【インタビュー】あみゅり、『名探偵コナン』新オープニングテーマに起用された正体不明な現役高校生の決意「見返したい。音楽を失ったら私じゃなくなる」

2025.08.02 12:00

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17歳の現役高校生。作詞作曲に加えて編曲も自ら手掛けるシンガーソングライター。2024年1月よりTikTokにて配信開始。すでに60曲以上のストックを持つ。2025年5月発表のデビューシングル「花いちもんめ」が短期間で再生回数100万回超え。その1ヶ月後に新曲「Poker Face」がTVアニメ『名探偵コナン』のオープニングテーマに起用。出身地や本名は非公開。……現在まで、その素性は一切明かされておらず、顔出しもしていない。果たして、あみゅりとは何者なのか。

TVアニメ『名探偵コナン』の新オープニングテーマ「Poker Face」は、長い歴史を持つ同アニメのテーマソングとしては斬新な音楽性が賛否両論を巻き起こし、TikTok論争が勃発。配信開始からわずか1週間でTikTok再生回数850万回を突破した。話題性という面では飛び抜けた感があるが、注目すべきはその音楽世界にある。デビュー曲からして、マスタリングにケンドリック・ラマーを手がけるエンジニアのマイク・ボッツィを起用するなど、サウンド面にも強いこだわりを持つセルフプロデュース型アーティストの個性は、サウンドもリリックも強烈で破格だ。

「友達とか、誰にも音楽活動のことは言ってないんです」という正体不明のアーティスト、あみゅりの初インタビューが実現した。音楽との出会いからTVアニメ『名探偵コナン』の新オープニングテーマに抜擢されるまで、そして高校卒業となる2026年3月まで毎月1作リリースを予定している未来について、彼女の歩みを詳しく訊いた初公開ロングインタビューをお届けしたい。

   ◆   ◆   ◆

■外に出ないし、誰にも会いたくない
■でも、何かやらなきゃいけないとは思ってて

──今回、どうして取材を受けてくださったんですか?

あみゅり:これまではあまり情報を出してなかったんですけど、この取材を通して、皆さんに少しでも私のことを知っていただけたらなと思って。

──嫌じゃないですか?

あみゅり:全然嫌じゃないんですけど(笑)、初めてのインタビューなのでめっちゃ緊張してます。

──では改めて、音楽との出会いからお伺いできますか?

あみゅり:あまり大きなきっかけはなくて。母からは「小さい頃から、歌うことが大好きな子だった」ということはよく聞いてます。音楽を聴くこと、歌を歌うことが当たり前で。物心ついた頃からはもう音楽が大好きでしたね。

──どんな音楽を聴いてましたか?

あみゅり:母の影響で、B’zさんや大黒摩季さん、松田聖子さん、中森明菜さん、プリンセスプリンセスさんとか。’90年代の曲を聴いて育ちましたね。あと、カラオケでよく歌ってたのはREBECCAさんの「フレンズ」とか、工藤静香さんの曲とか。当時、すごく耳と記憶力がよくて。一回聴いたら覚えちゃうので、とにかく母がカラオケで歌ってる曲を全部覚えて歌うっていう感じでした。

──昭和の曲が多いですが、小学生の頃はどんな子供でしたか?

あみゅり:とにかく目立つことが好きで、リーダーシップを取りたいタイプでした。小学校6年間は学級委員長や音楽委員長をやったんですけど、友達は多いタイプじゃなくて、一人か二人。自分では気付いてなかったけど、はたから見たら、いじめだよねみたいなこともあったみたいで。教科書を隠されたり、机に死ねって書かれたり……。

──それは、ひどいいじめじゃですか。

あみゅり:でも、自分はそれを悲しいとは思わなかったんですよね。“なんだろ、これ?”くらいにしか感じてなくて。親が先生に呼び出されたりもしたんですけど、“みんなが怒られちゃうのかな。かわいそう”みたいにしか思わなかった。でも、それってたぶん、幸せなことですよね。いじめられているって気づかなかったし、それをいじめって思わなかったから。小学校の時はそんな感じでした。

▲「Poker Face」MVより

──でもそれは、感情にロックがかかってしまってる「Poker Face」(2025年7月12日発売デジタルシングル)に通ずる部分があると思います。中学時代はどうでしたか?

あみゅり:最初は小学生からの名残りでリーダーシップを取りたい人間だったんですけど、入学して、私じゃなくて、他の男の子がいじめられてたことがあって。そこで自分の正義感を振りかざしちゃって、担任の先生や部活の顧問にチクリに行ってしまったんです。で、それは当然、周りから嫌われるわけで。そこで初めてちょっと怖いって思ったんですよね。自分に何かされたということはなかったけど、あまり目立たないようにしようと思っちゃって。そこから、人目を引くことはできるだけ避けるようになりました。リーダーももちろんやらないし、どちらかというとおとなしい感じの子になっていったのかな。

──当時、音楽とはどんな距離感でしたか?

あみゅり:母親とカラオケに行って歌うっていうだけでしたね。生活がガラッと変わったのは高校に入ってからで。中高一貫でそのままエスカレーターで高校に上がれたんですけど、今話したようなこともあって、ちょっと学校に行きたくないというか。

──そうなりますよね。正しいことをしてるのに、除け者扱いされたんだから。

あみゅり:“もういいや”みたいになって、通信の高校に転入して。そこから引きこもりになっちゃったんです。外に出ないし、誰にも会いたくないし、何の気力も起きない、みたいな。で、やることがなくなったんですけど、何かやらなきゃいけないとは思ってて。当時の気持ちをノートにずっと書いてたので、“これを音楽にできたらいいな”と思って。作詞作曲をやろうみたいになりました。

▲「Poker Face」MVより

──急に?

あみゅり:親がDTM(デスクトップミュージック)ソフトを急に買ってくれてたんですよ。それを使って最初は、アカペラでカバーした“歌ってみた”動画をTikTokに上げました。自分の部屋でストレートアイロンをカチカチやりながらリズムを取って歌って(笑)。でも、これだけじゃダメだな、今の時代はオリジナリティがないとダメなと思って。

──誰かの手を借りることは考えなかった?

あみゅり:最初は誰かの手を借りたかったんですよね。自分は、歌詞は書けるけど、作曲はできないだろうなと思ってたから。誰かいないかなって、TikTokで探した時に見つけたのがAKASAKIくんだったんです。ちょうど「弾きこもり」がTikTokでバズってた時に、めちゃくちゃいいと思って、一方的に連絡させてもらって。でも、当時の私はまだ動画を数本しか上げてなかったし、フォロワーも30数人しかいなかったんですね。それでも、「歌手になりたくて。歌詞は書けるんですけど、曲は書けないんです」っていう連絡をしたら、すぐ返事をくださって。「ユニットを組むとかはできないけど、楽曲提供とか、何かの形でお手伝いできるかも」みたいに言ってくださったんですよね。それがAKASAKIくんとの出会いで。

──AKASAKIさんもまだ17歳くらいですよね。

あみゅり:高校3年生だったと思います。いろいろと相談に乗ってもらえて。「歌詞を書けるんだったら、曲も書けそうじゃない? 一回やってみなよ」とか、いろいろアドバイスをくださって。同じ夢を追いかけてて、先にたくさんの人に聴いてもらえてる彼の言葉が、当時の私には一番刺さったんです。それで、自分も作曲やってみようと思って、作曲したものを送ったら、「マジでセンスあるから、自分でやったほうがいいよ」みたいなことを言ってくれて。そこから曲が作れるようになったんですよね。

──その後、AKASAKIさんは2024年10月に「Bunny Girl」がバイラルヒットしてます。

あみゅり:彼は絶対に行くだろうなと思ってたんですけど、自分ももっと頑張らないと、どんどん遠くに離れていってしまうなという感覚もあって。絶対に追いつきたい。彼の背中を追って、頑張っていきたいし、いつか自分がもっと知名度を上げてコラボできたらいいなって今も思ってます。

▲「Poker Face」MVより

──あみゅりさんの経歴に戻ると作詞作曲を始めたのが?

あみゅり:高校1年生の夏頃ですね。親がDTMソフトを買ってくれてたのは、その前のことで。自分には作詞作曲の才能なんてないと思ってたし、そんな機械を触るなんてと思ってたから、1年ぐらいは手をつけてなかったんです。だけど、やってみたらDTMにどっぷりハマってしまって、自分でオリジナル曲を作るようになって。まずは、TikTokで発信するようになりました。

──その時点で、もう音楽で生きていくと決めてます?

あみゅり:そうだったと思います。音楽じゃないと生きていけないっていうか、それ以外に選択肢がなかったから。人より運動が苦手だし、勉強も苦手なほうだし。音楽を失ったら私じゃなくなる。抜け殻になるんだろうなって自分で分かってたから。だからやるしかなかったんです。

──これから何度も聞かれると思いますから、もう一回聞きますけど、音楽を始めたきっかけは何になるんですか?

あみゅり:明確なきっかけってないんですよね。気づいた時にはもう歌手をやりたいって思ってた。本当に自分でも考えてるんですけど、どう考えても思い出せなくて。カッコいい言い方をすると、もしかしたら導かれてたのかなと思う。当時の私には本当に音楽以外の選択肢がなかったし。食べるとか、寝るとか、私にとっての四大欲求みたいな感じなんですよ。だから、なくなると本当に困る。曲を作るのも好きだけど、歌うことも好きなので、当たり前みたいな感じになっちゃってます。

──周りを見返したいという気持ちもあったんですか?

あみゅり:そうかもしれないですね。自分の根源というか、奥底にはやっぱり劣等感だったり、周りや世間に対しての怒りや悲しみがある。人のためにっていう気持ちもあるけど、結局は、見返したいっていう思いが大きいと思います。

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