【インタビュー】菅叶和、「Papa」で向き合った喪失と愛、父から届いた“いつでも君の味方”を歌に

『ラブライブ!蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ』の大沢瑠璃乃役などで活動する声優・アーティスト、菅叶和のニューシングル「Papa」が、2026年8月15日にデジタルリリースとなった。
「Papa」は、菅が高校時代に亡くした父への想いを初めて正面から歌った、自身にとって最もパーソナルな楽曲だ。リリース日の8月15日は父の誕生日でもある。
この曲は、シンガーソングライター/プロデューサーのKaz Kuwamura(Da-iCE「CITRUS」、西野カナ feat.NiziU 「LOVE BEAT」、Snow Man、ITZY、timeleszなど)と共作した。企画・立案から制作までをインディペンデントで手がけた、完全自主制作のドラマチックなバラードとなっている。
今回は菅叶和に、「Papa」が生まれるまでの経緯、『ラブライブ!蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ』と大沢瑠璃乃役とともに歩んだ時間、父への想い、ジャケットやミュージックビデオの制作、そして初のソロライブZeppツアーに向けた決意を聞いた。

──今回の新曲「Papa」聴いてとても驚きました。亡くなられたお父様のことをストレートに歌われていて、心を打たれました。
菅叶和:今までも自主制作でいろいろな楽曲を作らせていただいていたのですが、今回の楽曲は、これまでお話ししていなかった、高校時代に急逝した私の父への想いを、初めて曲にしました。父のがんが判明してから、約10年、闘病生活と別れを経験しました。父に対してずっと感じてきたことや見てきたことを書きためていた、スマートフォンのメモやノートを全部さらけ出して送らせていただきました。その言葉をもとに歌詞を書き、Kaz Kuwamuraさんに構成していただきました。自分にとってとても大きな出来事で、今も受け止めきれてないですし、人に話すことも無かったのですが、やっと、言えるようになったというか、歌でなら向き合えるようになったと思いました。
──今までとは違った曲だと思うのですが、どういった経緯でこの曲を作ろうということになりましたか?
菅叶和:最初にKazさんとお話をさせていただいて。完全に直感といいますか、その時に「この楽曲は今作るべきなんじゃないか」と強く思ったんです。計画的に「今作りたい」と考えていたというよりは、出会ってから「今、作らなきゃいけないのでは」と感じた、というのが近いです。
──自分の心の内が綴られたノートをさらけ出されたんですね。
菅叶和:送ってはしまったけれど、世に出す言葉としては、とても直接的でトゲトゲしていないかなと不安になるワードもありました。それこそBメロの「死にたいと言ってるやつの心臓を抉り取って 生きたいと言ってるやつに与えたい」という部分です。書いたのは高校時代の荒れている時期でした。そういうものを形にすることの良し悪しも教えて頂きました。それこそ「死にたい」のところは、「この言葉を使っていいのだろうか」と相談をしました。すごく丁寧にいろいろなお話をしてくださって、私自身も飲み込めましたし、日記のように書きためていたものを歌詞として一曲にすることができました。

──これまでのように題材を歌うことや、役を演じるように歌うこととは違いましたか?
菅叶和:逆に、どうやって歌おうかというのがありませんでした。素直に歌っているだけで、感情がすごくこぼれてきてしまう楽曲でもありました。それを一曲の中にどこまで収めるか。出しすぎないようにすることを、レコーディング中に意識した場所もあったと思います。
──サウンドやメロディーについて感じたことを教えてください。
菅叶和:フルコーラスのラフを初めて聴いた時に、歌詞ファーストにしていただいていると、とても感じました。私の言葉を違う言葉に変えることもできたはずだと思う部分も、そのまま使っていただいていて。それがメロディーにもまっすぐ出ていると感じましたし、とても嬉しかったです。だからこそ、気持ちが乗るのだろうなというところもありました。個人的には「この気持ちが一曲に収まるのかな」と思っていたのですが、サビで「Papa」というワードですべてを歌うからこそ消化できる、という新しい扉を開けてくださいました。
──Kazさんもいらっしゃるので、お聞きしたいです。
Kaz:言葉にならないPapaへの想い、表現者としての感情の昂まりを、無理やり言語化だけに頼らず、メロディーと言葉の響き、歌に託しました。
──サウンドも含めて全体のプロデュースにおいて、どう感じられましたか?サウンド面でも意識されたこととか。
Kaz:真っ直ぐに向き合う中から出てくる言葉はアーティストの人間性、リアリティーを反映して強いメッセージになることを教えてもらった気がします。編曲に入ってもらった細井涼介さんとも綿密にやりとりする中で、楽曲のメッセージと菅さんの声を最大限に伝えるためのドラマチックなサウンドになったと思います。
──菅さんは、完成した音源を聴いて何を感じましたか?。
菅叶和:最初は冷静に聴けなかったのですが、どんどん聴いていくうちに、父が亡くなる前の闘病期間から、亡くなってしまってからの数年間まで、すべてを一曲にしたと感じました。

──『ラブライブ!蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ』大沢瑠璃乃役で声優デビューをされて、役として歌いながら、並行してソロ楽曲も発表してきました。役と自分自身との関係について、どのように考えていますか?
菅叶和:得られたものはとても多いです。自分自身のスキルアップになったものもたくさんありますし、自分のやりたいことをやっている子たちが、本当に光り輝いているので。だからこそ、自主制作をしたいという夢も背中を押してもらえたのかなと思います。
──これまでのソロ楽曲には、声優活動と菅さん自身はどのようなバランスで表れていたのでしょうか。
菅叶和:今までは「どんな楽曲を皆さんに届けたら喜んでくれるかな」ということを考えていました。「エウレカ」と「涙のにおい」という楽曲があって、「涙のにおい」に関しては、父との別れがきっかけとなってできた曲ではあるのですが、それを少しマイルドにしながら、皆さんにとってのお別れに寄り添いたい、という思いが強く出ていたと思います。「エウレカ」に関しても、自分が担当しているコンテンツが、卒業だったり、出会いと別れだったりを、とても多く経験するコンテンツだと感じていました。それに通じるものが影響していたのかなと、聞き返してみると思います。「わたしラグジュアリー」は、大学時代の自分をさらけ出すような楽曲にさせていただきました。「片耳ラブフォン」もそうですね。ひとつひとつコンセプトはあるのですが、初期の2曲は、声優活動を経た自分が多く出ている気がします。
──これまで「お別れが苦手」とお話しされてきた背景には、常にお父様のことがあったのでしょうか。

菅叶和:「お別れが苦手」ということは、ずっとお話ししていました。「エウレカ」と「涙のにおい」は、出会いと別れというテーマで作らせていただいた2曲です。コンテンツの活動でも、お別れがあったり、新しい出会いがあったり、一生の別れがあったり、いろいろな別れがあるよね、という話はさせていただいたことがあります。ただ、深く語ったことは今まで一度もありませんでしたが、常に奥底にはありました。それをさらけ出すタイミングではないと、ずっと思い続けていました。「お別れが苦手なんだよね」ということは皆さんに伝えていたのですが、その起点となるものが、今回の曲で初めて分かっていただけるといいますか。今までふわふわとしていたものの答え合わせができる楽曲に、これまで応援してくださった方にとってはなるのかなと思います。
──そんな「過去」と言えないようなお父様への想いは「Papa」の中に沢山詰まっていますね。
菅叶和:1コーラス目は、今も想い出すと辛くなる父の闘病中の時の記憶ですし、2コーラス目は、20歳の朝に、10年前のパパからタイムカプセルが届いた時のことを歌っています。汚い文字で『いつでも君の味方』って書いてあるのを見たとき、残された私の孤独までパパは分かっていたのかなって思いました。
──どちらも、心をえぐるような強い言葉とエピソードです。後半に登場する「ぽっかりと大きく開いた 心の穴はきっと あなたがたくさん愛してくれた 何よりの証拠なんだと気づいた」という箇所は、Kazさんも、特に印象に残っているフレーズとして挙げられています。
菅叶和:この手紙があったから、悲しい別れの記憶と孤独に飲み込まれず、しっかり歩いているので、それを今の報告として後半で歌いました。
Kaz:今もまだ過去形になっていない深い悲しみを経てたどり着いたとても美しい「救い」のフレーズだと思いました。喪失感を単なる悲劇として終わらせず、それ自体をお父様からの「愛の証拠」だと捉え直した彼女の心の旅路を、曲の中で一緒に感じてもらいたいと思います。

──ジャケット写真には、子どもの頃に描いたお父様の絵が使われています。
菅叶和:いろいろな時に描いていたものがある中で、あの絵が一番、自分の中でグッときました。たどっていくと、闘病生活の前から、父はいろいろなものと戦ってきたイメージがあります。病気だったり、いろいろな夢も抱えていた人だったので。ジャケットに関しては、自分の絵を使うのか、それとも父のイメージをイラストレーターさんに共有して作っていただくのか、いろいろな選択肢を考えました。ただ、ここまで自分の父のことを歌わせていただいた以上、私が描いたものの方がいいのではないかと思いました。昔の箱を探したり、今も残っている父の部屋で、父が大切にしていた宝箱を開けたりしました。そこにたくさん絵が入っていたんです。その中でも、あの絵が個人的に一番良かった。手をつなげるなと思ったんです。写真に写っている私の手と、私が描いた父の絵の手が、つないでいるように見えたので、一番いいのではないかと思いました。カメラマンさんにも頼まず、自分で父の部屋や私の部屋、家の中の思い出がある場所、公園などに行って撮りました。アットホームな環境で撮らせていただいたので、これまでとは違う意味で力を入れました。誰かに頼むというよりは、自分自身ですべてを解決しようという形で作らせていただいた、初めてのジャケットになったと思います。
──お母様とは、ジャケットに使う絵を一緒に探したそうですね。
菅叶和:母も私と一緒で、まだ飲み込めていない部分があるのだろうと、今も感じています。楽曲を一度だけ聴いてもらったのですが、その時にふと「作詞がかんちゃんなのがいいね」と言ったくらいです。「私の気持ちが形にできたならよかったね」くらいで、多くは今も語っていません。自分にも恥ずかしさがあるのかもしれません。リリースしてから、母といろいろ話す時間があるのではないかと思っています。母は結構オタクマインドで、普段は私が「こんな楽曲を作っているよ」と共有すると、いろいろと話すんです。ただ、今回は初めて、お互いに深く言葉を交わさず、探り合いながら、それぞれが少しずつ言葉にしていくような感じでした。ポツリ、ポツリと。母も途中で「もう仕事に戻るから、自分で選びな」と言って、いろいろと出してきてはくれたのですが、それ以外は私に任せてくれました。それも母なりの優しさだったのかなと思います。普段は全部手伝ってくれるタイプなのに、今回初めて任されたので。母もいろいろと思うことがありながら、この楽曲を支えてくれたのだと感じて、逆に心が温かくなりました。
──ミュージックビデオについても教えてください。
菅叶和:ミュージックビデオに関しては、父の話題を友達にも話せない私だったので、佐久間よるさんに頼むことにも最初は躊躇していました。佐久間さんには、「エウレカ」のリリックビデオを作っていただいたり、かなり深く関わらせていただいていました。だからこそ、すごく話しづらかったんです。「何と頼めばいいのだろう」「これを形にしたいけれど」と、ずっともごもごしていました。でも、Kazさんに「この楽曲はミュージックビデオとしても絶対に形に残した方がいい」と背中を押していただきました。そこからはトントン拍子でお話が進みました。1週間少しくらいで、簡単なフル尺のラフを作っていただいたんです。それを見て号泣しました。最初は冷静に見られませんでした。佐久間さんにも、父の写真や家族写真を送って、本当に深く、すべてを話しました。「この歌詞はいつ書いたの?」「どんな風景の中で書いていたの?」と、いろいろ聞いてくださいました。それもあって、自分自身のアルバムを見ているような映像になりました。私自身は冷静に見られなかったので、Kazさんや、佐久間さんの周りの方など、冷静に見られる方々の意見をお借りしました。誰が見ても、心に響くリリックビデオ、ミュージックビデオになったと思います。逃げずに、きちんとミュージックビデオとして作ることができて、本当によかったと思っています。

──初のソロライブZeppツアーについて教えてください。
菅叶和:KT Zepp Yokohama公演はソールドアウトしました。追加公演のZepp Osaka Baysideでは、横浜とはまた違ったものを届けたいと思っています。大阪という土地を生かして、少しはちゃめちゃなライブにしたいです。セットリストも変えて、いろいろなことに挑戦しながら、皆さんをハッピーな気持ちにできたらと思っています。
──菅さんのライブは、どのような楽しみ方ができるライブになりそうですか?
菅叶和:いい意味で、やりたいことがたくさんありすぎるんです。「こんな楽曲をやりたい」「あんな楽曲を作りたい」と、本当にいろいろなものがあります。だから、「おもちゃ箱のようなプレイリストだと思ってほしい」と、ずっと言っています。その日の気分でおもちゃ箱を開けて、「今日はこれで遊びたい」と思ったものを聴いてほしいし、遊んでほしいと思っています。初めて来た方にも、今まで応援してくださっている方にも、必ずどこかで「楽しかった」と思ってもらえる部分を作りたいです。音楽の中でも、MCの中でも、皆さんひとりひとりとコミュニケーションを取れるようなライブになったらいいなと思っています。
──「Papa」を観客の前で歌う時のことは、制作中やレコーディング中に想像しましたか?
菅叶和:そこまでは想像していませんでした。レコーディングの時に、一番、自分自身がまず向き合わなければいけない楽曲だと思ったので、あえて考えませんでした。自分勝手とは違うと思うのですが、本当に自分自身のすべてを込めました。いい意味で、皆さんに寄り添うということを一度遮断して、自分自身と向き合った楽曲でした。自分と戦って向き合った楽曲が、いろいろな方の、いろいろな風景に刺さればいいなという、また違う寄り添い方だと思っています。これをパフォーマンスさせていただく時に、どんな風景が見えるのか、どんな気持ちで歌えるのか、正直、想像がついていません。こういうことは初めてかもしれません。これまでの楽曲では、「こんな感じでみんなを巻き込みたい」「こういうことをやりたい」と思いつくことが多かったんです。今回はそれが、いい意味でないので、「どうなるんだろう」という点では、一番未知数だと思います。ぜひ、そこも楽しみにして聴きに来ていただきたいです。
──お母様もよくライブに来られるそうですね。
菅叶和:めちゃくちゃ来ます。ものすごく応援してくれていて、いろいろなところに来てくれます。チケットを勝手に取っていることも多くて、びっくりします。母はペンライトを全力で振りたいらしいんです。本当に全力で応援してくれていますね。
──「Papa」も、お母様が来ているところで歌えるといいですね。
菅叶和:歌えたら嬉しいと思います。
──もう少しラフな話題もしておきましょうか(笑)、最近ハマっていることや、楽しかったことなどはありますか?
菅叶和:最近は、ひとりでいろいろなところに行くことに、すごくハマっています。最近楽しかったのは、スシローとキティちゃんのコラボをやっていて、欲しかったキティちゃんのキーホルダーがもらえたことです。
──お寿司は何が好きですか?
菅叶和:サーモンやえんがわが好きです。あとは、本当に昨日の話なのですが、肉じゃがを作ろうとして、ジャガイモを買ってきたんです。そのジャガイモがすごく緑色になっていて、「そういう品種なのかな」と思いました。一応Xで聞いたら、みんなに「毒だからやめてくれ」と言われて、本当に一命を取り留めました。
──危なかったですね。
菅叶和:危なかったです。本当に使おうとしていました。「もう少しむけばいいのかな」とか、いろいろやりようがあるのかなと思っていたのですが、まだ自炊を始めたばかりなので。そういうことがありました。
──最後に、今後の活動を楽しみにしている人たちへメッセージをお願いします。
菅叶和:いろいろな方々に、今後の私の音楽人生も楽しんでいただきたいです。今はインディーズで活動していますが、もっと大きくなるために、もしかしたらデビューすることもあるかもしれません。まだまだ、いろいろなやり方や伸びしろがあると思っています。ぜひ、応援し続けていただけたら嬉しいです。皆さんに、もっと素敵な楽曲をたくさん届けられるように、今後も精いっぱい頑張りたいと思います。

取材・文:脇田敬
写真:たなかあゆみ
インタビュー・撮影場所:Studio 126 Tokyo(Amazon Music Studio)
菅叶和 「Papa」

2026年8月15日(土)配信
https://linkco.re/fFrcbD2U
作詞:菅叶和, Kaz Kuwamura 作曲:Kaz Kuwamura, 細井涼介 編曲:細井涼介
プロデュース:Kaz Kuwamura
<Kan Kanna First Solo Live Zepp Tour【菅叶和 NEW BORN LIVE】>

2026年11月19日(木)
@KT Zepp Yokohama(SOLD OUT)
2027年1月11日(月・祝)
@Zepp Osaka Bayside
FCプレミアム2次先行(抽選)
申込対象者:FC「菅缶」プレミアム会員さまのみ
受付期間:2026/08/29(土)12:00〜2026/09/06(日)23:59
当落発表日時:2026/09/09(水)18:00
入金確定日:2026/09/14(月)
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