3つの要素から解明するムックのすべて



分かりやすく言えば、とにかくムックの音は重い。いわゆる洋楽ヘヴィ・ロックに長年親しみ続けてきた僕の耳は生半可な重さでは衝撃をおぼえることはないし、単なる音作りとしてのヘヴィさというのにも、瞬間的な刺激以上のものを感じることはない。が、ムックの音は“重い”だけでなく“思い”のである。
全身全霊を込めて演奏するとか、音のひとつひとつに感情を込めるとか。それは口で言うのはたやすいし演奏者側がそれを実践しているつもりになるのは簡単なことである。が、問題なのはそこに込められたはずのものがちゃんと受け手側に伝わるだけの力を持ち合わせているかどうかだ。一方通行の感情移入じゃなく、聴き手の気持ちをも揺さぶることができるかどうか、ということだ。
ムックのサウンドの重さは、彼らなりの音作りのメカニズム以上に、そこに込められる“思い”の濃さに起因するものだと僕は考えている。で、そこに込められたものがとてつもなく濃密だからこそ、ムックの音に対峙するという行為には、通常の音楽鑑賞以上のエネルギーが要求される。それが作品を聴く場合であろうとライヴを観る場合であろうと。敢えて言うと、気楽に聴き流すことが許されない音楽ということになるかもしれないし、実際、彼らの音楽に浸ることにはいつもある種の疲労感が伴う。しかし、それが気持ちいいのだ。で、その疲労感と背中合わせの快感を味わってしまったとき、あなたはムック中毒になるというわけなのだ。
聴いたあとに何もココロのなかに残してくれない音楽ばかりが氾濫する世の中にあって、ムックの音楽はむしろ異常なカタチをしているということになるのかもしれない。が、たとえば聴くことで何かが浄化されるような感覚を味わえたり、何かに対する確信を強めたり、逆にワダカマリが晴れたりするような作用のある音楽をあなたが求めているのなら、ムックは間違いなく特効薬ということになるだろう。そう、いわば彼らの出す音は、激烈な興奮剤であると同時に、極上の精神安定剤でもあるわけなのだ。
文●増田勇一


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