【音楽と映画の密接な関係 2002 夏休み Special!・後半】選りすぐりの映画を大紹介!
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文●原令美(R)、編集部(H) |
『バイオハザード』 |
| 暑い夏にピッタリの怖い映画の登場。久しぶりに背筋がゾクゾクした。といってもストーリーやクリーチャーが恐ろしいんじゃなくて、怖いのは“音”なのだ。現場音や効果音、バックに流れる音楽を含め、音作りが実に巧みで、人間の心理を突いた仕掛けがなされている。おかげで何度も椅子から飛び上がりそうになってしまった。 人気ゲームシリーズ『バイオハザード』の実写版映画化で、主演は『フィフス・エレメント』のミラ・ジョヴォヴィッチ。ゲームを知っている人も知らない人も楽しめるように脚本を工夫したというだけあって、バックグラウンドを知らなくても、冒頭からグイグイ引き込まれる。目の前にいつ、何が飛び出してくるのか、敵が見えない恐怖。そこに突然、フルボリュームで衝撃音が鳴り響くもんだから、もう…! 心臓の悪い人にはお勧めできないかも(苦笑)。でも、モデル出身の美女ミラが銃を構えて惨劇の現場を闊歩し、危険な罠をくぐり抜け、次々と襲い掛かる敵と戦うさまを見ているだけで、現実逃避の心地よさに浸れるのだ。彼女の体を張ったアクション・シーン(ほとんどスタントなしでこなしたという)はそれほど素晴らしい。すでに続編の企画も進められているらしいし、これが彼女の代表作になるのではと思う。 注目の音楽は、『スクリーム』や『ミミック』などを手掛けたマルコ・ベルトラミと、ご存知マリリン・マンソンのコラボレーション。もともとゲーム版『バイオハザード』の大ファンだったマンソンは、映画音楽初挑戦のこの仕事に大乗り気だったとか。サントラには他にスリップノットやフィア・ファクトリー、コール・チェンバーなども参加しているのでヘヴィ・ロック・ファンは要チェックだ。(R) |
『オースティン・パワーズ ゴールドメンバー』 |
ついに出ました、超おバカ映画『オースティン・パワーズ』第3弾! 当初は低予算映画として始まったはずのこのシリーズも、回を追うごとにスケールアップし、3作目の今回はなんと製作費160億円。そのすべてをおバカにつぎ込んで、全世界おバカ計画始動!と豪語するところが何とも言えず期待をそそる。キャッチフレーズは「おバカもいいかげんにしなサイケデリック!」 『ゴールドメンバー』と銘打っただけあって、今回はとにかく出演者の顔ぶれがスゴイ。1人4役を演じるマイク・マイヤーズのハジケぶりは、もはや誰も止められないと思いきや、オースティンの父親役で初登場するマイケル・ケインが意外なオトボケぶりを発揮。2度のオスカーに輝いた英国を代表する名優…とは思えないカル~い演技で対抗している。また、音楽ファンの注目は何といってもヒロインに大抜擢されたデスチャのビヨンセ。アフロヘアと金ピカの'70年代ディスコ・ファッションで決めて、サイコーに派手な女優デビューを飾った。セクシー&パワフルなルックスと、お茶目な演技のギャップが楽しい。他にもゲストとしてブリトニー・スピアーズやオジー・オズボーン・ファミリー、クインシー・ジョーンズなどが登場(ちなみにトム・クルーズ、グウィネス・パルトロウ、ケヴィン・スペイシーといった映画界の大スターたちも“ほんのチョイ役で”顔を見せているのでお見逃しなく)。
ビヨンセやブリトニーは劇中でしっかり歌っているし、マイク・マイヤーズ+マシュー・スウィート+スザンヌ・ホフス(バングルス)によるミング・ティーの演奏シーンや、70年代の伝説のディスコ“スタジオ54”を彷彿させるきらびやかなダンスシーンもあるし、今作はある意味、音楽映画として見てもかなりイケテルかも。当然、ビヨンセの初ソロ曲をフィーチャーした通称「おバカもいいかげんにしなサウンドトラック」も、'70年代サウンド満載で◎。(R) | ●8/24より全国松竹東急系にて公開
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『スクービー・ドゥー』 |
(c)2002 Warner Bros. All Rights Reserved | アメリカでは1969年から22年間大人気を博していたTVアニメーション「スクービー・ドゥー」。30年以上を経て、2002年実写映画として登場(といっても主人公の犬、スクービー・ドゥーは言葉はしゃべれるし、表情豊かなCG処理犬)。 若者4人と犬1匹でチームを組む「ミステリー社」は、次々と怪奇事件を解決し有名になっていくのだけど、これがかなりのドタバタ。犬のスクービーは図体デカいクセに(体重70kg、立ったときの身長180cm)、超~臆病モノ。ミステリー社の4人は、みんな個性的でバラバラなんだけど、みなワガママ。そんなことだから解散の憂き目にあうことに。そこにミスター・ビーンことローワン・アトキンソンが絡んできて……。ハチャメチャで楽しくて、ラストで「え~!」と言うか、「やっぱり…」と思うかは、観る人次第! このミステリー社の1人に、スクービーの大親友で、ヒッピースタイルの“シャギー”という青年がいるのだけれど、レゲエシンガー/シャギーは、ここから幼少時代にあだ名をいただき、そのままアーティストネームとして活動。そして、その彼がこの映画のために主題歌「Shaggy, Where Are You?」を歌っている。 (H) |
『リターナー』 |
金城武がまたクールな役どころで登場。闇の世界で生き、暗い過去を背負った主人公を演じる……といえばシリアスであるからして、つい最近までTV番組「ゴールデンボーイ」でコメディタッチの演技をしていたとは思えないほど。彼の魅力はこの両極にあるのだろうけど、今回はどうだろうか。個人的には金髪に染め上げた(これまたクールな)悪役・岸谷五朗とのやり取りに期待大、というところ。その2人の縦軸に、“ミリ”という謎の少女が横から絡むわけで、ただの復讐劇ではないのもいい。 このスリリングなストーリー展開を盛り上げる主題歌は、レニー・クラビッツの「DIG IN」。山崎貴監督(ビジュアルエフェクトを浸透させた「ジュブナイル」)が熱望して、決まったという。レニーにとって映画主題歌はこれが初となる。(H) | ●8/31より、全国東宝系にて公開! (C)2002 FUJI TELEVISION NETWORK/TOHO/AMUSE PICTURES/ROBOT/SHIROGUMI/IMAGICA |
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