【インタビュー】locofrank、7年ぶり8thフルアルバム『Resound』の意義深い革新度「しんどくてもええから笑いながら走り抜けたい」

2025.09.29 21:00

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locofrankが9月3日、8枚目のフルアルバム『Resound』をリリースした。オリジナルアルバムとしては前作『Stories』以来7年ぶり、2022年5月の横川慎太郎加入以降の現体制としては初のフルアルバムの完成だ。収録された全13曲は、locofrankならではの疾走感と緊張感と哀愁漂うメロディーが中核を貫くナンバーに加え、コーラスやシンガロングを誘発する新機軸まで、メロディックパンクを土台として新たな側面も変わらぬ本質も詰め込まれた仕上がりだ。

2022年リリースのミニアルバム『READY?』、2023年リリースの25周年記念ライブ会場限定CD『25』、2024年リリースのlocofrank × HAWAIIAN6 × dustbox名義によるスプリットアルバム『THE ANTHEMS』などを経て、さらに強固となったバンドに加え、メンバー全員が作詞作曲を務めることで多彩さを増したサウンドは、広がりながらもまるで隙がない。

“Resound”という言葉は“響きわたる”という意味を持つ。「いろんな人に聴いてもらいたい。広げたい」という気持ちを込めたアルバム『Resound』について、木下正行(B, Vo)、森勇介(G, Cho)、横川慎太郎(Dr)に訊いたロングインタビューをお届けしたい。なお、locofrankは10月3日の大阪 Yogibo HOLY MOUNTAIN公演を皮切りに、全40公演のロングツアー<Reasound Tour 2025-2026>を開催する。

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■3人が曲を持ち寄ったフルアルバムは初
■手応えが今までで一番大きかった

──コロナ禍や前ドラマーの脱退、新ドラマー横川さんの加入、2022年7月には新体制初のミニアルバム『READY?』リリース、2024年4月にはHAWAIIAN6、dustbox、locofrankによるスプリットアルバム『THE LAST ANTHEMS』リリースなどもありましたが、新作『Resound』は7年ぶりのフルアルバム。遂にきた、という感があります。

木下:ずっとフルアルバムを出したい気持ちはあったんですけど、いきなりフルとはならなくて。この3人で「MOTION」(『READY?』収録)をまず作って、会場限定CDシングル『25』、『THE LAST ANTHEMS』を経て、フルアルバムを出したいな、と。

森:あと、そろそろフルアルバムを出さないとゴウさん(IKKI NOT DEADレーベルスタッフ)に怒られるなって(一同笑)。

──『THE LAST ANTHEMS』ではメンバーそれぞれが1曲ずつ持ち寄った形になってましたよね。その制作スタイルは継続してたんですか?

木下:いや、オレが作れたらよかったんやけど、全然できへんくて。横川くんがしびれを切らして、持ってきたりもしてました(笑)。

横川:そういうわけじゃないんですけど(笑)。『25』や『THE LAST ANTHEMS』で「よこしん(横川)のバックボーンが見える曲も聴いてみたいな」と言われてたりもしたから、自分の好きなテイストを活かして作っていった感じでしたね。

──もちろんこれまで通り、(森)勇介さんも曲を持ち込んで完成した新作が『Resound』。“Re”とつきますし、自分たちのサウンドを再定義したという印象も受けました。そこは当初から考えていたんですか?

木下:たまたまって言ったら、たまたまになるのかな。“再び”とか“もう一度”みたいなテーマでって、みんなで曲を持ち寄ったわけでもないし。蓋を開けてみたら、よこしんという新しい風や勇介が率直に出した“今やりたいこと”も合わさって、新しくこの3人だから生まれたものになったんかな。

──そういったところから、このタイトルが導かれたような。

木下:タイトルは勇介が、「もう一回いろんな人に聴いてもらいたい。響いたらいいな」ということでつけましたね。

──2025年6月から7月にかけて、初期作品に絞ったワンマンツアー<locofrank TALES OF TRIANGLE TOUR>を開催したじゃないですか。そこもつながってたり?

森:ですね。今、いろんな事情でライヴハウスに来れなくなった人もいるから、そういう人たちがまた足を運ぶキッカケになったらいいし。今回フルアルバムもリリースするから、また観に来てほしいなっていう。ちゃんと計算されてます、金になるようにと(一同笑)。やっぱり、“まだまだやってますよ”っていうのを見せたかったんですよ。

──実際に<locofrank TALES OF TRIANGLE TOUR>をやってみていかがでした?

木下:よかったですね。取り掛かったときはどうなることやら、と思ってたけど(笑)。

──ただ、locofrankはずっとやり続けてる曲も結構あるじゃないですか。

木下:でも、やってる曲のほうが圧倒的に少ないし。よこしんが一番大変やったんちゃうかな。

横川:まあ……大変やったっすね(苦笑)。ただ、それまでやれてなかった曲をやれたのは嬉しかったです。覚える大変さはありつつ、ほんまにやれてよかったと思ってます。

森:ありがたいことに全箇所ソールドして。ライヴハウスの前半分はモッシュとかで楽しんでる人が多いけど、後ろ半分は本当に“観に来ました”みたいな人がズラッと並んでたから、“あれは久々に来てくれた人たちなんやろな”と思ったりもしてましたね。

──そこが新作にもつながってくれれば、と。

森:そうなったらありがたいなと思ってます。

──では、フルアルバム『Resound』完成してみての手応えはどうですか?

森:3人が曲を持ち寄ったフルアルバムは初めての経験だったし。どうなるんかな?っていう楽しみが大きくて。

横川:録りを終えて曲順を3人で決めたとき、「あれ、めっちゃ良くない!?」っていう手応えが今までで一番大きかったんじゃないかな。

──『Resound』はサウンドの広がりに加え、バンドの良さがブラッシュアップされたところもあり、locofrankが改めて始まった感があるなとまず思ったんです。これまでと違った感触みたいなものはありましたか?

木下:う〜ん……やっぱり、後から加入したよこしんはピンとけえへんかもしれんけど、オレらからすれば新しい感じがある。でも、どっしりしてるオレららしさもあって。全体を通して、らしくもあり、これからも楽しみ、みたいな感じなんじゃないかなと思ったりもしてますね。

──locofrank特有の緊迫感や重みがありつつ、安直に言えば明るいムードが出てきたような印象も受けたんですよね。

木下:あ〜、そうか。

森:それはあるかも。

木下:よこしんが加わって新しいlocofrankになってから、曲云々は置いといて、どうせやるなら楽しくっていう気持ちは、前より強かったりもしてて。その雰囲気が関係してるのかもしれないですね。

──そういったところって、『Resound』の最後を飾る「Reborn」にもあるというか。この曲はミュージックビデオでメンバーがダンスをした「Intertwining」以来の衝撃だったんですよ。

木下:「Reborn」は勇介の……いや、勇介先生の名作やけど(笑)、最初オレはグッとけえへんかったんですよ。で、サビを歌っていくにつれていい曲だなと思っていったというか。スプリットアルバム『THE LAST ANTHEMS』に収録してツアーを回ったとき、HAWAIIAN6とdustboxから「あの曲は完璧だよ」と言われたし。<THE LAST ANTHEMS TOUR>ツアーファイナルのZepp DiverCityでトリをやらせてもらったときに一番最後の曲として演奏して、“この曲はやっぱ凄いな”と感じて、勇介に謝りましたから(笑)。

森:はははは。

──「Reborn」って1曲通して聴くとlocofrankらしさがあって違和感がないんですよ。ただ、ああいうスケール感のあるイントロで始まって、どう進むのかなと思っていたら“ウォーウォー”と歌い出して、そこにコーラスも合わさって。

森:locofrankとしては新しいですよね。

──ラストにもあのコーラスがあるし、この導入と締めは、やっぱりそれまでのlocofrankからすると考えられなかったですよ。

森:そういうところも踏めて、『THE LAST ANTHEMS』に収録するのがベストだったというか。HAWAIIAN6とdustboxがいて、その中でいつも通りのlocofrankらしさを出すのもいいけど、せっかくだし、今までやったことがないことにチャレンジしてもいいのかなと思えたんですよね。

──タイトルにかけるわけじゃないんですけど、locofrankにとってアンセムというか、みんなで歌ってひとつになれる曲が必要だと考えてたり?

森:他のバンドがそういうことをやってて、羨ましいとは思ってましたね。“ウチもああいう曲をやりたいけど、(木下)正行はそういうの無理やな”と(笑)。

──はははは。正行さんとしては抵抗もありました?

木下:まあ、ありましたね(笑)。それこそ、「“ウォーウォー”ってこれ、曲の頭にいる?」って勇介に聞いたし(笑)。そうしたら、「頭に持ってくるからこそ意味がある」って言われて。その考えはこれまでなかったし。自分は小さい物差しで考えてたんだなって、そういうところを突きつけられた感じだったな。

──横川さんはどう感じました?

横川:違和感はなかったです。たしかにそれまでのlocofrankにそういう曲があったか?と言われたらないかもしれんけど、locofrankに合わないとはまったく思わなかったし。

──客観的にlocofrankを観てた時間がある横川さんの感覚が、一番フラットなのかもしれないですね。

木下:うん。おじさん、頭が固まっちゃってるから(一同笑)。

──そう言いつつも、おじさんバンドの意地もあるんじゃないんですか?

木下:いや、ないですよ全然。そんな意地なんてもう。

──正行さんが作詞作曲した「Favorite Background」では、おじさんの意地みたいなことを強度の高いサウンドで歌ってますし、そういう部分もあるのかなって。

木下:あれは“気がつけばそうなっちゃってますけど”ってことなんですよ。思い返せば、歳を取りたくて取ってた時期もあったし。

──あぁ、locofrankは若くしてシーンに飛び出してきたから、ナメられることもあったでしょうし。

木下:だから、歳を取ることに対して“あかん。悔しい”みたいな捉え方はあまりなくて。ただ、自分たちが大事にしてきたものが、時間が経ったからもう古い、みたくなるのはちょっと違うとは思うけど。それを意地なのかと言われれば、そんなつまらんもんではないかなっていう感じですかね。

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