【コラム】BARKS烏丸哲也の音楽業界裏話062「凄いものを観た」

2026.03.24 12:10

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凄いものを観た。音楽の神様が微笑んでいるみたいだった。2026年3月23日、渋谷 duo MUSIC EXCHANGEで行なわれたNo.MEN(ノーメン)のライブだ。

大げさに聞こえてしまうだろうけど、まさしく奇跡のバンドだと思った。メンバーは4人。平均年齢18歳という名古屋で結成されたガールズバンドで、Cocona(G, Vo)の妹Nina(Dr)に至っては14歳だけれど、「君たちは前世含めてミュージシャンを何周やってきたんだい?」と問い正したくなるような音を発していた。目が点になった。

Cocona(G, Vo)
Uri(B)
Rima(Key)
Nina(Dr)

音のコントラスト、ダイナミクス、音の隙間の掌握さが天才的で、彼女たちが紡ぐ音楽は常に威風堂々としていた。彼女たちのルーツにはゴスペルがあるというけれど、オルタナティブで何よりファンキーだ。一部にはシューゲイザーのような質感もあったけれど、音の壁で音像をにじませるような志向は一切なく、極めてタイトでノイズで空間を埋めることもない。そこには都会的なシティポップ感もあるけれど、典型的なJ-POPやJ-ROCKとは一線を画したブラックミュージックからネオソウルのような質感が漂う。クリアで音像がはっきりしているがゆえに、肉感性の生々しさもあるけれど、感情直球型なストレート・ロックに見るような飛び散る汗とは全く異質な音楽的知性がほとばしる。前世でどれだけ音楽を鳴らしたんだ?と問い詰めたくなる点はここにもある。

受験を終えたRima(Key)が3月20日に復帰し、初の東京公演となったライブだけれど、この日のステージから放たれたサウンドは、リズムの揺れもコーラスの乱れも全てが音楽表現の範疇に収まり、ミスさえもすべて許される魔法がかかっていた。Uri(B)がオートワウをかけテンション高きスラッププレイを繰り出した時、勢い余ってリズムが走ったのだけれど、Cocona(G, Vo)とUri(B)が一瞬のアイコンタクトを取っていた。「おや?」「いっちゃったよエへへ」「(笑)」という、音楽を楽しむ会話が見て取れた。

4人とも、とにかく丁寧に音を紡ぐ。抜群のリズムとアンサンブルだったけれど、針の穴に糸を通すように打つべきところに音を打つ。ひとつひとつの音を確かめるように、音を発する。だから各楽器から紡がれた横糸と縦糸はあるべき形で織り込まれ、しなやかで強靭な音楽になる。そんな当たり前を丁寧に積み重ねる姿がそこにあった。

日本のロック史に刻まれるだろうアーティストの誕生であることを確信した。

photo by Michael Helms

<No.MEN ライブ>

2026年3月23日(月)
ライブイベントPassing Point @渋谷 duo MUSIC EXCHANGE
1.Unlovable
2.GAME
3.Setelan
4.黙示録
5.斜陽
6.Hug
7.surrender

◆No.MENオフィシャルサイト

文◎烏丸哲也(BARKS)

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