでも「永久アンフィテアトルへようこそ」はいいオープニングになったのではないでしょうか。
超学生:この曲はまず原口沙輔さんに楽曲制作の依頼をして、どんな楽曲にするかのミーティングを開いたんですが、僕は「原口さんのエレクトロ・スウィングが聴きたいです」とお願いをして……それで原口さんを悩ませてしまったんですけど(笑)。
──確かに原口さんにエレクトロ・スウィングのイメージはあまりありませんね。
超学生:全然作れると思うんですけど、エレクトロ・スウィングをいろいろとやってきた超学生への書き下ろし楽曲に、超学生が求めているであろう原口沙輔像をどういうふうに入れるかを考えてくださったんじゃないかなって。結果「超学生はこういうの好きでしょ」っていうポイントをいっぱい入れてくださっているし、歌いやすいものにしてくださったなと感じますね。僕は僕で原口さんから「超学生として成し遂げたい最終的な目標はありますか?」と訊かれて、数週間ほどお時間をいただいたんです。それで出た答えがミュージカルの『CATS』のようなものだったんですよね。
──BARKS初登場のインタビューで、ミュージカルは超学生さんのルーツのひとつであり、いつかそれに近しいステージを作りたい旨を語っていましたね。
超学生:一番好きで影響を受けているミュージカルが『CATS』なんです。東京公演では専用のシアターを作って演目をやっていて、まさに『CATS』のためだけの空間に入り込めたんですよね。自分の好きな世界観、表現したい世界観で埋め尽くされたステージを最終的にやりたいですと話して、そこから着想を得て“アンフィテアトルム”をテーマに書いてくださったんだと思います。
──だからライブを彷彿とさせる内容の楽曲になっていると。“アンフィテアトルム”とはコロッセオのような、古代ローマにおいて剣闘士競技などの見世物が行われた円形劇場を指す言葉です。
超学生:あとこの曲にはインターネット感もあると思っていますね。原口さんはまさに今のインターネットカルチャーを背負っている方ですし、僕はインターネットに対してみんなが銃口を向け合っているようなイメージをずっと持っているんです。僕が活動者側だからというのもあって、主役が真ん中にいて、それを取り囲んでいる人たちがいいことも悪いことも好きなように言いながら主役の言動やパフォーマンスに注視するイメージが強くあったので、インターネットはコロッセオみたいなものかもしれないなと思っていますね。
──となるとインターネットの場とライブという現実の場は別物のようでいて、重なるところも多いのかもしれません。
超学生:僕が超学生として活動を始めたのは11歳からなので、人生の半分以上を超学生として過ごしているんですよね。だからインターネットは僕にとって現実でもあるんです。
──ご自身が作詞作曲をした「CGS」も、まさにそういう楽曲ではないでしょうか? 「アイラブインターネット」と近い精神性を感じましたが、よりさらけ出している印象を受けました。
超学生:「CGS」は「アイラブインターネット」よりも前に作った曲なので、荒削りであるがゆえに素直で生々しい曲になっているんです。それをESME MORIさんが編曲で美しくまとめ上げてくださっています。インターネット男と現実ひとりぼっち男が同居しているような曲になりましたね。特に歌詞は表現を工夫していない、というかできなかったところが多いから、技術が上がってくると今後はこういうことができなくなるんだろうなと思って。だからそういう曲を残しておいたほうがいいかなって、記念に入れました。







