「M-SPOT」Vol.017「もはやブレイク待ち…いや、すでにブレイク済だったというアーティストたち」

前回のVol.016では、多面的な活動形態と多様性をみせる現代のアーティスト群のなかから、既成概念にとらわれることなく、自由な発想で束縛のない活動を実行しているアーティストたちを紹介することとなったが、一方で、高い音楽性と圧倒的なスキルで世にインパクトを放つ突き抜けた資質を携えたアーティストも少なくない。
そんな中から今回は、誰に目にも誰の耳にもインパクトを持たせてしまいそうな、スキルフルなアーティストを紹介しよう。ナビゲーターは、TuneCore Japanの堀巧馬と野邊拓実、そしてDJ DRAGON(BARKS)に進行役の烏丸哲也(BARKS)である。
◆ ◆ ◆
──パッと聴いただけで、そのスキルが一瞬で分かる優れたアーティストもいまして、TuneCoreの中にも、そういうアーティストがたくさん潜んでいますよね。
堀巧馬(TuneCore Japan):いっぱいいますね。例えば浜野はるきもそうですね。
DJ DRAGON(BARKS):彼女はキャリアありますし、ライブもたくさんやられていますしね。もう素人じゃない。完全にもうプロですね。
野邊拓実(TuneCore Japan):フォロワーとかもめちゃくちゃ多いです。
──この「NINNIN」なんて、コード感をほとんど感じさせないバックの薄さなんて、ほとんどビヨンセばりだもの。
DJ DRAGON(BARKS):ビヨンセかどうかはわからないけど洋楽っぽいですね。でもかっこいいです。
──いつ大きくブレイクしてもおかしくない状態で。
堀巧馬(TuneCore Japan):そうですね。ビジュアルも含めてインパクトが強いけど、でもアイドルではない。
──あくまでもシンガーソングライターですよね。18歳でアイドルを辞めてアーティストを目指した方ですから。

浜野はるき
堀巧馬(TuneCore Japan):絶妙なラインなんだよね。アイドルというわけではないんだけど、だからといってR&Bとかヒップホップで叩き上げてきた人でもない。
野邊拓実(TuneCore Japan):ライブ映像を見ても、バンドセット以外に弾き語りやキーボードとギターだけの編成もあったりして、面白いですよ。
堀巧馬(TuneCore Japan):こういう活動形態というのは日本っぽいというか、アイドル文化がある日本ならではとも思うんです。俗に言うアイドルってなかなかアイドルからは脱却できないところがあるじゃないですか。だから、アイドルみたいなインパクトのいいところだけを得て、SSWとしての感性を磨いていくという感覚がめちゃくちゃいいなと思います。
野邊拓実(TuneCore Japan):アーティストとしての音楽の追求に対するアプローチと、アイドルとしての見せ方の追求みたいなところのバランス感覚が素晴らしいですね。
──このスタンス/立ち位置に憧れる女性ってすごく多いんじゃないでしょうか。
堀巧馬(TuneCore Japan):すごいあると思う。
野邊拓実(TuneCore Japan):YouTubeも5万人近くのチャンネル登録がいますからね。
DJ DRAGON(BARKS):この規模ではもうブレイクしていると言っていいですね。あとは世界観じゃないですか?ちょっとK-POPアーティストのソロみたいな感じですよね。かっこいい系アイドルっていうか、例えば重盛さとみとかが近いのかな。
──ちょっとヒップホップ風味なラップが入っている点もそれを思わせるのかな。アーティスト写真もカワイイ系ではなくカッコイイ系ですし。
野邊拓実(TuneCore Japan):そうですね。ライブ動画を見ると、もうちょっと可愛い系な印象を受けるんですけど、アーティスト写真にはかなりクール感がありますね。
堀巧馬(TuneCore Japan):海外のプロデューサーとか海外アーティストとガンガンコラボして欲しいですね。
DJ DRAGON(BARKS):そうだね。そういう活動がいいね。そう考えたらトラック命だね。
──TuneCoreの中には、ブレイク待ちどころかブレイク済みというアーティストもたくさん潜んでいるわけですが、motorpoolというアーティストもいつブレイクしてもおかしくないと思うんです。
──男女2人のユニットなんですけど、2人ともシンガーソングライターで合計持ち曲は500曲を超えるんです。シンガーソングライターって、よくも悪くも個性が強くDIYで完結するがゆえのSSWだと思うんですが、そういうふたりがユニットを組むスタイルって珍しくないですか?
堀巧馬(TuneCore Japan):ふたりともシンガーソングライターは珍しいですね。よくある2人組ってどっちかが制作担当で、もうひとりが歌唱担当って感じですけど。
──YOASOBIもCreepy Nutsも、B’zもざっくりそうですね。
堀巧馬(TuneCore Japan):でもmotorpoolは、どっちも作ってどっちも歌っているんですね?
──そうなんですよ。下手したらコンフリクトすると思うんです。
野邊拓実(TuneCore Japan):コライトしているんですかね?
──どうなんでしょう。少なくとも相性はいいんでしょうね。お互いに自分のないところを持っているとか、引き出しが違うとか。
野邊拓実(TuneCore Japan):いわゆるケミストリーみたいなものがあったんでしょうね。それにしても500曲って半端ないっすよね。すごいです。
──プロフィールによるとメンバーは北海道出身で、男性が西川真琴、女性が山崎あおい…え、山崎あおい? あー、山崎あおいじゃないですか、気が付かなかった。これは失礼しました。
DJ DRAGON(BARKS):1993年生まれで慶應義塾大学だそうですよ。
野邊拓実(TuneCore Japan):あ、私と一緒だ。歳も同じだからキャンパスで会っているかもしれない。環境情報学部だから湘南藤沢じゃないですか。めちゃめちゃかぶってる。
──絶対キャンバスで会っているでしょ(笑)。
堀巧馬(TuneCore Japan):motorpoolの楽曲クレジットを見ると、曲によって作っているのはどちらかに分かれているので、コライトしているのかどうかはわからない。それぞれに色が違うでしょうから、2色あるアーティストユニットみたいな感じなんでしょうね。
──それを2人でパフォーマンスするんですね。お互いSSWとして信頼とリスペクトが強いという。
堀巧馬(TuneCore Japan):ですよね。そもそもソロでできる人たちなんだから、やりたきゃフィーチャリングで済むわけで、motorpoolというユニットを組んでいることに意味があるんでしょう。
──バンドマンがバンドを組むみたいに、SSWがバンドを組んだ、みたいな感覚かな。
野邊拓実(TuneCore Japan):ありえますね。僕も自分で曲を作っている時、たまに「なんかこれ、僕が歌わない方がいいな」「女性に歌ってほしいな」みたいな瞬間ってあったりするので、それをちゃんと実現する座組を持っているみたいなことかもしれないです。新しい形ですね。
──なるほど。SSWが密かに抱える悩みのようなものがあるとしたら、それを解決してより楽しく活動していくひとつの形かもしれない。
野邊拓実(TuneCore Japan):関係あるかわからないですけど、ソロで活動しているアーティストと話をしていると、ひとりでずっと曲を作って自分で活動していて孤独感を感じるみたいな話がちょいちょい出てくるんですよ。もちろんエンジニアとかプロデューサーとか関わるプロジェクト・メンバーはいるにしても、バンドと違って運命共同体のような立ち位置ではないので、孤独感から辛さを感じてしまうという。そういう意味では、「人とやるっていうのもいいのかも」とか「凄い楽しいかも」みたいなのに気付いてしまったのかもしれない。
──それでもSSWとしてのアイデンティティは失っていないし。
野邊拓実(TuneCore Japan):そう。アーティスト写真もジャケットのアートワークやミュージック・ビデオの感じもきちんとデザインされていて、いいですね。

motorpool
──500曲ありますから堪能できますよ(笑)。
野邊拓実(TuneCore Japan):作曲している数って「強さ」だと思うんです。もちろんそれだけじゃないですけど、やっぱり素振りの数ってちゃんと結果に出ますから、この500曲というのは、どのアーティストにも見習ってほしい点だなって思います。
──簡単にできることではないですよね。
野邊拓実(TuneCore Japan):500曲だなんてできることじゃないですよ。色々なところから影響も受けていると思います。500曲というそのアウトプットの数とは比べ物にならない数のインプットをしているはずですから。
堀巧馬(TuneCore Japan):なんで普通にチャートインしてないんだろうって思っちゃいますね。大発見ですよ。
野邊拓実(TuneCore Japan):なんでこの人たちのことを誰も教えてくれなかったの、みたいな怒りを感じたりして(笑)。
DJ DRAGON(BARKS):確かにイケてるな。
堀巧馬(TuneCore Japan):調べてみたら、2024年発売のミニアルバム『LIFE』はトルコのTunes Storeで2位を獲ってますよ。
──凄い。ライブを見てみたいなあ。
野邊拓実(TuneCore Japan):確かにそうですね。ライブ見てみたい。
DJ DRAGON(BARKS):基本はアコースティック・ギターを持って歌ったりしているけど、キーボード弾きながら歌って、パソコンのデスクトップを前に置いてやっていたりもしていて、フレキシブルだね。なんかおもしろいな。ちょっとスウェーデンっぽい感じもするな。
──ぜひライブの機会を探しましょう。楽しみがまたひとつ増えましたね。
協力◎TuneCore Japan
取材・文◎烏丸哲也(BARKS)
Special thanks to all independent artists using TuneCore Japan.
浜野はるき
2000年生まれ福岡出身のシンガーソングライター 毒っ気溢れる官能的でリアリティのある歌詞とトレンド感のあるメロディ、 小悪魔系のビジュアル、またセルフプロデュースによるライブパフォーマンスなど 今Z世代の女性を中心に人気急上昇中! 『Princess GaL』や『CuL』『ギジコイ』を中心に総SNS投稿数は約30,000 / SNS総再生回数は3憶回を突破。 活動当初より掲げてきた目標は「全ての女性の味方でいる」こと。 2024年11月2日に初ホール公演”Blooming”を開催しソールドアウト。 2025年5月より初の全国7都市ツアー”SUPER SONIC”の開催が決定している。
◆浜野はるきページ(TuneCore Japan)
motorpool
北海道出身の男女2人による”シンガーソングライターユニット”、motorpool(モータープール)。それぞれが作詞・作曲を手掛け、合計した持ち曲は500曲を超える。 ソロアーティストとしても全国ツアーを行うなど、積極的な活動を続けながら2018年1月、始動。 活動開始直後に配信した自主制作EPが、iTunes J-POPアルバムランキングで13位を記録。 同年11月には初めての全国流通盤『will be』をリリース。充電期間を経て、2024年1月に3rd mini album『LIFE』をリリース。
◆motorpoolページ(TuneCore Japan)