「M-SPOT」Vol.032「平均年齢13.6歳でインプロビゼーションに身を任せるインストバンド」

昨今のSNSが起こすバズの波に乗りにくい…というか乗りそうもない音楽というのが存在するのも悲しいかな事実で、ニッチな音楽・マニアックなサウンド・コアなサウンドというものは、万人に受け入れられるようなポピュラリティが希薄なゆえに、万人受けするものことはない。だからこそ注目に値する優れたアート作品として紹介を続けてきた前・前々回の「M-SPOT」コーナーだが、今回は未来明るい若手バンドを紹介しよう。
その名もZα SAVAGE、ドラムとベースにギターが2本、そこにサックスという構成の5人組、平均年齢13.6歳という将来有望なインストバンドである。いつもの通り、ナビゲーターはTuneCore Japanの野邊拓実、進行役は烏丸哲也(BARKS)でお届けしよう。
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──今回紹介したいバンドは平均年齢13.6歳という、Zα SAVAGEという名の5人組インストバンドです。14歳と13歳の兄弟がドラムとベース、そこに15歳と12歳のギター、14歳のサックスというメンバー構成なんですが、ただのインストバンドではなく、自らを「即興インストバンド」と呼んでいるんです。わざわざ「即興」と名乗るところに、興味を持ちまして。
野邊拓実(TuneCore Japan):その年齢ですごいですね。
──そう。インプロビゼーションで音楽を楽しむという志向性みたいですね。ボーカル曲には興味がない…んですかね。
野邊拓実(TuneCore Japan):おそらくそうなんでしょうね。インストって難しいですよね。この年齢云々を抜いても、そもそもインストって「音を聴く」というところに対する耳のリテラシーがないと楽しめないというか、意外とハイカルチャーなものだと思うんです。
──確かに、演奏側はともかく、聴き手側の理解力というか音楽の読解力を必要としますよね。
野邊拓実(TuneCore Japan):それこそ僕はポストロックをずっと聴いていたので、なんなら「歌なんか入ってくんな」みたいな、ポップなメロディーが流れ始めた瞬間に「はいはい、結局ポップスね」みたいな感覚になるところの出身だったので、インストを聴いても違和感はないし、ジャズセッションでソロを回していくみたいなカルチャーにも触れてきたので、「今、ギターの音色が変わって違う人にソロが切り替わったな」とかわかるんですけど、そういうところって意外と難しいんですよね。バンドや楽器経験者じゃないと、ギターとベースを聞き分けられていなかったりしますもんね。
──確かに。ベースってどれ?要るの?って感じですね。
野邊拓実(TuneCore Japan):そうなんです。そのくらいの理解度だと、インストを聴くのってめちゃくちゃ難しいだろうなって思います。そういうミュージシャンたちが「これからどうやって闘っていくべきなのか」、みんなで一緒に考えたいっていつも思います。「こういう闘い方があるよ」みたいな。バンドマン同士はお互いがライバルだから情報を共有し合いたくない部分もあると思うんですけれど、例えば僕はシガー・ロスが大好きですけど、シガー・ロスみたいなカッコいい音楽を演っているバンドのライブに行っても、お客さんが全然いないんですね。でも、シガー・ロスが来日するとソールドアウトするんです。「君たちは普段どこにいるの?」ってすごく思うわけ。
──わかります。
野邊拓実(TuneCore Japan):そういう人たちが全員ニッチなオタクだとは思いませんけど、ただ本当に好きな人たちがそこにいるわけです。なので、そういうリスナーとアーティストをちゃんとマッチングさせるためのOne to Oneマーケティングみたいなものは、どうしたら実現できるかなっていうのはチューンコアとしても考えるべきだなと思っています。
──難しいですね。
野邊拓実(TuneCore Japan):その答えって見つかっていないから、やっぱりバイラル頼りになっちゃう。集まるところに人がすごく集まって、集まらないところには人が全く集まらないという資本主義みたいな構造になっちゃってるわけです。それをどうにかばらして均して、好きな人同士がちゃんとマッチングしていくことが実現できたらいいなって日頃から考えています。Spotify Discovery Modeみたいな新たな機能も出てきてはいるんですけどね。

──それこそ、平均年齢13.6歳のZα SAVAGEが、自分たちの活動を知らしめたいとき、どこに対してどのようなプロモーションをするか、ですよね。即興インストと名乗っているのは、「モテたい」「カッコいいと思われたい」という欲求ではなく「カッコいいと思うから演りたい」という思考によるものでしょ?この音楽性と表現手法をどこにどのように伝えていくのか、とても興味深い。「自分たちの魅力を、自分たちでどう伝えますか?」って訊いたらなんと答えるんでしょう。
野邊拓実(TuneCore Japan):彼らは若さを持っているんだから、これは前面に出していくべきだなって思いますね。彼らの世代/彼らの年齢でこそ考えられること…「こういう考えでこういうことをやっているんだ」という話は知りたい。そもそもどうしてインストなのか、もしかしたらちゃんと歌えるやつが周りにいなかったってだけの話かもしれないし、鉄の意志を持ってインストをやっている可能性もある。いずれにしろ、どういう経緯からこんな若い子たちがインストを即興でやる精神性が育まれたのか、気になるところですね。
──インプロビゼーションの面白さに気付くまでに、どんなインプットがあったんでしょうね。
野邊拓実(TuneCore Japan):そもそもどこで出会ったんですかね。よく考えると、1番若い子で12歳、年長で15歳なので、この年齢にとって3歳差って大きいですよね。12歳の時、15歳の人って結構上だと感じましたから。
──大人に見えるよね。12歳にとって15歳は、30歳にとって40歳くらいのインパクトかと。
野邊拓実(TuneCore Japan):このバンドを結成するに至り、いまではTuneCoreで音源を配信しているわけですから、そういう活動するまでに至った流れにも興味がありますね。Xを見るとすでにフォロワーも4000人以上いる。
──フォロワーの属性に興味あるなぁ。同世代なのか大人なのか。男子なのか女子なのか。
野邊拓実(TuneCore Japan):どういうイベントに出ているんだろう。面白いですね。どうやって今の状態にまでなったのか、全然わからない(笑)。
──わかんないって意味で言うと、Zα SAVAGEが「The」じゃなくて「Za」なのは、13.6歳という柔らかな発想なのか、THE SAVAGEとの混乱を避けるための大人の助言か。
野邊拓実(TuneCore Japan):大人はついているんでしょうか。いや、ちょっと色々とわかんないことが多くて…なんかいいですね。たくさん発信してほしい。基本的に「アーティストには、わからないポイントを残してほしくない」って思ってます。世の中にはいっぱいアーティストいて、みんな時間がないでしょ?興味を持っても、きちんとSNSを掘って全部調べることもなかなかできない。そうなってくると、ある程度わかんないってなったところで興味を持たないで終わっちゃうケースが多いと思いんです。
──「あとで…」と思って、結局忘れちゃう。
野邊拓実(TuneCore Japan):そうなんですよね。その時の熱量もなくなっていますからね。なので、ある程度情報がまとまっていたり、いろんなところでいろんな情報が発信されている状態を、自分でできることは全部やっておいてほしいって強く思います。
協力◎TuneCore Japan
取材・文◎烏丸哲也(BARKS)
Special thanks to all independent artists using TuneCore Japan.
Zα SAVAGE
平均年齢13.5歳の小、中、高校生からなる、即興インストバンドです。 Dr&Ba.虎成×龍成(14.13)@toratatsu Gt.タツル(15)@tarmaru Gt.Kengo(12)@kengo_guitar SAX.LINKSTONE(14)@link-sax
https://www.tunecore.co.jp/artists?id=975029







