【ライブレポート】MADMED、一周年で迎えた美しき終幕「これからも皆さんの心に寄り添い続けられますように」

「1年ちょい前くらいにこの景色を見たんですけど……。このメンバーとこのステージに立てて、本当によかったと思います」
アンコールあとの最後の挨拶、那月邪夢はそう口を開いた。2025年1月7日、MAD MEDiCiNE現体制最後の公演<The Quintet>をLIQUIDROOMで開催。そして同月27日に始動した新体制グループ・MADMEDとして、7月に同じくLIQUIDROOMで<MADMED 7大都市単独ツアー 『激毒ケミカルトリップ』>ツアーファイナルを開催した。グループの形を変え、馳せる想いも大きく変わっていったであろう3度目のLIQUIDROOMでのワンマン。彼女がステージから見る景色はどのように映っていたのであろうか。

2026年1月27日、恵比寿LIQUIDROOMにて、活動開始から1周年を迎えたMADMEDは終幕した。
「聞かせてください! 行こうか!」
邪夢の邪悪な雄叫びで、フロアから一斉に声と腕があがった。不気味なSE「Doctor….!!!!!!」で登場した黒を纏った6人。この日のための新衣装だ。コンセプトミニアルバム『僕の暴力カルテ』の白い衣装も斬新だったが、やはりMADMEDは黒が似合う。ラストライブは「MAD DOCTOR」でスタートした。奇妙で禍々しいデジタルサウンドが響きわたり、おびただしい数の光の筋が織りなす下、歌い踊る6人。そのキレのあるパフォーマンスから、このライブにかける想いが1曲目から存分に伝わってきた。

「皆さんお待たせしました、私たちMADMEDです。本日が本当にラストライブ、最高のハッピーエンドを迎えるかァァァ!?」
オーディエンスの士気を煽っていく邪夢。「まじかるはっぴえんど」「アシストール」と、狂気のサウンドとアッパーなビートが襲いかかる。妖艶な歌声と婀娜めく動きでオーディエンスを惑わしていく甘噛ミ妖メ。そして、デジタルビートに対してジャストに身体の動きを合わせてくる猿馬虎のハンサムなシルエットの対比は美しく、鬼気迫るMADMEDのパフォーマンスは初っ端から圧巻だ。「全員踊れェ!!」さらに容赦なく扇動する邪夢の号令で始まった「黒猫のダンス」を怪しくキメる。

メンバー6人が自己紹介を済ませると、「私ノ人生、台無シ。」へ。恨み節のようで自虐的なようでもあり、その奥にある最愛を証明する歌。アイドルではあまり見かけぬ色香をかぐわせながらドラマチックに演舞していく。大人のようで少女のようでもあり、ねばついた不思議な倍音を持った歌声を放っていく架空使てんるが、妖メと手を取り合うように歌いだしたのは「ケミカルトリップ」だ。アイドルポップスのセオリーを無視した不条理な楽曲展開と複雑で緻密なメロディを、6人はエレガントかつワイルドに紡いでいった。

一変して「せーのでばっきゅん!」と、深ゐ沼とおなかぺこがアイドルらしいキュートな愛嬌を振り撒き、一癖二癖もあるポップネスが奇妙なエレクトロと絡み合いながら暴走していく「インスタントアイドル」、ギターカッティングが暴発した「ときめきオーバードーズ」と続いた。最後の節を妖メが渾身のロングトーンで歌い締めた。

「執着少女はまた汚れる」「歪ナ愛」「フルスウィングバットと子猫」と、『僕の暴力カルテ』の収録曲が続いた。邪夢は前身グループMAD MEDiCiNEからMADMEDへの変遷を“バグ”と粋な表現をしていたが、キャッチーな現代的ガールズポップスを、退廃的なインダストリアルと電子的なボディミュージックエッセンスを加えたバージョンアップは、難度の高い複雑な楽曲の構成と旋律をより引き立たせるに相応しい深化でもあった。そして音楽のみならずその世界観も深淵へと堕ちていった。MADMED始動の際のキービジュアルがマッドサイエンティスト的な世界観であったことも忘れてはならない。グロテスクなビジュアルやMVは、難解なMADMEDワールドをよりカオティックなものとしたのである。

会場全体がフルスウィングで猫になったあとは、「ヒステリックトリック」で踊り狂う。ラストサビへの向かっていく魔王・邪夢の咆哮が、他メンバー5人の情緒に揺さぶりをかけ、フロアを埋め尽くしたオーディエンスの感情と熱量をぐちゃぐちゃにしていく。

思えば、私が那月邪夢を“魔王”と評したのは2023年、<MAD SiCK CiRCUS>のときだ。それより前からMAD MEDiCiNEの存在は知っていたが、このときのツアーでグループが大きく成長を見せたことは言わずもがな、邪夢が大きく覚醒したと思っている。歌やダンスといったパフォーマンスはもちろんのこと、佇まいとシルエットからカリスマオーラを漂わせるようになっていった。さらに、アイドルによるライブの煽りの概念を覆してくれたのも彼女だった。いつしか邪夢の煽りスタイルは多くのアイドルが真似るフォーマットになった。
もっといえば、“那月邪夢”というアイドルアイコンが今やシーンにおける憧憬になっている。そんな真紅の魔王は「毒葬」「アンヘドニア」で狂気と混沌の世界へ堕としていくと、さらに追い討ちをかけるように「最後までMADMEDと一緒に狂っていこうか!」と叫び、「狂躁シェイプシフター」から「MAD GAME」へと、MAD MEDiCiNE時代から引き継いだ渾身のキラーチューンでラストスパートを加速させる。

「これがMADMED、次でラストの曲です。今日のために新曲を用意しました」
邪夢の紹介で始まったのは「死にたいと言えたら」。これまでになかった輝かしいメロディと煌びやかなバンドサウンドに乗せて、これからの6人の希望が放たれた。
悲壮感に溢れたパイプオルガンの響きにいざなわれるようにステージに再び登場した6人。咽び泣くようなバイオリンと悲壮感に満ちたピアノの音色にいざなわれるよう、邪夢が歌いだす。聴き慣れたメロディと歌詞……だが、ゆったりとしていて、壮大な音が拡がるオケ。MAD MEDiCiNE時代からの名曲「眠罪」のバラードアレンジである。ライブタイトルそのままに「眠罪 -DAS ENDE-」と名づけられた壮麗なオルタナティヴバラード。6人は馴染みのある旋律を目に涙を浮かべながら歌いきり、てんると邪夢のフェイクが楽曲の余韻を色濃く残した。

そして、「バイオレンスラブ」と「誰も知らない痣」をアッパーに歌い切った。
ダブルアンコールで6人は1人ずつ、思いの丈を口にした。

「デビューの時は正直な話、賞賛されたものではありませんでした。くそー、泣いちゃいそうだぁ……」そう話しだしたのは虎。絶頂の中でのMAD MEDiCiNE現体制終了であったがゆえ、MADMED始動は賛否両論、いや、虎が言うように“否”の声のほうが多かった。しかしながら実力派メンバー揃い踏みでライブを重ねるごとにその存在感は増していったのである。
「僕たちがステージに立つことで悲しむ人たちが出てきてしまう、そんな状況がありました。自分自身、どうしてステージに立っているのかわからなくなる時もありました。自分がどうしてアイドルをやっているのかわからなくなる時もありました」虎は当時を思い出しながら悔しいような表情で言葉を続ける。それでも応援してくれる人がいたからこそここまでやってこられたのだと、強く述べた。
「僕はこのメンバーみんなとステージに立って、皆さんと作り上げることができたライブハウスが大好きで、これからも僕の中で財産になるんだなと思っております。MADMEDに関わったすべての人がMADMEDを失って後悔してしまうくらい、これからも愛されるグループであったら嬉しいなと思っております」

続いて、MADMEDが初めてのアイドルだったぺこ。「自分は小学校、中学校、まともに学校に行けなくて、何かを続けることができなくて。そんな自分が1年間一度も休むことなくライブに出て、初めてこんなに頑張ったんだと胸を張って言えます。メンバーのみんなのことも本当に大好きで大切で、ガキのぺこを相手してくれて優しくしてくれて本当にありがとう。ぺこは新しいグループでステージに立つ予定はないから、ぺこがアイドルじゃなくなったら新しい大切な人を見つけて、ぺこのことを忘れちゃうのかなとか、そんなことを思うとすごく苦しくて、みんなから離れたくないと心から思います。でもぺこを幸せにしてくれて愛を与えてくれたみんなが本当に大切だかこそ、みんなが幸せでいてほしいと思ってます。おなかぺこに出会ってくれて、アイドルで居させてくれてありがとうございました」

「メンバーのみんな、練習期間含めたら1年半かな、本当にありがとう。ありがとうしか言えん」とメンバーへの感謝から始まった妖メ。アイドルはもうやらないと思っていたが「MAD MEDiCiNEさんの曲を引き継ぐグループ作ります、那月邪夢さんと一緒のグループですと聞いて、絶対ここでやりたいと思ってオーディション頑張って……」当時のことを思い出しながら、邪夢へ「レッスン場で約束したの覚えてる? “妖メをMADMEDに選んだこと絶対後悔させません”って言ったよね。妖メ、MADMEDでよかった?」と問いかけると、「本当に、妖メが入ってくれてよかった」と優しく応える邪夢。

「そう言ってもらえてよかった」と、安堵の表情を見せた妖メは、ダンスを覚えるのも遅く、間違えるし、たくさん迷惑をかけながらもそばにいてくれたメンバーに囲まれて楽しく幸せに活動ができたと。そして、「“妖メ”の名前はアヤメという紫の花が由来なんですよ。花言葉は“良い便り”。またいつか、みんなに便りを届けられたらな。今日でMAD’S iNKを退社するんですけど、たまに思い出して、“ああ、好きだったな”って。そしたら嬉しいです」と感謝で締めた。

グループアイドルを経てソロ活動をしていたてんるは、再びグループアイドルとして活動するつもりはなかった。しかし「那月邪夢のいるMADMEDだったら、こんなカッコいいアイドルがいるグループなら、絶対カッケーから、入ろうって思えた」そう語ると1人ひとりの魅力を、感謝を込めながら述べていく。

「虎は話を聞いてくれるし、誰も1人にしない。ぺこは誰にでも懐くから、1人でいることが多かった自分にとっての支え。沼は多数決をしたときに少数派のことを気にする子。妖メとはありえんくらい一緒にいるからいっぱい喋った。そしてここにいるのは邪夢ちゃんのおかげ。初めて会ったときから本当にカッコいいと思っていた。歌もダンスも表現力も、邪夢から刺激を受けて頑張ってこれた。このメンバーじゃなかったら、絶対こんなにいいグループになってないと思います」そう言い切ると、まだ決めていない今後の自身の活動に対する迷いを正直に口にした。

「私はSNSを趣味でやってるパン屋さんだった。パンをこねる毎日が平凡すぎて、つまらない人生だった」皆が涙ながらに思いを言葉にする中、沼は持ち前の明るさと不思議なキャクター全開の喋りで場を和ませる。「いっそ、いなくなっちゃったら楽かなと思ったとき、憧れていたアイドルになりたいと思った」と。そうして挑んだアイドルだったがデビュー直前に頓挫。そこから出会ったMAD MEDiCiNEに救われたのだと。邪夢に憧れ、同じような髪色をしていたという。

そして臨んだMADMEDのオーディションは落選。その後、紆余曲折あってメンバーになった波乱万丈のこの1年強の出来事を笑いを誘いながら語った。一見、スラッとしたビジュアルと凛とした所作からクールビューティに見える沼だが、喋り出すと独自のワールドを持っており、ハマると抜け出せなくなるまさに“沼”な彼女である。

最後は邪夢。あらかじめ綴ってきた手紙を読み始めた。
「終幕が決まってから月日が経つのがあまりに早くて、気持ちが追いつかずいまだに実感が湧いてません。ステージに立って話してる邪夢はどんな気持ちかな? ちゃんと喋れていますか? これを書いてる邪夢は、今日この日が来ることを受け入れられず夢を見ている気持ちです」
「MADMED新体制になってからの一年間、つらいことも楽しいこともたくさん経験しました。新体制になって、比べられて落ち込むことも多くて、MADMEDを続けていくという責任を負ってみんなを引っ張っていくと決めたのに、傷ついて、前が見れなくなって頑張れない自分が本当に許せませんでした……。弱い自分と戦うことに必死で、余裕がないのにそんな自分に嘘をつき続けて強がることに精一杯になって。いつしかそれが自分の首を絞めていました。そんな人は周りにたくさん迷惑と心配をかけてしまっていて、とても申し訳ない気持ちです。障害を患ってからSNSを休止していて、みんなに忘れられるんじゃないかとすごく不安だったけど、みんながいっぱい会いに来てくれて、ペンライトでMADMEDのことを照らしてくれたおかげで終幕まで頑張ることができたよ」

「そして、こんな自分を受け入れしてくれたメンバーのみんなありがとう。ありがとね、こんなにも頼れる心の広いメンバーに出会えたこと、そしてこんな素敵なメンバーを出会い、応援してくれたみんなにもすごく感謝しているし、とっても幸せです。自分自身、MADMEDの曲に救われて、大好きなメンバーの声、寄り添ってくれる歌詞にいつも生きる理由をもらいました。そんな大切なMADMEDの曲たちが永遠にみんなの心に寄り添い続け、邪夢が救われたように、たくさんの人の心を救ってくれることを願っています。支えてくれたメンバー、MAD’S iNKの皆さん、そしてMADMEDを最後まで愛してくれたみんな、本当にありがとう。心から永遠に愛しています」

そう読み上げると、「本日はあらためて愛に来てくれてありがとうございます。 みんな大好き〜!」と満面の笑顔を見せた。
会場は大きな大きな、あたたかい拍手が響き渡った。

「この大切な曲たちがこれからも皆さんの心に寄り添い続けられますように!」
邪夢の言葉から届けられた「眠罪」、そしてオリジナルの“邪夢MIX”が轟いた「らぶぎみ」、とMAD MEDiCiNEから受け継いだキラーチューンが続き、ラストに贈られたのは「完全犯罪※420」だ。三ヶ月の命から、MAD MEDiCiNEへ。MAD MEDiCiNEから、MADMEDへと大切に引き継がれてきた、所属事務所MAD’S iNK始まりの曲である。

「出会ってくれてありがとうー!」
邪夢がそう叫ぶと、6人揃っての最後の言葉がLIQUIDROOMに響き渡った。
「それでは、以上私たち、MADMEDでしたぁー!」

取材・文◎冬将軍
写真◎ミヤタショウタ、冨田 味我
セットリスト
Doctor….!!!!!!
MAD DOCTOR
まじかるはっぴえんど
アシストール
黒猫のダンス
私ノ人生、台無シ
ケミカルトリップ
インスタントアイドル
ときめきオーバードーズ
執着少女はまた汚れる
歪ナ愛
フルスウィングバットと子猫
ヒステリックトリック
毒葬
アンヘドニア
狂躁シェイプシフター
MAD GAME
「死にたいと言えたら」
En 1
眠罪 -DAS ENDE-
バイオレンスラブ
誰も知らない痣
En 2
眠罪
らぶぎみ
完全犯罪※420



