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ほんの一瞬の輝きだったにせよ、Tears For Fearsは親しみやすく完璧な'80年代のポップミュージックを創造した。高らかに響くメロディーと、はずむようなアレンジ、うねり進むギターソロが印象的な“Everybody Wants To Rule The World”('85年の『Songs From The Big Chair』収録)。

見事に洗練された『The Seeds Of Love』('89年)。それに“Shout”や“Change”を除く大半のマテリアルは、凝りすぎたシンセポップの一言で片づけられるかもしれないが、Tears For Fearsの傑作は、たとえ数は少なくとも永遠に記憶から消えることがない。

ベースのCurt SmithとギターのRoland Orzabal(共に'61年生まれ)は、イングランドのバースで育った幼なじみ。Graduateというスカ/ポップグループで初めて一緒にプレイする。“原初の叫び”療法に関心を持っていた2人は、心理学者Arthur Janovの著書のタイトルにちなんで、新たに組んだデュオをTears For Fearsと名づける。

Janovの心理療法の概念を下敷きにした'83年の『The Hurting』は、重苦しいシンセポップの内省的なアルバムだった。ぐっと聞きやすくなった'85年の『Songs From The Big Chair』は、精神分析の意味あいもあるキャッチーな曲をフィーチャーして、400万枚のセールスを記録。

彼らは次のアルバムのレコーディングに悩み抜き、4年近くをかけて制作した『The Seeds Of Love』を'89年に発表する。タイトル曲は『Sgt. Pepper's』に入っていてもおかしくないほどBeatlesっぽいが、意欲に満ちたアルバムで、新人ソウルシンガーのOleta AdamsとトランペッターのJon Hassellが華を添えている。

セッションミュージシャンを使うことに慣れたOrzabalは、Smithを追い出した後、Tears名義の4枚目のアルバム『Elemental』('93年)を録音する。たった1人のメンバーとして活動を続ける彼だが、Smithの不在でバランスがとれなくなった以降のアルバムは、自己陶酔に傾いて魅力を失っている。

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