──渋谷クアトロでのライヴを見たのですが、以前見た<FUJIROCK FESTIVAL '01>やNHK-FMの公開録音のときに比べて、すごく音に厚みが出たと感じました。
TAKA(以下 T):2ndアルバム『Yesterday Went Too Soon』のツアーを4ピースで、サンプラーも使ってやったんだけど、よくダイナミックさがなくなったって言われてね、それで3rdアルバム『Echo Park』のツアーを3ピースで廻ったのね。3ピースには3ピースなりの楽しさもあるんだけど、音も声も一人でやるとグラント(Vo&G)の負担が大きいし、ギターも1本だと音の幅が限られる。それで今回は、2ndのツアーも一緒にやったサポート・ギタリストのディーン(G)も加えて、4ピースで行こうということになったの。
──アルバムの持つ深みのあるサウンドや音の広がりが、ライヴでもかなり再現されてましたね。
T:たとえば、Radioheadは5人いるからライヴでもアルバムの音を再現できると思うのね。3ピースの荒々しさみたいのも好きだけど、ああいうのも一度やってみたかった。グラントとディーンの役割をきっちり分担したから、音もハッキリしたしね。エンジニアが作ってくれたサンプリングやストリングスの音を出すのに、キーボードやコンピュータも導入してね。私が操作してるんですけど。ベースだけだとつまらなく感じていた部分もあって(笑)。MCもね、日本だからもうちょっとしゃべりたかったんだけど、曲と曲の間にセッティングしたり、コンピュータを操作したりで、ちょっと無口でしたね。効果音とかノイズを出しながら、自分も弾かないといけないから。
──今回のツアーの手ごたえはいかがでしたか?
T:動員が増えてうれしかったね(渋谷クアトロはソールドアウト)。'99年に最初に来て、2回<FUJI ROCK>もあって、日本には来ていたんだけど、フェスはフェス用のセットリストになってしまうから。自分たちのツアーだと自分たちの思ったように表現できるよね。
| 「ベッカムの真似じゃないですよ」と語るタカ・ヒロセ
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──オーディエンスの反応はいかがでしたか?
T:やっぱりお客さんが暖かい。フレンドリーだよね。前は曲と曲の間にしーんとするのが、冷たいなあとか、つまんないのかな? って心配だったけど、グラントの話す英語を聞き取ろうとしてるんだってわかって。向こうの客はうるさいからね。
──そういえば、グラント以外、全員ベッカムヘアだったのが気になったんですが……。
T:この髪はベッカムの前からやってるんだよ(笑)。マーク(サポートDr)なんて、前はスキンヘッドだったのに、ツアー廻ってるうちに退屈したのか……。みんなやってたけど、私が最初ですよ。向こうのガキにも言われるんですよ「ベッカムの真似だろう!」って(笑)。
──皆さん、おしゃれですよね。今回の来日でも何か買い物されたんですか?
T:メンバーはいろいろ買い物に行ってたみたい。日本だけのデザインのやつ、Tシャツとかジーンズとか、スニーカーとかいろいろあるからね。みんな服は好きだね。私は時間があまりなかったんで、今回はジーンズひとつ買っただけ。
──新作の『Comfort In Sound』では、しっとりというか、FEEDERにしてはおとなしい曲が多かったように感じたのですが、ライヴは全然そんなことありませんでしたね。
T:日本の前にUKツアーがあって、何回かセットを変えたんですよ。試行錯誤して、ちょっと苦労しましたね。古い曲を入れても違和感のないように、バランスがいいものにするのに。今のところ古い曲も新しい曲もあって満足してます。
──そういえば、ライヴでもすごく盛り上がった「Just A Day」ですが、前から『Echo Park』日本盤のボーナストラックにしか入ってなかったのが、不思議だったのですが?(後にUKでシングル化され、今回の来日記念盤『Find The Colour』にも収録)
T:あの曲は2枚目(のアルバム)を作ってるときに、レコーディングの最後の方にね、アメリカ用のシングル候補曲としてできたんです。それで、一応レコーディングもしたんだけど、アルバムはほぼ完成してて、入れる隙間もなかった。捨てるのもなんだからって(笑)、シングルのB面で使ったりしてたら、ゲームの「グランツーリスモ」で使いたいって言ってきて。そしたら、ゲームがすごく売れて、曲もすごくウケがよかった。じゃあシングル出しちゃえばって感じで、『Echo Park』で最後のシングルですね。ビデオもウケたし(FEEDERファンが自宅で「Just A Day」を熱唱するPVが話題になった)、ラジオでもウケて、ライヴでも一番ウケる曲。自分たちとしては、ちょっと妙でしたね。余った曲だったので……。
──なるほど。次に作風が変わったといわれる新作の『Comfort In Sound』に関して、FEEDERとして、どのように捉えてますか?
T:別に新作だからとか、そんなの抜きにして今まで作った中でベストのアルバムだと思ってます。ジョンのことを乗り越えて……つらい時期があって……成長した。そういう部分が作品に出ている。質がいいと思います。誰かに「気に入らない」って言われても、自信のアルバムだって言い切れる。
──やはり、ジョンのことは作品作りに影響しましたか?
T:ジョンのことは影響していると思うね。ないと言えば嘘になる。インスパイアされた曲もあるし、考えさせられたこともある。でも、それだけじゃない。前向きになって作ったから。
──実際の制作はどのように進めたのですか?
T:去年の1月、ジョンの葬式の後、日本に来て家族や友達と会ったりして。それで、2月に(イギリスに)帰ってきたら10曲ぐらいグラントが作ったデモテープができてた。アルバムには、そのときの曲もけっこうありますよ。それで、アルバムを出す予定もなく、とりあえず一緒にデモ作りを続けたのね。正直、ジョンがいなくなってこんなに早く活動していいのかな?ってのはあった。でも、前進した方がいい、悔いや悲しみばかりでは仕方ないと思って。そのとき、ファンのメッセージやサポートはうれしかったですね。支えられました。
| 2003年3月24日渋谷CLUB QUATTROで演奏中のタカ・ヒロセ。 (C)Yuki Kuroyanagi |
──そして、10月にはアルバムがリリースされ、それからはツアーですね。
T:レコーディングが終わるまで、ライヴも何もやってなかったらね。UK、日本、ヨーロッパと回って。今年はフェスティバルも出ますよ。<グラストンベリー>、<ヴァージン(V2003)>、スコットランドの<T In The Park>、アイルランドの<Slane Castle>……、ツアー三昧だね。FUJI ROCKも出たい! まだ決まってないんだけど……。
──ライヴ中にMCでグラントが「FUJI ROCKで会おう!」みたいなことを言ったそうですが?
T:今回のツアーがsmash(の招聘)だったから、プレッシャーかけてるね(笑)。実はまだ決まってない。<FUJI ROCK>は好きですね。きれいな場所で、音もすごくいいし。ただ、'99年、最初に出たときはセキュリティがすごく厳しくて、楽屋も区切られてて、ほかのバンドに会えなかったのが残念でしたね。向こうのフェスティバルは、バンドの交流の場だし、友達もできますよ。2回目('01年)はもっとオープンで楽しかった。ここ最近、あそこまで楽しいフェスティバルもなかったね。
──海外のフェスと比べてどのあたりが違うんですか?
T:ごみがない! 向こうはごみだらけ。音制限もないんじゃないかな? <レディング>は音が小さい。住宅街ってほどでもないけど、町の中にあるし、グラストンでも何かの団体がうるさいから、音量を上げられないの。苗場は町も一体になって盛り上がってるからね。'99年、最初に会場で見たのがTHE BLACK CROWS、次にRAGE AGAINST THE MACHINE。音も大きいしオーディエンスも盛り上がってて、すごいなあと思いましたね。
──そういう場では、日本のバンドも見たりしますか?
T:2001年のレッドマーキーで、僕らの前にやっていたSUPER BUTTER DOGはすごく気に入りましたね。ファンキーっぽくて、あれは面白かった。前夜祭のBoom Boom Satellitesもよかったね。
──ほかに日本のバンドで好きなバンドはありますか?
T:THE MAD CAPSULE MARKETS。あとはコーネリアス。彼は才能あるよね。向こうでは、最初はマスコミにだけ受けてたんだけど、ライヴを見た人はみんな感銘を受けてたね。プライベートだとソウルとかHIP HOPをよく聴くんだけど、ギター・バンドだとQueens Of The Stone Ageが気に入ってますね。今風のギター・サウンドより、グランジの方が好きだね。NIRVANAとかSmashing Pumpkinsとか。デビュー当時はいつも比較されて、嫌でしたけど(笑)。
──そういえば、開演前にSmashing Pumpkinsがずっと流れてましたが、タカさんの選曲ですか?
T:いや、向こうだと自分で選曲したテープ流すんだけど、誰だろうね? smashの人がベスト盤でも流してたんじゃないの(笑)? 向こうではジョンスペとか好きだから、よく掛けてますよ。
──では最後に今後の活動予定をお願いします。
T:今年はツアーばっかりですね。その合間に曲作りを少し。グラントは時間さえあればいつも曲作ってるから。それから、来年ぐらいにまた新しいアルバムをレコーディングできればと思います。
取材・文●末吉靖永