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スウェーデンから心地よいポップ・サウンドを運んでくれるThe Cardigans。さわやかで透明感のあるギターといきいきとしたキーボード、そして''60年代を思い起こさせるような、陽気な明るさで縁取られたCardigansサウンドは、日本でもプラチナ・ディスクを獲得するほどのブームとなった。プロデューサーのTore "Doctor" Johanssonが初期のテープを聴き、その洗練された音楽の中に可能性の拡大を確信、レトロな世界に自らの場所を見い出すこととなったわけだが、JohanssonのMalmo studioで、売れるかどうもわからないまま『Emmerdale』、そして『Life』を制作。しかし、これらはその確信通り、ヨーロッパ中のヒット・チャートを席巻、やがて日本にも飛び火することになったのだ。

デビュー作『Emmerdale』にして、Black Sabbathの“Sabbath Bloody Sabbath”をカクテル・スモークにどっぷり浸ったラウンジ・ナンバーに変貌させるなど、そこにはCardigans本来の持ち味が十分に堪能できる。日常生活から生まれることがらを、透き通った清涼感いっぱいに歌った心地よいナンバーの数々。明るく、昼メロっぽいシーンを盛り込んだ“Carnival”、元気なマンドリンが爽快な“Rise And Shine”、メランコリーなブラジリアン・スウィングの“Sick And Tired”など…。Nina Perssonの大人の女性とも子供ともつかない魅力的な声に、ギタリストのPeter Svenssonとベーシストで詞も書くMagnus Sveningssonの、スウィング風のプレイが重なっていく。まるで自らのヘヴィメタル好きをひた隠すかのようなプレイ…実はそれこそ、それほど遠くない2人の過去の遺産でもある。よく聴いてみれば、他にもSabbathの“Iron Man”にCardigans流のひらめきで手を加えられたカヴァーに気付くことだろう。

『First Band On The Moon』も似たような矛盾を反映している。ここでは、溢れんばかりの弦楽器、まるでプログレッシヴ・ロックのドラミング、ジャジーなヴォイシング、そして複雑なアレンジによって、よりいきいきしたポップ・ナンバーを披露。しかし、巧みな味付けと伸びやかなヴォーカルのもと、『First Band On The Moon』で歌われるのは、犠牲者や躁鬱病の恋人たちやサドマゾの人々なのだ。「空虚で自由/そう、それが私/教えてくれたら

あなたを自由にしてあげる」というのは“Heartbreaker”の歌詞だが、まるで寛大な売春婦の自伝のよう。“Setp On Me”はそのタイトル(「私を踏みつけにして」の意)通りの内容。そして、“Lovefool”には渇き切った絶望的なロマンティシズムがにじみ出ている。

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