【インタビュー】SIAMSOPHIA、栄喜が語る30年間の情熱と感謝「最後は自分を一番出せるセットリストでいきたい」

2025.10.03 17:00

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■リスペクトというよりも、ヤバい男
■今はそう思ってますよ(笑)

──では、<1995 SIAM SOPHIA-G>でのお客さんの大きな反応をどう受け止めました?

栄喜:まず、SOPHIAのお客さんが僕らを受け入れてくれたことが、なによりも嬉しかったです。だって、あんなに無数のペンライトのなかで歌うことなんて、僕は一生体験できないと思ってましたから。ジャニーズ(STARTO ENTERTAINMENT)とかK-POPとか、そっち側の人がやるものだと思ってたんですよ。僕らグッズとしてペンライトを作っても、買ってくれたファンの人たちが使ってくれなかったぐらいだから(笑)。ウチのお客さんはこういうのイヤなんだろうなと思ってたんですよ。でも、あの日はペンライトのなかで歌えて、“おぉ~、こういう感じなんだ。俺がもっとイケメンでジャニーズに入ってたらこういう感じのところで歌えてたんだな”ってちょっと思いましたよ。

──フロアではSOPHIAns(SOPHIAのファン)が、SIAM SHADEファンの方にペンライトを貸してあげるような光景もあったようですよ。

栄喜:だからもう、完全にSOPHIAが一緒にやってくれたからこそ、僕らがまったく持ってないものを体験できたという感じです。これが普通の対バンだったら、ああはなってないだろうし。対バン相手のお客さんが全然のってくれないこともあるわけじゃないですか。

──興味のない対バン相手は座ったまま観ているだけとか。

栄喜:そうそう。でも今回は、昔からの仲間がここで初めて一緒にやることの意味を、お客さんも事前に知ってくれていたから。あの日はファン同士が一緒に手を取り合って楽しんでくれてたんだと思うんです。そのなかで、俺らにもペンライトを振ってくれたんですよね。だから、そもそも普通の対バンとは違ったわけで。

──そこは、栄喜さんと松岡さんの深いつながりがあってこそですよね。

栄喜:やっぱり俺は松ちゃんのことをすごくリスペクトしてますから、それがあって成立したライブなのかなとは思ってます。リスペクトがない人に「こんなことやろうと思ってるから、栄喜もやってくれ」って言われても、「そんなのやりたくねぇよ、俺」ってなっちゃうだろうから。でも、「松ちゃんが言うなら俺、なんでもやるよ」って気持ちになるんですよね。

──松岡さんの栄喜さんに対する信頼もありますし。

栄喜:こっちは呼ばれてるほうだから、「自由にやっていいよ。好きにやって」と言ってもらっても、“勝手にステージから客席へ降りちゃったりしても大丈夫かな?”とか思うんですよ、一応俺もバカじゃないんで気は遣いますから(笑)。だけど、やっちゃいました。本当に自由にやって楽しめましたね。

──栄喜さんが序盤から自由にはっちゃけていたところが、あの日の会場の盛り上がりにつながっていったと思います。

栄喜:ああいう風に頑張れるのもリスペクトがあるからなんですけど、実はあれからまた、リスペクトが深まったんですよ。あの後、松ちゃん主演のミュージカルを観て、本当にすごい人だなと思いました。デカすぎて前が見えない(笑)。

──栄喜さんも十分大きいですけど。

栄喜:いや、バイタリティーがすごいんですよ。さっきも明日のスケジュールを聞いたら、「地方に行って、4社の方々と2時間ずつ話をする」と言ってたんですけど、素人相手に司会もなしにトークするらしくて。鬼だなと思いましたよ(笑)。松ちゃんはもちろんロックミュージシャンですけど、ポップアーティストでもあり、タレントでもあり、俳優でもある。どんなジャンルに対しても中途半端なところが一切ない。そこがすごいなと改めて思いました。

──栄喜さんも舞台経験は?

栄喜:俺も一度やったことがあるんですよ。初めてだったから、まったくできなかったんですけどね。そのときは、RYUICHI(LUNA SEA)君、ダイヤモンド☆ユカイ君、175RのSHOGOとか、いろんなミュージシャンが集まっての舞台(『まほろばかなた-長州志士の目指した場所-』)だったんですけど、松ちゃんが出演したのはもっと本格的な主演舞台ですから。

──ミュージカル『LAZARUS-ラザルス』のことですね。

栄喜:そう。役者の人たちもものすごく上手い人たちが集ってて。あの人の楽曲をフィーチャーした…。

──デヴィッド・ボウイですね(デヴィッド・ボウイ最後のアルバム『★(ブラックスター)』と同時期に制作され、遺作ともなったミュージカル)。

栄喜:僕、デヴィッド・ボウイはまったく通ってないんですよ。デビッド伊藤しか分からない(笑)。だから、松ちゃんの舞台を観ててもちょっと内容はよく分からなかったんですけどね。2~3曲知ってるぐらいだったんです。

──そうなんですね。

栄喜:LUNA SEAのRYUICHI君も松ちゃんもデヴィッド・ボウイが好きだから、二人ともよく俺にデヴィッド・ボウイの話をするんですよ。その都度「俺、デヴィッド・ボウイ通ってないんです」って言うんですけど、何度も俺に話してくるんです(笑)。「デヴィッド・ボウイのあれ知ってるよね?」ってRYUICHI君が言うたびに、「ボス、前にも言いましたけど、俺、デヴィッド・ボウイ通ってないんですよ」って返すんですけど…このクダりをしょっちゅうやってるんですね。すぐ忘れちゃうんですよ、ボスは(笑)。

──ははは。『LAZARUS-ラザルス』を観ていかがでした?

栄喜:驚いたのが、全曲英語詞を発音もバッチリに歌ってたんですよ。SOPHIAには英語詞の曲ってあまりないじゃないですか、でもすごかったです。俺、SIAM SHADE時代に英語の先生に教えてもらってたんですよ。「違う」「そうじゃない」「もっとこうして」ってすごく言われながら歌ってたのに、全然上手くならなかった(笑)。だけど、松ちゃんは本当に上手くてビックリしました。

──バンドと同じ熱量で舞台にも取り組んでいるということでしょうね。

栄喜:TVのバラエティー番組に出演するときのタレント業にしてもそうですよ。とにかく全部が全力なんですよ。“この人、怪物だな”と思いました。だからもうリスペクトというよりも、ヤバい男(笑)。今はそう思ってますよ。

──栄喜さんの全力魂にも火が点いたのでは?

栄喜:そう。“俺ももっとやろう。こんなことしてたらダメだ”って思っちゃいました。俺は松ちゃんと違って、音楽以外の表舞台に出ていくことは好きじゃないんですよ。であれば、“もっとさらにカッコいい曲を作るしかないじゃん”って。そのおかげで最近はずっと家にこもってるんです、カッコいい曲を作るために。

──新曲作りですね。

栄喜:次のソロアルバムの曲を作ってるんですけど、自分のハードルを上げたがゆえに、作業が一向に進まない(笑)。でもね、自分は松ちゃんみたいなバイタリティーはないし、同じ事はできないけど、音楽とか曲作りで喧嘩しなくちゃいけないって思ってるから。いい刺激になってることは確かです。