The Late Showで感じたスライダーズの“呼吸”

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“Hello”。

ハリーのこの一言でスライダーズのライヴは始まった。

土屋公平はショッキングピンクのシャツ、対するハリーはブルーグレイのジャケットに、中には真っ青なシャツ。フロントマンの2人の見た目は正反対であり、対であった。そこで、ひねくれものの筆者などは、“そりゃ、キメ過ぎだろう~”なんてパッと見、思ったりするハズなのだが、この日は“くぅ~、カッコいい!”と、うなってしまった。

インストゥルメンタルの「P-Skins」で始まったステージ。次いで「Can't Get Enough」「Wanna Dance Tonite」。一気にその気にさせずに、じわじわとヒートアップさせていくやり方は、じつにイヤらしい。確実に観客を魅きつけているのに、ベタベタしない。そういった第一引力はまちがいなく、ハリーの声といえるだろう。

ハリーの声はすべてを表現する。“怒り”も“抵抗”も“夢”も、すべてあの声が表現しているのだ。歌詞はもちろんあるのだが、それは一つの形でしかないかのようで、極端な話、ハリーが声を発すれば、たとえそれが“Hello”であろうと“F××k”であろうと、それは彼の怒りであり、抵抗であり、夢へとなってしまうのだ。

そして、その声と同様なのが土屋公平のギターであり、ジェイムスのベースであり、ズズのドラムで、それぞれの音が第二引力となっているのだ。その声や音はメンバーの体内へと波及し、彼らのストロークする手が語るようになり色気を放つことさえする。そうなると、もう彼らの“存在”自体が“ロック”でしかなくなる。彼らが何を着ようと何を言おうと“存在”が有無を言わせぬ“熱”を発するのだ。“ロック”に定義も真偽もないけれど、これを“ロック”と言わぬなら彼らの存在も無意味と言っていいだろう。

スライダーズの“ロック”が絶対引力となって迫ってくるのがライヴなのだ。地上の重力よりも若干重く感じられるような、じわじわと体にクる音像。成熟され昇華していくバンドの重力はもっと上がりそうな予感さえある。

終盤は「No More Trouble」「So Heavy」「マスターベイション」と初期のナンバーを演奏。ここでやっと観客を狂わせるスライダーズは、本当イヤらしい。まったく、“いい意味で”期待を裏切らないバンドである。

文●星野まり子

“阿吽の呼吸”という言葉はさして珍しい言葉ではないけれど、実際にそれを見たり実感したりすることは滅多にない。目に見えない合図を感覚的に察知できる者同士でなければ、そのコミュニケーションは成立しないからだ。

3月からの4ヶ月間、THE STREET SLIDERSがマンスリーで行なってきた<THE LATE SHOW>。最終公演となった6月5日の<Night>は、まさに阿吽の呼吸によって生み出されるバンドのグルーヴをまざまざと見せつけられるものだった。

ステージ上にバランス良く配置されたイスに腰を下ろし、アコースティック・スタイルで始まったライヴ。小気味よいカントリー・ロック調の「愛の痛手が一晩中」、宵の街によく似合う、ブルージーな「ありったけのコイン」。それぞれのアレンジが、この瞬間に作り出されているかのように新鮮である。まるで“次は何やる?”とでも言いながらジャム・セッションを演っているみたいに。2時間前に行なわれていた<Twilight>が“ガツンとロックをぶちかます”的な内容だったとするならば、<Night>は“夜は長いぜ”とワザを小出しに挑発しているような、そんな印象だ。

土屋公平のギターが前に出るとハリーのギターは奥ゆかしくリズムを刻み、フロント二人が動的なプレイをすればリズム帯はさらに強靱なうねりを出す。それが顕著に見えたのは、サイケなインスト・ナンバー「P-Skins」だったと思う。

後半には、「のら犬にさえなれない」や「New Dance」といった初期の楽曲の間に3曲の音源未発表曲が演奏された。これまでの<THE LATE SHOW>でも披露されているためか、いわゆる“新曲”に対するリアクションとは違う反応が客席に起こっていた。ライヴで練られ、磨かれていく楽曲。それが音源としてどのような型に仕上げられるのか、という期待。そんな想いがあったのではないだろうか。

アンコールが終わり、時計を見ると午前0時を回っていた。そして再びステージへ目を戻すと、公平が、ジェームス、ズズと順に堅い握手を交わし、最後にハリーと肩を抱き合う姿があった。それは馴れ合いではなく、目に見えない合図でコミュニケーションをとることができる者たちの、互いへの敬意と感謝の表れだったのではないだろうか。THE STREET SLIDERSが、こんなにも清々しい笑顔を見せるのか、と少々驚いた夜でもあった。

文●望木綾子

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