| ――野外ライヴの印象が強いせいか、大友さんやHounddogって青空にも似合いますね。
大友康平(以下、大友):あんまりひ弱なバンドじゃないですしね。野外ライヴも好んでやってきたし、自分自身、ジョギングやアウトドアも好きだし。
――アルバム『11 Rooms For Sky』が空をモチーフにした作品になったのは、それだけ大友さんが風や陽射しを感じながら生きてるからなんでしょうね。
大友:今までも無意識なうちに空に近い詞の表現を使ってたことはあって。今回もわりと後づけなんですけど、空にまつわる11個の詞が生まれたんですよね。空って、じつはみんなの好きな青空は少ないじゃないですか? ほとんど曇り空だったり、雨や雷雨だったり。それって人間の心模様に似てると思うんですよ。みんな平穏でいたいしハッピーでいたいけれども、わりと怒りが多かったり寂しかったりする。その“空=人間の心模様”というのと、Hounddogがずっと歌い続けてきてる“愛”を言いたかったんですよね。
――行き着くメッセージとして。
大友:うん。たぶん一般の人からしたら僕って強いイメージがあるじゃないですか。でもじつは普通の人間なんで、すぐにヘコんでしまったり、すごく迷ったりする。つまり僕も(みんなと)同じなんだよってことが言いたいんですよね。でも、踏み立たないとしょうがないし、頑張るのが当たり前なわけで。特に今はこういう時代だからみんなすごくナイーブになってるでしょう? “頑張れ”って言葉が逆に重荷になる人もいると思うし、そういう人達のために僕ができるのは、同じ気持ちを持つ者として横にいてあげることなんじゃないかなと思ったんですよね。色んな心模様がある中で踏み立つのも留まるのも、その人の意志次第。そういう意味合いを込めての『11Rooms For Sky』なんです。
――歌い続けてきた中で、“愛”というものの歌い方は変わってきました?
大友:19年前に、愛をうたう歌(「ff-フォルティシモ」)に出会って。それまではロックンロールとバラードだけあればよくて、いい意味でチンピラみたいな姿勢で突っ走っていくつもりだったけど、あの曲をきっかけにたくさんの人に聴いてもらえるようになって。当時は愛を正面きって歌うのが恥ずかしかったけど、あれから世の中も人々も色んな変化を迎えましたよね。環境だって、21世紀に入って誰もがいい方向に向かってると思えない状態になった。その中で人間にしかできないことって、愛によっていろんなものを動かすことだと思うし、そういう意味でも今こそ正面きって歌えるっていう感じなのかな。
――その象徴とも言える「たったひとつの愛のうた」が、アースデイ参加へのきっかけになりましたが。そういう曲と地球を守るイベントが結びつくのは理想的なことですよね。
大友:そうですね。僕ら自身、野外ライヴをやる中でゴミの問題とかを考え続けてきたし。イベント参加に関しても、僕らはいつもすごいセットを組んでライヴをやってるけど、“そういうことはできないんですけど歌ってください”と言われたのが嬉しかったし。この歌が、ひとりひとりが環境について考えるきっかけになればいいなと思うんです。
――ちなみに大友さんの中で、ロックと環境保護の共通項って何だと思いますか?
大友:いやぁ、それは非常に相反するものなんですよねぇ(笑)。ロックンロールって照明とかアンプとか電気をたくさん使って表現するもんだし、ギターは木だし。ただ、20何年間やってきた音楽が何らかの形で人々に影響を与えてきたってことは誇りに思うし、これからも人の琴線に触れることができれば、音楽をやってきてよかったなと思うと思うんですよね。その中で照明のワット数を減らすとかギターをひとり減らすとか……それは難しいんだけど(笑)、音楽を通して何が人の心に残せるのかってことを考えていきたいですよね。
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<Earth Day Tokyo 2004> 2004年4月18日(日)代々木公園野外ステージ
少し暑いくらいの午後の陽射しが降り注ぐ、代々木公園の野外ステージ。「“すごいセットは組めないけど、それでも歌ってほしい”とこのイベントに誘われたことが嬉しかった」と、インタヴュー時に大友氏が言っていた通り、この日のステージには「NOWAR」と描かれた大きなキルト以外には、舞台装飾も照明もない。ある種、威圧的ですらあるいつものライヴとは対照的に、フレンドリーなHounddogがそこにはいた。観客たちも「わぁ、本物だぁ!」「なんか楽しいねぇ」と、いたって普通にライヴを楽しんでいる。気持ちの良い太陽の下で、ビールを飲みながら好きな音楽を楽しむ。こんな平和な休日が過ごせるのって、やっぱり幸せなことだよなぁと、Hounddogのラヴソングを聴きながら改めて思った。
Hound dogのライヴ終了後、100を超す露店や民間団体のブースを見て周っていると、動物実験や毛皮の反対運動を行なうNPO団体のブースがあったので覗いてみた。現在開発されている技術を持ってすれば、動物実験を行なわずに化粧品は作れるということ、けれど化粧品を作るために日々何百頭もの動物が命を落としているということ、また毛皮を剥がれた狐の無残な死骸写真など、人間が動物に与えている殺生の数々が紹介されていた。その数メートル先の露店の店先には、ヘビやハラコの革製品がところ狭しと並んでいる。人の世の矛盾を感じずにはいられなかった。
文●松戸美緒 |
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