【インタビュー】ASH DA HERO、ギターレスのミクスチャーロックバンドが完全無欠な理由「海の向こうを沸かせてきた俺たちの自信たっぷりな現在進行形」

■ロックバンドとラッパーを
■サンプリングで表現したのが心憎い
──3rdフルアルバム『HYPERBEAT』は、まさしく別バンドに進化を遂げたASH DA HEROが詰め込まれた作品になりました。制作時に掲げていたコンセプトはありましたか?
ASH:まず一つは、この4人がギターレス体制で鳴らす名刺代わりの1枚を作るべきだ、というのが根幹にありました。あと、このアルバムを作ろうと着手したのが去年末か今年頭ぐらいだったんですけど。昨年秋、4人になった瞬間から毎月のように海外でライブをやっていて。“このビートは海外の人はのらない”とか“このタイプの曲は日本とは効力が全然違う”ってことを感じながら帰ってきて。“これならのるだろう”とか“このビートなら踊るだろう”っていうサウンドを模索しながら新しい曲を作っていたのが、このアルバムに活かされていると思う。
──なるほど。
ASH:これはボーカリストだから余計に感じることなんですけど、魂込めて、死ぬ思いで作った曲が、言語のせいで伝わらないんですよ。ステージから刺さらない歌を歌う悲しさったらない。だから、俺たちのフィロソフィー、俺たちのアイデンティティー、俺たちのイデオロギーを国内外の人間に同時に伝えるためにはどうするべきかっていうのを考えて。結果、作詞やメロディーの選び方はかなり意識を変えて、クリエイティヴを始めたんです。

──世界と対峙しているわけですね。
ASH:なので、言語、文化、そういうものを超えるアルバムですよね。めちゃくちゃカッコいい言い方をすると世界標準。ワールドスタンダードなアルバムを日本語を主体として作る。メイドインジャパンなバンドなんで、そこを誇りに持ちつつ、それを意識して作ったのがこのアルバムです。
──だから『HYPERBEAT』というタイトルなんですね。国境を超越したビート。
ASH:例えば、海外で日本産アニメのアニソンカバーをやると、みんな歌うんですよ。どんな日本の名曲よりも浸透力が高い。しかも、歌詞も咀嚼した上で聴いてて盛り上がってる、という景色が間違いなくそこにはあって。それを肌で感じて、なるほどなと思ったんです。
──伝える方法は、なにかしらあるぞと。
ASH:そうです。知名度っていうところではまだまだだし、ワールドアンセムを持ってない僕たちだからこそ、どうやって戦っていけばいいのか。自分たちがまず一つ扉を開いて、土壌を作っていくことが必要だと思ったんですよね。その意識がこのアルバムに繋がっていった感じです。
──結果、どんな作品ができたと感じていますか?
WANI:カッコいいアルバムです。

──WANIさんにとって思い入れが深い曲は?
WANI:全部ですけど、個人的には……いや、むずいな。
ASH:分かる。全部いい曲だからな。
WANI:うん、全部いい。そのなかで敢えて選ぶなら「倍返し (feat.ラッパ我リヤ)」。自分が青春時代に聴いていたんでね、ラッパ我リヤは。Dragon Ashの「Deep Impact feat.ラッパ我リヤ」とか歌詞もいまでも憶えてるぐらい、めちゃくちゃ歌ってたし流行ってたんで。その方々と今、自分たちがフィーチャリングで一緒にやれるって、もう本当に嬉しいしかなくて。コラボするって話を聞いたときは“マジか!?”と思って。他人事みたいに“すげぇ!”ってなりました。
──令和版「Deep Impact」になったら嬉しいですね。
WANI:いや、ほんとです。<NEW HORIZON FEST 2025>のステージにゲスト出演してくれたとき、ライブで初めて一緒にやったんですけど、“Mr. Qさんの声だ! 山田マンがラップしてる!”って、当時聴いてた声が耳元で鳴ってることに感動しすぎて、誰よりもテンション上がってた(笑)。
──<LuckyFes’25>のステージも大盛り上がりでした。ASHさんにとって思い入れ深い曲は?
ASH:めちゃくちゃ難しいな。子どもみたいなものなので、全曲好きだから。難しいけど、個人的には国内と海外に向けて、というのを両方兼ね備えてる「SAMURAI WAY」ですかね。これはもう勝手に『FIFAワールドカップ 26』の日本代表応援ソングを作りたいと思って書きました。
──来年開催予定のサッカー北中米W杯ですね。
ASH:「サビは“SAMURAI WAY!”ってどうかな? いいよね!」って、アメリカのサンディエゴのコテージでみんなで生活してるときに飯食いながら話して。
──アメリカで共同生活?
ASH:そのときは、主にDhalsimがパスタを作ってくれてたんだけど、旨いんすよ!
Dhalsim:めちゃくちゃ好評でした(笑)。
ASH:ははは。その翌日には“SAMURAI WAY!”ってみんなが普通に歌ってたからね(笑)。“これはキャッチーなんだ。ライブアンセムになるな”と思って、帰国したらすぐに録ろうってことになりました。
──サムライだからか、刀の音が入ってますよね。
ASH:はい。サビが決まった瞬間にいい刀の音ないかな?って探して入れました。
──しかもこの“SAMURAI WAY!”と歌っているサビ、“サムライ”って言ってるのに、英語フレーズのようにも聞えるんですよね。
ASH:日本語なんだけど日本語っぽく聴かせない。
──言語を超える扉を一つ開けた例ですか?
ASH:そうですね。言葉は語感を考えて選びました。
──ぜひとも『FIFAワールドカップ 26』の日本代表応援ソングにしたいですね。
ASH:はい。まだ決まってないと思うので使ってほしいです。日本代表の応援アンバサダーとしても頑張りたい、という気持ちです。

──では、Dhalsimさんの思い入れの深い曲は?
Dhalsim:「Supercritical (feat. GASHIMA)」ですね。「倍返し (feat.ラッパ我リヤ)」もそうなんですけど、ちゃんと音源をサンプリングして、ヒップホップマナーに則って曲を作ってるんです。それをギターレスのミクスチャーロックに融合させたのは、世界でも初だろうなって。2010年以降からサンプリング文化がどんどん廃れて、打ち込みに移行していったんですよ。ネタ元の許可を取るのも面倒だし、勝手に使用して訴訟になったら大変だから。そんななかで、今この時代にもう一回、しっかりとサンプリングで曲を作ったところが、個人的には胸アツ。やっぱりサンプリングっていいよなって。サンプリングでしか出せない質感があるので。
ASH:GAKU MCさんが褒めてくれてたよ、この曲のスクラッチを。
Dhalsim:あー、よかった! 嬉しい。
ASH:「あのスクラッチのネタってPublic Enemy?」ってLINEがきて。
Dhalsim:そう! Public Enemy。ちょうど曲を作るときに、GASHIMAさんと「Public Enemy、いいね」って話をしてたから「あ! これ合うかも。絶対使おう」って決めてました。
ASH:面白いのは、ヒップホップのサンプリングマナーに則りつつも、Dhalsimはヘッズ(ヒップホップ文化に深く傾倒したコミュニティに属する人)だから、ちゃんと“Supercritical”の意味を咀嚼して、ロックバンドとラッパーがやってるっていうことをサンプリングで表現したのが心憎い。Public Enemyは、ラッパーがロックバンドをサンプリングしてたグループじゃないですか。その逆をやってる俺たちにPublic Enemyを重ねてきたDhalsimのセンスが、分かってるな!って感じ。
Dhalsim:そこはすごい狙ったところなんです。
ASH:いまDhalsimのシステムはコックピットみたいになってますし。
Dhalsim:ギターレスの新体制として急ハンドルを切ってからは、ずっと戦いでした。







