【インタビュー】鈴華ゆう子、9年ぶりソロアルバム『SAMURAI DIVA』発売「自分にしかできない作品作りを」

鈴華ゆう子が、ソロアルバム『SAMURAI DIVA』を発売した。
現在活動休止中の和楽器バンドのボーカルでもある鈴華ゆう子が、ソロとしてアルバムをリリースするのは9年ぶりのこと。和楽器バンドでの活動、プライベートでの人生の転機など数々のことを経験してきたこの9年を経て完成した『SAMURAI DIVA』は、まさに彼女自身の生き様が詰まった作品となった。
鈴華ゆう子を現すには切っても切れない“和”をベースに、ロックやメタル、ジャズにEDM、はたまたオーケストラまで……彼女にしか作れない楽曲が収録されている本作。どんな想いを込めて制作したのか、たっぷり語ってもらった。
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◼︎これからの世界や日本の状況などにメッセージを届けたい
──豪華なアルバムが完成しましたね!
鈴華ゆう子:実はこのアルバム、1番最初に決めたのってタイトルなんです。いまこの日本において、自分たちが日本人であることの喜びとか誇り、アイデンティティといったものを取り戻して欲しいという思いがあって。それと同時に海外に対しても、日本という素晴らしくてかっこいい国があるんだと伝えたいという思いもあったんですね。子どもが生まれてから次世代のことを意識するようになって、よりそういったことを考えるようになったんです。私には政治的にどうこうするというのは無理ですけど、私自身が“SAMURAI DIVA”というスピリットを掲げて、日本のかっこよさを伝えたいという思いを込めて、この作品を作ることにしました。
──“SAMURAI DIVA”という言葉は、ゆう子さんにピッタリだと思いました。
鈴華ゆう子:和楽器バンドのときには、あまりコテコテなテーマを押し出すことってなかったんですよね。8人で忍者だ、侍だ、とかやってしまうと結構重たいので(笑)。でもソロになったら、そういうあえて避けてきたことをうまく取り入れることができるから、海外の方にもわかりやすい“SAMURAI”というワードに日本人魂を込めて、作品として昇華できたらいいなと思いました。
──アルバム全体を通して、歌手としてのゆう子さんの決意を感じました。
鈴華ゆう子:そうですね、決意の塊ですね。私の中では最悪これが世間にうけようがうけまいがあまり関係ないレベルぐらいに思っています。トレンドを意識するということは後追いでしかないと思っているので、自分にしかできない作品作りを大事にしました。その中で聴いてくださる皆さんが、こういうの欲しかったって思ってもらえるようなものを作りたくて。最初にスプレッドシートに、どういう要素のどういう曲を作っていこうか書き出して、制作を始めました。
──オーケストラの曲を入れたいというのも、最初からあったアイディアなんですか?
鈴華ゆう子:弦楽器は入れようとは思ってました。それは自分がクラシック出身だということからだったんですけど、オーケストラになったのは田中公平さんとのコラボがきっかけです。表題曲「SAMURAI DIVA」の話になるんですけど、もともと和楽器バンドのときに田中さんの方から連絡をくださっていたんです。そのご縁があったので、今回一緒に曲を作りませんかとダメ元で連絡してみたら二つ返事でOKしてくれて。田中さんは「これは僕がいつもやってることなんだけど」って詞先で曲を作ることを提案してくれました。私は詞から曲を作ったことがなくて初めてだったんですけど、できたものを田中さんに送ったら「普通、僕は詞を見たら旋律が上がってくるんだけど、これは初めての経験で、背景のオーケストラサウンドがぶわーっと広がったんだよ」って言ってくださって。
──へぇぇ。
鈴華ゆう子:そう言われたらそれを再現させてもらいたい!って思って。いまってなんでも打ち込みで音を入れられますけど、楽曲に和楽器を使う以上、私はアナログな部分の良さっていうのも追求したくて。オーケストラは大変なんですけど、篳篥と重なったときにやっぱり今回は生のサウンドにして正解だったなと思いましたね。ちょっと話はズレますが、ジャケットの写真も実際顔に着物の染め物職人さんに牡丹の絵を描いてもらって、書も顔の凹凸に合わせて直接書き込んでもらってるんです。デジタルもいいですけど、こういう生の物ならではの良さってありますよね。
──ありますね、素敵です。
鈴華ゆう子:実は詞は3種類書いて。その中の1曲に《SAMURAI DIVA》という言葉が出てくるように書いていたんです。田中さんはその中から2つ曲を書いてみたいと言ってくださったんですけど、今回のタイトルが入っているのでこの曲に決めました。
──この曲は“うたいびと”として生きていくゆう子さんの決意なのかなって捉えたんですが。
鈴華ゆう子:9年前に出したソロアルバムのときはいまより視野が狭くて、和楽器バンドがメインだから、そうじゃなくて裾野を広げるための作品をソロでやろう、って感覚だったんです。でもそこからいろんな経験を経て、いまは自分の周りだけじゃなくて、これからの世界や日本の状況などにメッセージを届けたいという思いが生まれたんです。宗教の違いとかはもちろんありますけど、神の国と言われているこの場所から、私が平和のために音楽という世界共通語を通して叫ぶ天の声──そういった歌詞になっています。
──ゆう子さんのソロで、こういった和を全開にした言葉を使う曲って久しぶりな気がしました。
鈴華ゆう子:確かにそうですね。わかりやすいことも大事ですが、こういった十字架を背負うようなテイストの曲を書くときには、やっぱりこういう方向性になりますね。これより軽くすると、ちょっとチープになってしまうので。和は私と切り離せないものですし、日本人のアイデンティティも詰め込んだ歌詞にしたいなという風な思いもありました。これまでは和楽器バンドがあったから、違う見せ方をしたいと思って和に振り切ったものはソロでやっていなかったんですが、バンドが活休しているいまは私と切っても切り離せない和をあえて切り離す必要もないですしね。
──楽曲を初めて聴いたときの印象も教えてください。
鈴華ゆう子:私は『ONE PIECE』の「ウィーアー!」とか、『サクラ大戦』の「檄!帝国華撃団」っぽい曲が上がってくるのかと思ってたんですよ(笑)。
──あぁ、ちょっとわかる気がします。
鈴華ゆう子:そしたらまさかの、映画一本見たようなミュージカル調の曲でびっくりしました。最初は正直、世の中の人がついてこれるかな、大丈夫かな、とも思ったんですけど、聴けば聴くほど名曲だなと感じ始めて。田中さんも縛りなく曲を作れたことに満足してくださったようです。それと同時に、ここに何の和楽器を入れる、といった和楽器の部分は私にお任せしてもらっていたので私自身も楽しかったです。歌い方も「鈴華ゆう子のいろんな面を一気に見せられるように詰め込んだんだ」っておっしゃっていて。自分だったらこうは歌わないなというところもあるんです。コラボの意義ってこういうところですよね。
──本当にそうですね。
鈴華ゆう子:リード曲としてはキャッチーではないので、普通は選ぶテイストではないかもしれないですが、世の中にはキャッチーなものがたくさんあるし、いろんな選択肢がある中にこういった曲がぽんって出てくるのもチャレンジングで面白いと思っています。

──いや、めちゃくちゃかっこいいですよ。特に、ラスト。
鈴華ゆう子:あれね、最初はああいう風に歌ってなかったんですよ。《安らぎを 今↑》って普通に飛んでたんですよ。田中さんが唯一リテイクお願いしてきたのがここで、「最後は音程とか何も気にしないで、叫びみたいなやつが聴きたい」って言われて。翌日もう一回スタジオに入って録り直して、駆け上がるように歌ったんです。
──やはり田中さんすごいですね。これまでの和楽器バンドにも、ゆう子さんソロにもなかった、インパクトある曲になりましたね。
鈴華ゆう子:ありがとうございます。クラシックも入ってるし、ミュージカルや雅楽の要素、能管や篠笛も入っているので歌舞伎の要素も入っていたり。あ、実はいぶくろ聖志が中棹三味線を弾いています。
──あら!
鈴華ゆう子:この曲には三味線のサウンドもすごくマッチしていて。和楽器バンドでは太棹三味線と言われる津軽三味線を使っていたんですけどそれじゃないし、細竿だと音が細すぎちゃって、中棹三味線がいいんですよね。で、箏の人って箏と三味線両方やることが多くて聖志もそうなんですけど、話している中で「この曲、中棹三味線も合うよね。生で弾いた方がいいからちょっと弾いてみるよ」って提案してくれて。夫婦特権みたいな(笑)。
──いいですねぇ。
鈴華ゆう子:そもそもこの曲では箏が大活躍なんですけどね。本当に参加してくださっている方が豪華なので、ぜひ細かいところまで聴いていただきたいなと思います。
──きっと、曲順も深く考えられてるんだろうなと。2曲目にキャッチーな「ケサラバサラ」がくるのも、対比が面白いです。
鈴華ゆう子:曲順も、何度も並べ替えながら考えました。和とメタル、和とR&B、J-POP、ジャズ、EDM……と、それぞれにテーマがあるんですね。その中で「ケサラバサラ」を持ってくる位置は、1番悩んだポイントでしたね。唯一タイアップがついている曲なので、3曲目以内に入れたいっていうのもあったし、「こういうアルバムなんですよ」と提示する位置にも入れたくて。これはダンスチューンのサウンドで、出だしが歌だけで始まりますし、ライブの構成も意識してここに配置しています。
──この曲も、ゆう子さんのソロとして新しい扉を開いた曲だと思っています。初めて聴いたのは6月に開催された<鈴華ゆう子Birthday Live2025 -からくり屋敷->でしたが、突然ゴリゴリにダンスを踊った姿にビックリして。
鈴華ゆう子:あはは(笑)。きっかけはアニメ『ニンジャラ』のエンディング曲っていうタイアップですけど、“子どもに人気”ということもいまやりたいことのひとつではあったんです。だからなるべく子どもにも親しみがあるサウンドで、ドラムじゃなくてリズムでお願いしますというオーダーをして出来上がった曲です。くのいちをテーマにしたわかりやすいテイストに仕上がっていますね。







